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「DX失敗の理由は…」失敗事例から学ぶ、DXを成功に導く本3選

突然DX担当に抜擢されたものの何から始めていいかわからない、DXに成功している企業、失敗している企業の事例を知りたい…とお悩みの人に向けて、DX担当者に向けて具体的な方法や考え方を解説している、おすすめのDX関連本を3冊を紹介したい。

初めてDXに取り組む人におすすめ、「90日で成果を出すDX入門」

本書はさまざまな企業のDX支援を行う須藤憲司氏だからこそ知る、多くの企業がつまずくDXのポイントを指南。SaaSD2Cなどデジタルの潮流を読み解くキーワードの解説や90日という短期間でDXに取り組むコツが紹介されている。須藤氏は「問題と目的の正しい設定」ができれば誰もがDXに取り組めると提言しており、DXに挑戦したもののうまくいかなかった人や初めてDXに取り組もうとする人に本書をおすすめしたい。

多くの企業がDXを失敗する理由について、実例を挙げて解説する第2章「なぜ企業はDXでつまずくのか」はDX担当者なら知っておきたい事例が豊富に紹介されており、DX難航の原因が「レガシーシステム」(既存の基幹システム、そのシステムが前提となる業務や組織などの総称)にあることを指摘。各部署や組織などに根付いたレガシーシステムは、DX推進の足かせになるという。

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本書によれば「デジタル技術によって社会や市場構造が変わってしまうからといって、自分たちなりに洗練させてきた従来のオペレーションは簡単には捨てられません。DXを進める上でも全く別の方法を用いて、部門間が呼吸を合わせていくのは、そもそも至難の業だといえるでしょう。つまりレガシーシステムを持つ前提がある中でのDXは困難であり、多くの企業でつまずいてしまう原因も、ここに潜んでいるのです」とDX推進においてレガシーシステムがいかにDXの妨げとなっているかを分析する。(P71「レガシーシステムはDXを前提としていない」より)

著者は長年の経験から、DX推進で企業がつまずかないための5つのステップがあることを見出した。

(STEP.1) モバイルファースト(顧客から従業員の業務プロセスまでモバイル対応する)
(STEP.2) 動画活用(商品説明やランディングページ、マニュアルなどのコンテンツを動画化することで、長文が読めないスマホユーザーに対応する)
(STEP.3) データ活用(「誰が、どのくらいコンテンツを見たか」というデータを集め、コンテンツに活かす)
(STEP.4) リアル接続(実店舗や営業の現場でデータ収集し、業務改善につなげる)
(STEP.5) ビジネスモデル変革(対面不要・サブスクなど時代に適合したビジネス展開)

※ステップが進むにつれ、体験のリッチ化やパーソナライズ化も深まっていく

こうしたステップでデータ活用することで、これまでのビジネスモデルから脱却することができ新しいビジネスチャンスをつかめるサイクルを生み出すことできると解説されている。

<書籍の詳細>
・書籍名:90日で成果を出す DX(デジタルトランスフォーメーション)入門
・著者:須藤憲司
・発売日:2020年03月23日
・価格:1600円(税抜き)

中小企業のDX成功例・失敗事例を知りたい人におすすめ「勝ち残る中堅・中小企業になるDXの教科書」

本書は、中堅・中小企業に対してIT・システムのコンサルティングを提供している青山システムコンサルティング株式会社の野口浩之氏と長谷川智紀氏の共著となる。近年、大企業のDX事例を目にする機会が増えている一方、中小企業にとっては大企業の事例はさまざまな点で参考にしづらく、中小企業のDX事例は数が少なく情報収集に悩む人も多いという。そうした中小企業のDX担当者に向けて、中小企業のDX事例の成功例と失敗例を豊富に取り上げながら、中小企業ならではのDXの進め方を丁寧に解説している

第3章「中小企業こそDXに取り組むべき理由」では、大企業よりも中小企業こそがDXに取り組みやすい理由に触れ、「中堅・中小企業は大企業ほど組織やリソースが複雑ではないので、社内調整に必要な労力が大企業と比較すると大幅に小さくすませられます。経営者が本気になって主導して取り組めば、実現は早いと思います。大企業ほどステークホルダーが多くないので、再挑戦や計画変更もしやすいのです。経営者がリーダーとなれば全社を挙げて取り組みやすく、大企業に比べて変化する際のインパクトが小さくてすみます」と、中小企業がDXに取り組む利点を挙げる。(P74「DXは中小企業ほど取り組みやすい」より)

