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OMOのメリットは中国の事例を参考に、中国で浸透するアフターデジタル社会とは【用語解説】

アフターデジタルイメージ

さぁ、今日もDXに関する用語を解説していくよ。今日取り上げるのは「アフターデジタル」という言葉について。聞いたことある人も多いかもしれないね。具体的にはどんなことを指すのか、中国の事例なども紹介しながら分かりやすく解説していくよ。

みんな、もう「DX=デジタルトランスフォーメーション」は分かるよね。そう、AIIOTなど新しいデジタル技術を導入することで世の中がより良い方向に変わっていくことだ。「アフターデジタル」とはさらにその1歩先をイメージしてほしいデジタルがすでに日常に浸透し、オフラインとの垣根がなくなってデジタル技術がリアル世界を包み込むような世界のことを指すんだ。

……そうは言っても、具体的にどんな世界なのかイメージしづらいよね。そこで、今回はアフターデジタルという言葉を提唱した藤井保文さんと尾原和啓さんによるベストセラー本「アフターデジタル オフラインのない時代に生き残る」を(日経BP社)参考に、くわしく見ていこう。

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「アフターデジタル」で、社会はどう変わる?

今、日本は国を挙げてDXを推奨し、多くの企業もデジタルテクノロジーを取り入れて時流に乗ろうとさまざまな取り組みを始めているよね。

アフターデジタルのイメージ

Monopoly919- stock.adobe.com

なぜ政府が躍起になってDXを推進しているのかというと、日本企業がDXを進めることができなかった場合、導入から20年以上も経つような古~いシステムを使い続ける企業が時代に乗り遅れてしまうから。これではSaaSMaaSといった「aaS(アズ・ア・サービス)」のように互換性の高いシステムと遠ざかってしまい、国際的にも置いてきぼりを食らってしまうことで受ける経済的損失は年間12兆円になるのではないかともいわれているんだ。これは経済産業省が警鐘を鳴らす、いわゆる「2025年の崖」問題のことだね。

具体的にアフターデジタルの世界について考えていこう。例えば、現金でモノやサービスを買うしかなかった頃は、誰が何を買ったかというデータを取って分析をすることができない。よっぽどのお得意さまや顔見知りでない限り、「あの人はいつもあの商品をこれくらいの頻度で買う」なんてデータを蓄積することはできなかったんだね。

しかし、最近では会員登録を用いたり、オンライン決済を使ったりすることで、商品の購買やWebの検索履歴など、顧客の行動データを蓄積し、分析までできるようになってきた。今後は、こうした膨大な行動データを活用して、次の商品開発やサービスにつなげられる企業が残っていく時代になったというわけなんだ。

でも著書では、今の日本の状況はあくまでもオフライン(インターネットにつながっていない状態のこと)がメインになっていて、オンラインはオマケ程度と捉えている「ビフォアデジタル」ではないかと本の中で書いている。そう、日本はまだまだオフラインを重視していて「アフターデジタル」が浸透していないんだ。

ただし「これからの社会はリアルを重視する必要はない」と言っているわけではない。著者は、アフターデジタルの社会においては、オンラインとオフラインを一体のものとしてとらえた上で、オンラインにおける戦略を考える「OMO(Online Merges with Offline)」という概念が大切だと説いているんだよ。OMOとは日本語で直訳すると「オンラインとオフラインを融合する」ことになるんだ。

オンラインの特徴はいつでもどこでもインターネットで繋がることができ利用できること。対してオフラインは、人と対面で接したり、現地に足を運んだりすることで感動的な体験が得られる。このどちらも併せ持ったサービスこそがアフターデジタル時代に求められているんだ。

OMOを実現する中国の「アフターデジタル」事例

OMOを実現している中国の事例を見てみよう。

アリババグループが展開するスーパーマーケット「盒馬鮮生(フーマーフレッシュ、以下フーマー)」はEC機能を兼ね備え、アプリ上で商品を購入したら30分以内に配送する(3km圏内に限る)のが特徴だ。

ところが魚や野菜などの生鮮食品はオンライン上で新鮮さまでは確認できない。そこでフーマーでは、店舗内に、魚介類をいけすにいれて展示するエリアや海鮮料理が食べられるフードコートなどを設置したんだ。さらに、注文が入ってから配送されるまでの様子も目で見えるように設計した

