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SAP ERPサポート終了は2027年へ、新しい「S/4 HANA」との違いは何か

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デジタルトランスフォーメーション(DX)が進まなければ、2025年以降は最大で年間12兆円の経済損失が生じる」。経済産業省の「DXレポート」ではそう警告しているが、一因には、ドイツSAP社の統合基幹業務システム「SAP ERP(サップ イーアールピー)」の保守サポート期限の終了がある。いわゆる「SAPの2025年問題」と呼ばれているものだ。SAP ERPを使用している日本企業は2000社ともいわれており、保守終了のインパクトは大きい。しかし同社はSAPサポート期間を2年延長の2027年末にすることを発表。2年間延長されたことで、コスト面では追加料金が発生するなどさまざまな影響も考えられる。日本の企業がその間に求められる対応策を紹介する。

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日本が抱える「2025年の崖」と「SAP保守延長問題」

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2025年の崖」とは、複雑化・老朽化した既存システム(レガシーシステム)に依存したままでは、国際競争力が低下し日本経済が低迷してしまうことを懸念した言葉。

経済産業省が2018年9月に発表した『DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~』では、ブラックボックス化した既存システムから脱却しなければ、2025年以降、最大で年間12兆円の経済損失が発生すると試算している。レガシーシステムに予算も人も取られていては、急速にデジタル革新が進むグローバルではビジネスチャンスを失ってしまうかもしれないとの警鐘を鳴らす。そして、2025年の崖に大きく関わるのが、SAPの保守延長問題だ。

そもそも「SAP ERP」システムとは?

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SAP ERPとは、統合基幹業務システム(ERP)の世界最大手であるSAP社(ドイツ)が提供する「SAP ERP 6.0」 のこと。企業の「人・もの・金・情報」を一元管理するためのシステムで、業務の効率化や、部門を横断したデータ連携を目的としている。例えば、生産管理、在庫数管理、販売管理、会計管理を一本化することが可能だ。

導入には相応のコストがかかるが、製造と営業部門がデータを効率管理できることのメリットは大きく、日本では約2000社が使っているといわれている。

「SAPの2025年問題」とも呼ばれていた課題

男性が考え込んでいる姿

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では、日本のDXが進まないことと、SAP保守延長にはどのような関係があるのだろうか。

同社は「SAP ERPの標準サポートを2025年で終了する」としていた。これは「SAPの2025年問題」とも呼ばれている。

SAP ERPは約20年もの間、何度もバージョンアップと機能拡充を繰り返してきたため、システムのリアルタイム性が欠如している。そのため、SAP社は、顧客の細かなニーズに対応するため、最新テクノロジーとリアルタイム性を重視した後継の最新版「S/4 HANA(エスフォーハナ)」への移行を推奨している。

つまり、日本のユーザー企業は、SAP社の最新版「S/4 HANA」にシステムを刷新するか、全く別会社のERPを導入するかなどの決断を迫られている。しかし、自社にカスタマイズし10年20年と使ってきたシステムの刷新や移行は費用も時間もかかる一大プロジェクトともなるため、決断を保留している企業も少なくないのだ。

では、SAP ERPのサポートがなくなると、どのような影響があるのか。システム品質の改善や修正プログラムの提供がなされないリスクを抱えることになってしまう他、新しい法改正や税制度への対応がなくなってしまう。また、新しい機能を付け加えることができないので、AIやRPAなど新しいテクノロジーを取り入れることが難しく、日本企業のDXを阻む足枷にもなりかねない。

SAPサポートが2027年までの延長で追加料金が必要?

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一方で、SAP社は2020年2月、SAP ERPのサポートを2027年まで2年間延長すると発表。さらに、追加料金を払うことで最長30年末まで延長して保守を受けられるように変更した。

しかし、保守延長の発表は日本企業にとって手放しで喜べることではない。

結局、DXレポートで指摘しているように市場環境の変化に柔軟でスピーディーに対応できるよう業務基盤の見直しを迫られているのには変わりなはないからだ。肥大化・複雑化していく既存システムの刷新の決断に悩んでいる間に、日本企業は「デジタル競争の敗者」(DXレポート)になりかねない

SAP社の新サービス「SAP S/4 HANA」を導入するメリットは

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SAP社は最新技術を駆使した最新版「S/4 HANA」への移行を促しているが、どう違うのか。最新版のパッケージは、超高速のデータ処理が特徴で、従来のSAP ERPの弱点だったリアルタイム性を高めている。人工知能(AI)を使って業務を自動化したり、瞬間的に在庫数の計算をしたりすることができる。

また、操作性も格段に上がっているのも大きな特徴の一つ。従来のSAP ERPでは各業務の処理が機能別になっていて、複数の画面が必要だった。一方で、S/4 HANAならユーザーことにロール別画面を作るので、業務効率が上がるという。リアルタイムな情報分析を可能にすることで、意思決定も迅速に行えるとしている。

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2027年のSAPサポート終了に向けて日本企業がすべきこと

打ち合わせしている様子

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2027年のサポート終了までに、導入している企業は既存のERPを使い続けるのか、最新版のS/4 HANAに刷新するのか、はたまた全く別会社のERPを導入開発するのかを決めなくてはならない。SAP ERPを使っている日本の企業は、自社の業務に合わせてカスタマイズを繰り返しており、ERPが業務プロセスと強く結びついている。そのため、ERPを刷新するか否かの決断は、業務そのものの変革に等しい。

SAP保守期間が2年延長されたとはいえ、ERPシステムは使用年数分だけデータ量が増え、データ移行にも時間がかかる。また、サポート終了の期限が近づくと、システム移行の需要も増えることが考えられ、専門知識をもつパートナー企業のSAPコンサルタントの不足も懸念されている。そう考えると、残された時間はそう長くはない状況だ。SAP ERPを導入している日本企業は、早めに移行計画を検討することが必要となる。

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