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中国が導入「社会信用システム」、信用スコアのランクが高い人と低い人の違いとは【用語解説】

中国の風景

こんにちは、DXやデジタルに関連する用語を解説するコーナーが始まりました。僕、ディックが解説していくね。今回は、一人ひとりの信用度をスコア化し、ランクに合わせたさまざまなメリットやデメリットを受けることになる中国の「社会信用システム」について解説していくよ。

自分に点数やランクがつけられる社会なんて聞くとSF小説やRPGゲームの世界みたいだけど、実は中国では国民の社会秩序を良くするための「社会信用システム」を導入していて、国民のあらゆる情報をもとに信用を可視化することで、行動を制限しているんだ。

「そんなのディストピアだ」「自分には関係ない」と思うかもしれないけど、最近こういうシステムの導入を検討している日本企業も出てきているよ。「社会信用システム」とはどういう仕組みのことなのか、中国を例に考えてみよう!

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中国の「社会信用システム」とは、どんな仕組みなの?

社会信用システムとは、中国政府が収集したデータに基づいて、全国民をランク付けし、「信用度」をスコア化するシステムのこスコアは日々の行動によって上下するんだけど、このスコアに応じて賞罰を与えたり、人々の行動を道徳的にしたり、健全な社会を構築しようという政府の考えから始まったんだ。

例えば、借金を踏み倒したり社会保険料を支払わなかったりすると、公共交通機関を利用できなくなったり、不動産の購入ができなかったりしてしまうんだ。良いことをすればご褒美があるけど、悪いことをすれば罰を受けることになるんだね。

中国では、2015年1月から中国の中央銀行である中国人民銀行が民間企業8社に、社会信用評価に利用するための独自のアルゴリズムを用いたシステム開発の認可を与えました。これを「信用スコア」というよ。

中国が導入する「信用スコア」
ランク分けされた社会信用システムのメリットとは?

さっきの「社会信用システム」が中国政府主導であるのに対し、「信用スコア」は民間企業のシステムと思っておけばいいよ。学歴や勤務先、年収、決済サービスの利用実績などの個人情報をもとに、個人の信用度をスコア化したものだね。

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代表的な例は、中国国内で5億2,000万人(2018年1月時点)が使っているモバイル決済アプリ・アリペイと連携している「芝麻信用(じーましんよう)」を例にみてみよう。芝麻信用の信用スコアは350~950点でスコアリングされ、それぞれ下から順に「較差(350~550点)」「中等(550~600点)」「良好(600~650点)」「優秀(650~700点)」「極好(700~950点)」と、5段階でランク分けされているんだ。

この信用スコアによって、600点以上のスコアは「信用できる」って思われてあらゆる社会サービスにおいて優遇される社会になっているんだ。こんなルール下に置かれたら、みんなゲームのキャラクターのように経験値を積み、レベル上げに勤しむのが自然の流れかもしれないね。

信用スコアが高い人と低い人、どう違うの?

高スコアの人は、ローンの金利を優遇されたり、ホテルを利用するときなどにデポジットの支払いを免除されたり、企業によってまちまちなんだ。どちらにしてもスコアが高いほうが良い思いをすることは間違いないよ。

逆に、クレジットカードの利用料滞納を繰り返すなど悪質な違反を起こしたらスコアは下がってしまうよ。芝麻信用でいうならば、アリババが運営するショッピングサイトで一定額以上の高級品を購入できなくなってしまう。イメージしてみてほしいんだけど、例えば「明日から、Amazonでのショッピング禁止」って言われたら結構不便だって思う人、多いんじゃないかな。

それから、中国では合コンをする際に「あなたのスコアはどのくらい?」とあいさつ代わりに質問をすることが当たり前になっているんだとか。当然スコアが低いと格好つかなないし、どちらかといえばネガティブな印象だよね。「がんばってスコアを上げるぞー!」と思える人には楽しいかもしれないけど、落ち込んでしまうほどのスコア低下があると、すごく生きづらくなってしまう。

