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RPAの向ている業務とは?「110万時間削減」を実現した銀行の事例を紹介

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パソコンの定型業務を自動化するRPA(アールピーエー)の導入が日本企業で広がっている。労働力の減少や働き方改革を背景に、業務の効率化が求められているからだ。近年は人工知能(AI)と連携させた高度化したRPAも登場し、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する手段としても注目が集まっている。企業はどのように活用し業務効率を上げているのだろうか―。RPAの機能やメリット、向いている業務は何かなど基本情報をおさえつつ、成果を出している企業の事例も合わせて紹介する。

人手の作業を代行し、業務効率化を実現するRPA

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RPAとはロボティック・プロセス・オートメーションの略称で、データ入力やデータチェックなど簡単なパソコン作業を人間に代わってソフトウェア型ロボットが自動処理することを指している。単純作業だけど人がやるしかなかった作業をソフトが代行し、空いた労力を他の人手不足となっている業務や創造性が求められる仕事に振り向けられる、定量的な作業の効率化向上を図れるというわけだ。

RPAは専用ツールをパソコンに組み込み、覚えさせたい作業を登録するだけ。専用ツールは国内外でシェアの高い「UiPath」「WinActor」「BizRobo! 」「Blue Prism」「Automation Anywhere」の5大RPAが有名。人工知能(AI)とは違い、導入の際に高度なプログラミング知識は不要で、技術的・心理的なハードルが低いのも特徴だ。

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RPAを導入するメリットは?

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RPAを導入するメリットは、大きくわけて下記の3つがある。

・業務効率化
・業務時間の短縮
・単純ミスをなくす(正確性の向上)

がある。膨大なデータの反復作業処理を得意とするRPAは、ソフトウェアに一度作業を覚えさせれば指示通りに実行するため、人によるヒューマンエラーを起こすリスクがなく、大量の処理が必要なデータ作業も短時間かつ正確に完了できる。日本では2017年ごろから働き方改革の流れを追い風に、導入する企業が増えている。MM総研が実施したRPAの国内利用動向調査(回答は年商50億円以上の1021社、2019年11月時点)によると、日本企業のRPA導入率は38%。そのうち、年商1000億円以上の大手企業では51%と半数を超えていた。

そして迎えた2020年の新型コロナウイルス禍-。新しい生活様式が求められ、「非接触」や「自動化」の需要は高まり、従業員の安全を守りながら事業を継続していく上でRPAは必要不可欠な存在となりつつある。機能を絞った低価格のものやクラウド型のサービスなど利用しやすいサービスが続々と誕生し、今後は中小企業や地方自治体でもRPAの導入が進むとみられる。

「どんな業務が向いている?」RPA導入のための業務選定

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RPA導入が効果的なのは、どのような業務なのか。定型業務が多く大量の事務処理作業が多い人事や経理などバックオフィス業務での活用が目立つ。主だった部門別の事例をいくつか紹介する。

経理・財務部門 売上伝票データのシステム入力、交通費精算の金額チェック、売上帳や資産帳の作成
人事・総務部門 求人応募情報の管理システムへの入力、個別の労働時間を集計して長時間労働者をチェック
営業部門 大量に集まる毎日の在庫管理、受注情報のシステム入力、レポートの作成業務
マーケティング部門 ネット上の口コミやレビューのデータ収集、各種統計データの作成

どの部門でもRPAで業務効率を上げられることがわかる。ただ、RPAは全ての業務を自動化できるわけではない。どの業務を置き換えるのが効果的なのか、そもそも置き換えは可能なのか。導入を検討する際は、業務の洗い出しが不可欠だ。

【RPA導入事例】三井住友銀行では年間110万時間の削減効果

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RPAを導入した企業が目に見える成果を上げていることも、RPAに関心が集まる理由の一つ。RPAを活用した50社の時間削減効果は年間で合計1700万時間とのデータもある(日経コンピュータ調べ、2019年時点)。

特に、定型業務の多い金融業はRPAとの相性が良い。頭一つ飛び抜けた成果を出しているのが、メガバンクの三井住友銀行。同行は2017年から3カ年計画で金融業務にRPAの導入を推進。なんと年間約110万時間(2018年時)のPC作業を削減することに成功した。顧客訪問準備のレポート作成業務や、預金・融資業務における事務センターの大量の事務手続き作業を自動化。浮いた労働時間は、顧客への提案内容をブラッシュアップさせるなど付加価値の高い作業に振り向けているという。

他にも地銀の山陰合同銀行は11業務で年3600時間、大分銀行では年間約1100時間超の削減効果を出している。

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RPA×AI、連携でより高度な自動化へ

定型業務を自動化するだけでなく、人工知能(AI)を組み込んだより高度なRPAも登場している。先述の三井住友銀行は、光学的文字認識(OCR)とAIを掛け合わせたシステムを活用。手書きの紙の文書をOCRでスキャンし、データ化。AIを組み込んでいるので、データ認識の精度が上がり、書式が違うような文字でも読み取ることが可能になった。

一方、茨城県庁は、新型コロナウイルス感染防止協力金の支給業務にAI-OCRを導入した。手書きの申請書をAI-OCRでデジタル化し、財務会計システムのRPAと連携。1件当たりの支払処理時間を12分から2分へと約80%短縮することができたという。約1万2000件の申請手続きを処理し、中小企業や個人事業主への迅速な協力金支給に貢献した。今後もRPAの機能強化が進み、「定型作業の自動化」だけでなく「熟練した技術が求められる作業の自動化」「非定型業務の自動化」も担うものと期待されている。

日本経済の労働力不足と働き方改革を両立させるため、RPAが果たす役割は大きい。そもそも、日本のホワイトカラーは生産性が低いという指摘もあり、浸透する余地もまだまだありそうだ。目先の業務効率化にとらわれてばかりでは、もったいない。RPAをDXの道具として最大限利用するためには、業務プロセス全体の見直しや、中長期的な経営戦略、組織文化の変革が欠かせないのではないだろうか。

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