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「食料不足救う」代替肉や培養肉を開発する米国や日本のフードテック技術

代替肉を使ったハンバーガー

実は今、世界的な食料不足の分岐点にいることをご存知だろうか。世界的な人口増により2030年にはたんぱく質の需要が供給を上回る「たんぱく質危機」が予測されており、2020年時点では約78億人だった世界の人口が2050年には約90億人にまで増え、気候変動による農作物の収穫量減も相まって食料の確保が困難になるという深刻な懸念がある。また将来の話に限らず、今も世界の9人に1人は飢餓に苦しんでいる現状もある。こうした食料不足問題をIT技術の力を使って解決しようとする日本や世界の「フードテック」の最新事例についてお伝えする。

資金調達が活発!食糧不足を救う「フードテック」とは、どんな技術?

培養肉の開発イメージ

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食と最新テクノロジーを組み合わせて新しい価値の提供や社会課題の解決を目指す「Food Tech(フードテック)」。植物性の原料から作る代替肉や培養肉のような次世代の食材の生産・加工や食品デリバリー、遺伝子分析による食生活改善サービス、スマート調理家電、食品のパーソナライゼーション、食品を出力するフード3Dプリンタなどその種類は多岐に渡る。

アメリカの西海岸にある植物由来の代替肉を開発・販売するImpossible Foods(インポッシブル・フーズ)や代替肉企業で世界初の上場(NASDAQ)を果たしたBeyond Meat(ビヨンド・ミート)などのフードテック企業を筆頭に資金調達の動きは活発化しており、市場規模も2025年までに700兆円規模に達するという見通しもある。

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フードテック市場の盛り上がりによって、社会にもたらすメリットは多い。食料不足の解決のための代替肉の開発、AIIoT、ロボットの活用で生産者不足に悩む農業の生産性向上、モバイルオーダー活用による食品ロスの削減、食品の長期保存が可能な技術の開発など、社会課題の解決に期待が寄せられている。

代替まぐろに培養えび…注目を集める次世代たんぱく源

エビの画像

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フードテックの中でも注目を集めているのが「代替たんぱく源」を提供する企業だ。前出のインポッシブル・フーズは、肉を分子レベルで解析し、味や食感を本物の肉に近づけており、代替肉を焼くと赤色から茶色に変色するところまで再現されている。

大手チェーンの食品スーパーで販売され、マクドナルドやケンタッキーフライドチキンなどのファストフード店や香港・シンガポールなど世界の約1万7000件以上のレストランで提供されている。

代替たんぱく源は牛肉だけではなく、魚介類においても開発が進んでおり、アメリカのKuleana(クレアナ)は代替生まぐろや代替サーモンの開発を行っている

代替たんぱく源が求められるようになった理由には、食の多様性や人口増による食料不足への対応などがあるが、中でも食肉がもたらす環境負荷の大きさがある。現在の畜産は地球の資源に大きな負担をかけており、持続可能性が非常に低い。

世界の穀物生産量の半分が畜産の飼料として使われており、牛肉1キロを生産するのに11キロもの穀物が必要となる。世界で8億2000万人以上もの人が飢餓に苦しむ一方、一部の国のために大量の穀物を消費して畜産が行われているといういびつな現状がある。こうした矛盾もフードテックを活用することで、食糧不足問題を解決する糸口になると期待されている。

他にも地球温暖化や動物福祉(アニマルウェルフェア)や鳥インフルエンザのような感染症を発生させるリスクなどの観点から、海外を中心に代替肉のニーズが高まっている。

また、動物の細胞を培養して生産する培養肉も開発が進んでおり、数週間で肉を培養できるため、数年かけて牛を飼育するよりはるかに効率がよいといわれている。培養肉は2013年に世界初の培養肉ハンバーガーの試食会が開催されたことをきっかけに認知が進み、現在多くの企業が研究開発を行っている。

マグロ料理の画像

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アメリカのFinless Foods(フィンレス・フーズ)では、培養まぐろを開発しており、シンガポールのShiok Meats(ショーク・ミーツ)はロブスターの培養肉の開発に成功し、現在はえびの培養肉の開発を進めている。

前出の培養肉バーガーの価格は1個3000万円以上、ショークミーツのえび培養肉は1キロ約53万円と、培養肉が消費者のテーブルに並ぶためにはコスト削減が大きな課題となっている。マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏やグーグル共同創業者のセルゲイ・ブリン氏らも培養肉のスタートアップに積極的な投資を行っており、注目の分野と言えよう。

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日本でも広がりを見せる「代替肉」
次世代たんぱく源市場では「培養〇〇」の開発進む

モスバーガー

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日本国内でも代替肉や培養肉といった次世代たんぱく源を開発する企業が増加している。1956年から大豆を使用した代替肉を開発・販売する不二製油を筆頭に、日本ハム、味の素などの企業が代替肉を開発しており、小売大手のイオンやセブンイレブン、ローソンなどの大手コンビニで販売されている。

外食業界ではドトールコーヒーやフレッシュネスバーガー、モスバーガーなどのファストフード店が代替肉を使用したハンバーガーを販売。焼き肉チェーン店の焼き肉ライクでは代替肉がメニューに並んでいる。

次世代たんぱく源に取り組むのは大企業だけではない。スタートアップのインテグリカルチャーは細胞組織培養肉の開発に取り組んでおり、培養フォアグラの開発に成功。大豆が原料の代替肉を開発する熊本のスタートアップDAIZは味の素や日鉄物産など多くの企業と資本業務提携を結び、植物性代替肉の浸透を目指している。

次世代たんぱく源が多数開発されているが、その広がりには消費者の意識変容が不可欠だ。数十年後に迫る悲劇的な未来を避けるためにも、食の価値観をアップデートして持続可能な社会を目指す必要がある。また、フードテックの影響は食品企業だけに留まらない。流通やメーカー、住宅業界など多様な業種で活用が期待されており、自社のサービスや製品に活かせる可能性もある。今後もフードテックに注目し動向を見守っていきたい。

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