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「あのワクチンもAIで開発?」医療従事者の負担を軽減するAIサービス次々登場

ワクチンのイメージ画像

いまだ終わりのみえないコロナ禍の医療現場において人工知能(AI)が必要不可欠な存在となりつつある。CT画像の診断や感染の検査、ワクチンの開発、マスク着用の有無など多岐にわたってAIが積極的に活用されており、今後新たな感染症が発生した場合にもAIは人類を救う存在になるとみられている。そこで医療従事者以外でも知っておきたいAIサービスをまとめて紹介していきたい。

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AIが医師を助ける!コロナ治療として活用が開始されたAIサービスとは

まずは新型コロナウイルスの治療に活用されるAI事例を見ていきたい。新型コロナウイルス感染症の診断においては、肺炎の進行具合や治療の効果について胸部CT画像を用いて医師が目視で判断しているが、患者1人あたり数百枚ものCT画像を確認しなければならず、負担が大きいという。

医療現場で活躍するIA技術

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また、新型コロナウイルス感染症は肺にすりガラス状の影が見られるなど、肺が硬くなり呼吸しづらくなる間質性肺炎と同様の特徴があるが、胸部CT画像を目視してもわかりづらい場合もあり、感染者を見落としてしまう可能性もあるという。そこでAIを活用して画像専門医に近いレベルで診断を助ける事例が多く登場している。

PCR検査に並ぶ「ナノポア法」など新技術も登場で医療従事者の負担軽減へ

神奈川県川崎市の聖マリアンナ医科大学病院では、2020年頃からコンピューター断層撮影装置(CT)画像を読み込んで、新型コロナウイルスによる肺炎の有無を自動で判断するAIを活用している。医療ポータルサイト「m3.com」のサービスを行う日本企業エムスリーと中国の大手IT企業アリババが開発したもので、その精度は90%と高く、専門医である画像診断医の不足を補う存在として活躍している。

2021年6月に発売が開始されたのは、医療に関するAI技術サービスを数多く展開する富士フイルム株式会社では、AI技術を用いた肺炎の診断支援ツール「COVID-19肺炎画像解析プログラム」を開発。AIがCT画像を解析し、新型コロナウイルスによる特徴がみられる部分を3Dで色付けして医師の判断を支援する。症例データを保有する京都大学と共同開発し高度な判別性能を実現している。

また、AIを活用した新たな抗原検査法「ナノポア法」も登場している。唾液検体中のウイルスが非常に小さな穴(貫通孔/ナノポア)を通過する際に発する電気信号を計測し、陽性か陰性かをAIが識別するというもので、大阪大学の研究グループが2021年6月に発表した。

新型コロナウイルスの検査で主に使用されているPCR検査の感度が約90%であるのに対して、従来の抗原検査の感度は70%と低いものであったが、ナノポア法では感度90%とPCR検査と同等の感度を達成した。さらに検査時間ではPCR検査が数時間から1日程度掛かるところ、ナノポア法は約5分と大幅に短縮しており、早さと精度を兼ね備えた検査法として注目を集めている。

高精度で患者の死亡率を予測するAIも登場、海外もAIの開発加速

AIの活用は新型コロナウイルス感染症患者の個別リスクに基づく予後の予測や新規感染者数の予測などにも使用されており、病床不足や医療崩壊への対策としても期待されている。

ワクチン開発のイメージ画像

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2020年12月には、アメリカのカリフォルニア大学アーバイン校の研究グループは72時間以内に重症化するかどうかを予測するAIツールを無償でWeb上に公開している。年齢や性別、基礎疾患の有無、BMIなど必要な項目の数値を入力するだけで、その患者が72時間以内に人工呼吸器または集中治療室(ICU)での治療が必要になる確率を表示する。

また、デンマークのコペンハーゲン大学の研究グループが新型コロナウイルスに感染した場合の死亡率を予測するAIを開発したと2021年2月に英紙デイリー・メールが報じている。約4000人の患者データをAIに学習させ、新型コロナウイルスによる死亡リスクが高い人の特徴や既往歴を見出したもので、精度は最大で90%と非常に高い。ワクチン接種の優先順位の設定などに役立つとされている。