また、中小企業におけるDX推進に必要なポイントについて、経営者の意志やIT人材の育成などさまざまな課題をピックアップしており、株主より顧客満足を目標とする手法の1つとして「カスタマージャーニー(=ターゲットとしている顧客の思考・行動・感情を見える化すること)」を勧めている。本書では「取引先や顧客が商品・サービスの認知から購買に至るまでの行動や思考、感情などをマップ化し、顧客の全体像を明確化するもの」とカスタマージャーニーの定義や進め方を解説。(P155「中堅・中小企業のDXはこう進める」より)

これまでカスタマージャーニーは企業のファンづくりのために行われていたが、DXにおいては社内の事業改革に結びつけることを目指すという。自社の業務をカスタマージャーニーに合わせて変更し、顧客ファーストを目指すことが重要となる。

カスタマージャーニーが社内に浸透することで、マーケティング手法を変更したり、営業、製造、広報、システムなどの各部門を横断する動きが生まれたり、ビジネスモデルの変更や新規事業の立ち上げといった選択肢が生まれ、DX推進につながるという。

<書籍の詳細>
・書籍名:勝ち残る中堅・中小企業になるDXの教科書
・著者:野口浩之/長谷川智紀
・発売日:2020年03月19日
・価格:1800円(税抜き)

DX推進のための体制づくりや、推進方法に悩む人におすすめ「ソフトウェア・ファースト」

著書の及川卓也氏によると「ソフトウェア・ファースト」とは、ソフトウェアの可能性や限界を理解して、ITを主軸にしながら、これからの社会で生き残るためのの事業や組織を実現することを指している。SaaS(=Office365やサイボウズなどのソフトウェアを、クラウドサービスとして提供すること)のようなソフトウェアの普及によって音楽業界がCD販売からサブスクリプション型配信サービスに移行したように、現代はあらゆる産業がサービス化している。サービス化する社会にあわせて製品開発の手法も変えていかねばならず、そのためにはソフトウェア・ファーストな考え方が求められるという。
ソフトウェアファーストのイメージ

DXはソフトウェア・ファーストの実践例であるとして、人と組織のすべてをソフトウェア・ファーストに変えるために何ができるか、組織改革や人材を集める方法、企画の立て方からリリース後の運用まで細かく解説しており、キャリア形成に悩むエンジニアやエンジニアの採用難に苦しむ経営者は必読だ。

及川氏はソフトウェアが既存産業や製品をディスラプト(破壊)しており、これから事業やプロダクト開発を成功させるには、ソフトウェアの理解と活用が企業の競争力を左右すると指摘。これまでITを事業の核としていなかった企業もソフトウェア・ファーストな体制に変更し、ITを外注に丸投げするのではなく、自社でITを積極的に活用することがDX推進にとって理想的だという。

本書では「自社プロダクトの進化に関わる重要な技術を自分たちが主導権を持って企画・開発し、事業上の武器にすることを「手の内化する」というのでしょう。(中略)外部パートナーを活用するとしても、ITの企画、設計、実装、運用というすべてのフェーズを自らコントロール可能な状態にすること、つまり手の内化することが大事なのです」と、DXにおいてソフトウェア・ファーストが重要な考え方であることを紹介している。(P110「ソフトウェア・ファーストの実践に必要な変革」より)

単に最新テクノロジーを活用するのではなく、ITを手の内化するために、経営者や現場社員がそれぞれ取り組むべきことを説き、IT技術を活用した事業作りの道標となる実践的な方法論が網羅されている一冊だ。

<書籍の詳細>
・書籍名:ソフトウェア・ファースト
・著者:及川 卓也
・発売日:2019年10月15日
・価格:1900円(税抜き)

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「DXで何を実現したいのか」失敗しないためにはビジョンを大切にDXを始めよう

今回ご紹介した3冊は共通して、文中で「DXで何を実現するかというビジョンを明確化すること」を重要視していた。DX推進で失敗しないためには、DX化することを目的とするのではなく、会社が存続・成長し続けていくための手段としてDXがあることを忘れずに取り組みたい。また、いずれの書籍にもすぐに着手できるDXのハウツーが豊富に紹介されているので、ぜひ自社の取り組みの参考にしていただきたい。 

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