社会信用システムの問題点は?導入によって改善された点も…

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「スコアによって生活の質がひとり一人違うなんて納得いかない」と思う人も多いんじゃないかな。でも、中国の社会全体で見ると信用スコアの導入によって改善されている部分もたくさん出てきたんだよ。

例えば「芝麻信用」を導入したレンタカー会社では、利用料の踏み倒しが52%減少、さらに交通罰金の踏み倒しが27%減少した。車の紛失も46%減少するという効果が出たことも分かったんだ。

また、中国では2016~2018年にかけて「無人コンビニ」が急速に拡大したんだ。店舗にスタッフがいないと万引きの心配があるけど、悪質な事件はほぼ起きなかったんだって。信用スコアは犯罪の抑止力も持っているんだよね。

中国では浸透しつつあるが、
日本でも信用スコアを取りいれるべきなのか

日本では、2019年にヤフーが「Yahoo!スコア」を発表したんだけど、「スコアの利用方法が不明」「消費者にメリットがない」といった批判を受けて、サービスが開始されないまま終了してしまったんだ。「信用スコア」に対して、「個人情報が流出するのではないか」とか「差別を生むのではないか」といった不安の声が上がったんだよね。国によって、さまざまな文化背景があるから、中国と同じように浸透することは難しいみたいだね。

一方中国では、芝麻信用はサービス開始から約3年後の2018年3月にはユーザー数が7億人に達し、すでに社会インフラの一部と呼べるほど浸透しているんだ。なぜここまで受け入れられたのかといえば、そもそも中国の国民は個人情報を政府に把握されているから、プライバシー保護に関する考え方が日本よりゆるやかなんだね。ポイントカードのポイントが気づけば貯まっていたぐらいの感覚の人も多いそうだよ。

また、中国は2010年代からQRコード決済によるキャッシュレス化が急速に進み、スマートフォンなどのモバイル端末を通じて消費行動を行うことが浸透していたという背景もある。最初からスコアを算出するための個人の購買履歴などのデータが蓄積しやすい環境だったんだろうね。

日本で信用スコアサービスを導入した企業

日本の家庭のイメージ

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日本でも信用スコアサービスに参入し始めている企業があるよ。例えば、ソフトバンクとみずほ銀行の共同出資会社・J.Scoreが運営する「AIスコア」は、2017年に日本初のスコアリングサービスとしてスタートしたんだ。6つのスコアランクに分けられ、スポーツジムの入会時特典や、電子書籍やフラワーギフトのクーポンなどのリワードが受けられる仕組みだよ。

また、2019年8月には、NTTドコモがユーザーの信用度を数値化した「ドコモスコアリング」を開始。融資サービスを申し込んだユーザーの同意を得た上で、スコアを金融機関に提供するというサービスが始まっているよ。

日本では、中国ほど急速にスコアサービスが広がることはないかもしれないけど、本格的に導入されたら、新たなビジネスチャンスや消費者としてのメリット、反面ちょっと嫌だなと思うことなんかが見えてくるんじゃないかな。

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社会信用システムの問題点も…
日本が社会信用システムを導入したら「賛成」「反対」?

自分の信用が数値として把握できるようになると、普段の生活の中のさまざまな判断基準の材料になってしまう。一方で、庭環境や貧富の差による格差がスコアによってさらに開いたり、浮き彫りになったりしてしまうのではないかという問題点も懸念されているんだ。

ゲームの世界ならば、みんな何もない同状況からスタートする。でも実社会では、生まれ育った地域や家庭環境の差がスコアに表れて、自らの努力とは関係のないところで不平等を感じることもないとは言い切れない。多くの人が「導入してメリットを感じる」と思えるようになるためにはどうアレンジしていくべきなんだろう。

「よその話だから」と読み流すのではなく、自分ごととして信用社会システムについてもう一度考えてみて。
あなたは、信用で行動が制限される社会、賛成?反対?

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