他にも、新型コロナウイルス感染者数を予測するサービスとして「COVID-19感染予測(日本版)」をGoogleが2020年11月より提供開始している。AIや機械学習を用いた独自の計算式で、都道府県ごとの新規陽性者数や死亡者数を予測するものだ。Googleのほかにも、名古屋工業大学の研究グループがAIを使用した新規感染者数の予測を発表している。

わずか9カ月で開発「モデルナワクチン」完成の裏にもAI活用あり

新型コロナウイルスの収束に期待が寄せられるワクチンの開発から接種においてもAIが活躍しており、さまざまなAIサービスが登場している。

ワクチン開発のイメージ画像

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これまでは新たな感染症のワクチン開発には10年程度かかっていたが、アメリカのバイオ企業モデルナは9ヵ月という驚異的なスピードで「mRNAワクチン」を開発し、2020年12月にはアメリカ国内での接種を開始。スピード開発のあらゆるフェーズにはAIが活躍しており、たとえば以前はエクセルに手作業で入力していた遺伝子配列の組み合わせは、AIを使用することで数万通りもの組み合わせを自動で生成させたり、目視で行っていた品質検査をAIの画層認識技術を使用して自動化したりして、劇的に時間を短縮したという。

こうして開発されたワクチンは、2021年7月時点で医療従事者や高齢者をはじめとして全国の自治体において接種が進められている。

アメリカやイギリスなど諸外国に比べて日本のワクチン接種は遅れており、その原因としてワクチンの在庫不足や予約の取りづらさ、配送・保管方法、打ち手不足などの課題がある。そこでスムーズなワクチン接種を目指して、AIを利用したさまざまなシステムやサービスの開発が登場している。

LINE株式会社は自治体の公式LINEアカウントを通じて、ワクチン接種の予約をLINE上で完結できるシステムを提供しており、大阪府堺市や群馬県富岡市など100以上の自治体で活用されている。予約の際にはAIを使った文字認識技術を使用して接種券を読み取らせることで、住民による誤入力を防ぎ、職員の負担を軽減する狙いだ。

報道ベンチャーのJX通信社は、2021年4月よりワクチン接種状況などに関するさまざまな統計データをYahoo! Japanに提供。統計データはAIを用いて自然災害や事件、事故、新型コロナウイルスなどのさまざまなリスク情報を提供するサービス「FASTALERT(ファストアラート)」のAPIを通じてデータを提供されたもので、リアルタイムで接種状況などが確認できるという。

この他、地方自治体向けの新型コロナウイルスのワクチン接種に関するAIチャットボットサービスや、手書きの予診票や接種情報をAIが自動で電子化するOCRサービスが登場しており、ワクチン接種業務に関わる医療従事者や職員の負担軽減につながっている。

「密」をAIが発見!ニューノーマルにも欠かせないAI

コロナ禍における新しい生活様式(ニューノーマル)においても、AIは欠かせない存在となっている。

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関西国際空港などを運営する関西エアポートは、神戸大学が開発した空調システムで感染予防に取り組む。カメラや二酸化炭素の濃度から人が「密」になっている場所をAIが予測し、空気を送って換気を促すもので、現在は実証実験を行っており、2021年冬に関西国際空港の一部に設置する予定だという。

感染予防に効果的とされるマスク着用の有無をAIが判別するツールはさまざまな企業が開発しており、2021年2月には九州電力がAIを搭載したカメラを用いて、駅構内の通行人のマスクの有無を自動で判別する実証実験を行った。マスクを着用していない人を発見すると着用を促すアナウンスをしたという。

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新型コロナウイルスの予防から治療、ワクチンまであらゆる場面で活躍するAIは市場としても発展を続けており、IT専門調査会社のIDC Japanによると2020年の市場規模は1579億8400万円のところ、2025年の市場規模は4909億8100万円に達すると予測している。成長を続けるAIサービスを活用し、コロナ禍の早期収束が望まれる。

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