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DXで農業を変革、スマート農業の導入で「2025年問題」を解決

スマート農業のイメージ

これまでの農業といえば、人の手によって農地を耕し、種をまき肥料や水を与え、長い月日をかけて作物を生産していくという、いわゆるデジタル化とは無縁のものであるとイメージする人も多いだろう。

しかし、近年では農業においてもデジタルトランスフォーメーション(DX)化が着実に進行している。では、農業のDXとは一体どういったものだろうか。農業のDXを調べていくと、AIIOTなどのICT技術を活用したスマート農業によるメリットが見えてくる。農林水産省の資料なども参考にしながら、スマート農業とは、どういった農業の課題を解決することができるのか、詳しく見ていこう。

「2025年問題」日本の農業が抱える課題とは

田植えの様子

出典:真治 遠山- stock.adobe.com

日本の農家が抱える課題は多い。まず、戦後の第一次ベビーブームで生まれた団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となることで、65歳以上の高齢者が国内人口の約3割を占めることが予想されており、日本の社会保障がひっ迫する状況になると予測されている「2025年問題」がある。これに伴い、農業従事者の高齢化と後継者不足による労働力の不足が懸念されており、2000年の時点で389.1万人だった農業従事者数は、2019年には168.1万人まで減少している。(参考資料:農林水産省「農業労働力に関する統計」)

その一方で、農家が担う土地の面積(経営耕地面積)はこれまでより大きくなっており、1年以上、作物が栽培されていない農地(耕作放棄地)も増加。働き手が少なくなったにも関わらず、従来よりも広い土地で農作業をしなければならないため、作業の効率化や生産性の大幅な向上が求められている。また、後継者不足によってこれまで蓄積されてきたノウハウの継承が途切れてしまう懸念もある。こうした人口減少社会における課題を解決するために、農林水産省は、2025年までに新たなデジタル技術を活用した農業の変革(農業のDX)を推進している。

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企業や大学も参画、「AIやIOTを活用したスマート農業」で課題解決へ

スマート農業のイメージ

出典:hiro- stock.adobe.com

スマート農業とは、ロボットやAI、IoTといった先端技術を活用し、省力化や高品質な生産を可能とする農業のこと。自動走行トラクターや自動収穫機などのロボット技術サービスの導入によって、負担の大きい農作業は省力化され、スマートフォンで操作する給水システムなど作業の自動化も進んでいる。加えてAIの活用で栽培技術のノウハウがシステム化され、これまでは人の目で一つひとつ確認していた作物の色や形をAIが解析し、収穫時期を予測するサービスなども実用化されている。

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また、センシング技術を活用したIoT機器やカメラを圃場に設置することで、データをAIで解析して生育状況をリアルタイムで確認し、病害虫の有無の診断ができるように。導入以前は、常駐スタッフが農場を歩きまわって確認していた作業を一気に省人化できるようになった。AIやIoT技術の活用は、農業にかかる時間と人手の大幅な削減を可能にしている。こうしたスマート農業技術を開発・普及するために実証事業が全国で行われており、多くの企業や大学が参画している

農業DXを導入すれば「2025年問題」はどうなるか

農業を教えている様子

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農業に大きな影響を与える2025年問題。若い労働力や後継者が不足するだけではなく、これまで農村で農業や地域を支えてきた高齢者も2025年以降は減少するという見通しのため、農地の維持が難しく厳しい状況となるだろう。その一方、こうした問題を農業のDXが解決する事例も増えてきている。

農林水産省の『食料・農業・農村 政策審議会』資料によると、茨城県にある横田農場では、近隣の農業従事者が減少したことで、従来の約10倍もの面積の水田で稲作をすることになったが、遠隔地から操作する自動給水システムや農薬を自動散布するドローンなどのICT技術を積極的に取り入れて、全国平均の約半分という低コストで生産することに成功しているという。

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農業のDXで注目集まる「植物工場」はメリットが大きい

植物工場

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スマート農業技術の中でも、注目を集めているのが「植物工場」だ。植物工場とは、光(太陽光または人工光)や温度など環境条件をコントロールして、野菜などの作物を室内で安定生産する施設のこと。日本において植物工場は第3次ブームの段階で、これまでは初期投資コストや光熱費が高いために黒字化が難しいとされてきたが、収穫ロボットの導入で人件費を削減するなど、さまざまな技術の進歩によって少しずつ価格も下がり始めている。植物工場は最終消費地となる都市においても栽培可能なため輸送コストが削減できたり、天候に左右されず安定した栽培ができたりとメリットも大きく、今後ますますの進歩が見込まれる。農業のDXにより、デジタル技術を活用して消費者のニーズを的確に捉えた農作物を提供することで、売り上げの増大や農業界の発展につながっていくだろう。

現在、全国の農業大学校ではスマート農業に関する授業や実習が実施されている。スマート農業の導入にあたっては技術力だけではなく高い経営判断力を養うことも重視されているという。将来の農業の担い手たちは先端技術と経営を学び、さらに農業のDXを進めていくだろう。労働力不足や技術継承といった課題を解決するスマート農業によって、日本の農業ビジネスのさらなる発展が望まれる。

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