LIGHTFIELD STUDIOS- stock.adobe.com

こうした配送システムを導入したことによりどういう効果が期待できるか、想像してみてほしい。「こうやって商品が届くんだ」とか「いけすに入った魚がすぐに自宅に」といった安心感やワクワク感を得る。しかも、オンラインで注文した商品は30分以内に届いて便利。そうしたオフラインとオンラインの相乗効果を生み出すことで、利用者を獲得していったんだ。今やフーマーの配達圏内は家賃相場も高くなるほどの人気だそう。これはあくまでも一例だよ。中国では日用品の購入に始まり、フードデリバリー、自転車シェア、医療、教育など幅広くオンライン化が進んでいて、社会全体に「アフターデジタル」が浸透しているんだ

「アフターデジタル」は企業と顧客に大きなメリットあり

このように、オンラインとオフラインを一体として考えることで企業側は顧客の行動データを蓄積できる。そうすれば、日々の発注の無駄をなくし、在庫の廃棄やフードロスを減らすことにも貢献できるかもしれない。そうして削減できた時間やリソースを生かして、より顧客満足度を上げるマーケティングに注力することにつながっていく。そうなれば、顧客は今以上に質の良いサービスを受けられる可能性が高くなるのは明らかだよね。

Sulabaja- stock.adobe.com

また、中国ではアフターデジタルによって社会全体が改善されてきているともいわれているんだ。例えばタクシー配車サービスの「DiDi(ディディ)で」はドライバーのグレードがユーザーの評価によって上下する。当然給与面も評価に応じて高くなるため、ドライバーは顧客満足のために何ができるか試行錯誤するよるようになる。こうした試行錯誤を繰り返すことでサービスの向上につながるというわけだ。

具体的には、ドライバーの行動データを専用アプリが読み取り、「早く配車リクエストに答えたか」「早く顧客をピックアップできたか」などを判定。一定以上のスコアを越えるとグレード試験を受けられる仕組みなんだ。さらには、乗客もドライバーから評価をされる。「待ち合わせにすぐ来る」「丁寧な対応をする」といった行儀の良い乗客は、待ち時間が短くなるなど、得をするんだって。アフターデジタルが進むということは、企業側にも顧客側にも大きなメリットがありそうだね。

「アフターデジタル」が進む世界には、どんなデメリットがある?

さまざまなアプリ

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一方で、メリットばかりかというとそうではない。企業がアフターデジタルに切り替えるには巨額な投資が必要になる。アリババグループのように巨大な資本力や技術力を持っていないと、体力的に難しい面もあるんだよ。

だからといっていつまでも二の足を踏んでいると、アリババのように大きなプラットフォームを使っている顧客を、新たなプラットフォームに呼び込むことは非常に困難だ。つまり、後発企業になればなるほど参入しづらく、追いかけにくい先行者優位なんだよ。

日本はまだアフターデジタルな社会とはいえない。でも見方を変えれば、今、先行投資をしていれば有利だとも考えられるね。

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今後「アフターデジタル」な世界はどう進む?

日本はDX化という面で見るとかなり前進してきたといえるだろうか。

デリバリーサービスのイメージ

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Uber Eats(ウーバーイーツ)などの宅配アプリを使うようになり、外食に行く回数が減った人はたくさんいるだろう。AmazonやNetflixなど動画配信のサブスクリプションも一般的になり、DVDをレンタルしに行く回数も減ったよね。そうなると、今度は「せっかくリアルの場所を使うなら良い体験をしたい」と顧客が考えるようになるんだ。つまり、必然的に日本もアフターデジタルの考え方を取り入れなければならなくなる時代は遠くないだろう。

「モノからコトへ」「物売りから寄り添いへ」、さまざまな価値観の変化が起こりそうな、時代の変革点ともいえる現代。企業の都合ではなく、いかに顧客視点に立って、オンラインとオフラインの垣根をなくして考えられるかが、企業の生き残りのカギになっていきそうだ。こうした経営課題をチャンスと捉える日本発のOMO型のサービスや企業が、どう生まれ、成長していくかとても楽しみだね。

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