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「日本のデジタル化の遅れ」コロナ禍で浮き彫りに、2020年のDXを振り返る

マスクして仕事している女性

新型コロナウイルス感染症が世界中で流行した2020年。日本で初めて発令された緊急事態宣言を始め、オリンピック・パラリンピックの延期、3密を避ける行動様式など、社会や生活様式、企業活動が一変した一年となった。こうした社会生活の変化に伴い、新しいビジネスモデルが生まれ、日本のデジタルトランスフォーメーション(DX)もようやく加速し始めている。そこで、2020年にどのようなデジタルよる変革が生まれたのか、DX分野において印象に残った出来事をまとめていくとしよう。

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コロナ禍で浮き彫りになった日本企業のデジタル化の遅れ

マスクして接客している様子

出典: bignai- stock.adobe.com

2020年11月にデル・テクノロジーズが発表した、グローバル企業におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の進展状況を発表した「DX index Report 2020」では、18カ国を調査。2020年にDXを加速したグローバル企業の割合は79.7%のところ、日本企業は54.5%と世界と比べ大きく後れをとっていることが判明した。新型コロナ感染防止として外出自粛が叫ばれる中、押印や書類の確認のために出社を余儀なくされた人やネットワーク環境など十分なリモートワークの準備もできていないまま在宅勤務になだれ込んだ人は多く、DXの前段階である業務のデジタル化さえ遅れていることがコロナ禍で浮き彫りとなった
こうしたデジタル化の遅れを見直し官民ともに脱ハンコへと舵を切るために、電子署名やタイムスタンプ、電子契約システム、ペーパーレス化などのデジタライゼーションが一気に進んだ

AIコールセンターのイメージ

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とりわけ感染予防のため「非対面」と「非接触」に関するサービスが次々に登場。テレワークを始め、非対面で商談を行うオンライン営業やオンライン名刺、オンライン会議など新しいビジネス様式が拡がっている

また、マスクをしたままでも顔認証を行う顔認証エンジンが開発されたり、感染リスクの高いコールセンター業界では感染予防のため人工知能(AI)を用いた自動応答技術の利用が始まったりと新型コロナウイルスの感染予防のためのAI活用も進んだ。

これまで当たり前とされていたことが一変し、”ニューノーマル”が生まれた2020年。BCP(事業継続計画)のためにもデジタル化は必須で、DXへの対応が企業の存続や競争力を左右するということを社会全体で痛感することとなった

事業構造を改革し、DXを実現する企業が増加

自動化された工事現場のイメージ

出典:Monopoly919- stock.adobe.com

コロナ禍において目立ったのはこれまでのビジネスモデルを改革し、サービスの基盤となるプラットフォーマーを目指す動きだ。

国内の家具業界をリードするニトリホールディングスは家具の小売業から物流のプラットフォーマーへと変貌を遂げつつある。同社の物流子会社であるホームロジティクスはブロックチェーン(分散型台帳)を利用した新システムを開発。委託契約した中小運送会社へ提供し、データを活用した共同配送を目指している。

建設業界では、大林組がタワークレーンの自動操縦や工事現場のデジタル化などを手掛けて自動化技術のプラットフォーマーへと進んでいる。新型コロナによって、新しいデジタル技術を活用したビジネスモデルの創出は着実に進んでいるようだ。

2020年に注目されたDX関連キーワードとは?

タブレット端末を操作する女性

出典:Chinnapong- stock.adobe.com

続いて、2020年にDX分野で注目を集めたキーワードを紹介したい。自社で開発した商品やサービスを顧客に直接販売するD2C     、「OMO」     、消費者の好みや傾向に合わせた商品やサービスを定額で利用する「サブスクリプション3.0」などマーケティング関連のワードが話題となった。また他にも、クラウド上のアプリケーションやソフトウエアをインターネットを通じて利用するSaaS」     や、既存のビジネスにAIやIoT、ビッグデータなどの先端技術を活用して新たな製品やサービスを生み出す「Xtech」などが挙げられる。具体例として、MedTech(医療×テクノロジー)やCareTech(介護×テクノロジー)、PropTech(不動産×テクノロジー)などがあり、さまざまな業界でXtech化が進んでいる。

「DX企業は税優遇」「DX銘柄2020」!政府のDX政策

日本政府もまたDXを推し進めていた1年であった。9月に発足した菅政権によってDX化を推進する行政改革が加速しており、2021年秋までにデジタル化を推進するデジタル庁を新設する方針を発表

2021年度の税制改正においては、DXに取り組む企業をサイバーセキュリティに関する監査を受けることを条件に税制面で優遇する方針を固めた。2020年の制定から20年が経過した「IT基本法」は制定以後初の本格的な改正を目指す。

経済産業省の外観

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また、2020年8月には経済産業省と東京証券取引所は「DX銘柄2020」を発表した。2019年までは「攻めのIT経営銘柄」という名称だったが、2020年よりDXを評価の軸に変更し名称も改めた。DX銘柄2020に選定された35社の中でも、業種の枠を超えて「デジタル時代を先導する」企業としてコマツとトラスコ中山の2社がDXグランプリ2020を受賞している。

DXグランプリを受賞したコマツとトラスコ中山のDXへの取り組みを見てみよう。建設機械メーカーであるコマツは、今後数年で120万人(同社調べ)に及ぶ建設業界の労働力不足解消を図るため、建設現場のデジタル化を目指す施工支援サービス「スマートコンストラクション」を導入。他社製品にも取り付け可能なIoTデバイスを提供するなど建築業界全体のDX化を目指している。

機械工具の卸大手であるトラスコ中山は初選出ながらグランプリを獲得。従来のサプライチェーン業界のビジネス様式を変えて日本のモノづくりに貢献するためにDXに取り組んだという。AIによる自動見積りや客先に自社在庫を常備し、必要時にアプリでバーコードを読み取る仕組みで顧客の管理コスト削減と納期ゼロを可能とした「MROストッカー」は高い評価を受けている。

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2021年、日本企業のDXを成功させるには?

前述の「DX index Report 2020」によると、国内外ともにほぼ全ての企業がDX推進に障壁を感じているという。DXを阻害する大きな要因の1つとしてサイバーセキュリティへの懸念が挙げられており、DX推進のために情報セキュリティの強化は必要不可欠だろう。また、高いデジタルスキルを保有するDX人材育成も欠かせない。NECや三菱ケミカルHDなどDX人材の大幅な増強に取り組む企業は増えている。サイバーセキュリティとDX人材育成を強化し、2021年はさらなるDX化の加速に期待したい。

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