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「レベル4はいつから?」自動運転レベル3を達成した日本、世界のレベルは今どこまでか

100年に1度の大変革時代を迎えている自動車業界。自動運転技術の発達が進み、2021年は世界各国で実用化に向けて大きくフェーズが変わる年になりそうだ。現時点でどこまで実用化が進んでいるのか、海外と日本の現状について最新の動向を紹介する。

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「日本はレベル3」0~5レベルの自動運転技術とは

自動運転技術とは、機械が乗り物の操縦を自立的に行うシステムのことを指す。人の手に頼らない自動運転は自動車に限らず、航空機や船舶などにも導入が進んでいる。

自動運転技術の歴史は古く、自動車が普及し始めた1900年代からすでに開発が進められていた。日本では1977年につくば機械技術研究所の津川定之教授らによって自動運転車が開発され、実際に時速30キロの速度で走行できたという。

自動運転のイメージ

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現在は自動車メーカーに限らず世界各国で自動運転技術の開発競争が激化しているが、その背景には、「社会の変革」と「新たな市場開発」という2つの目的がある。

自動運転技術を実用化することで、交通業界に限らず社会全体に大きな変革をもたらすと考えられている。渋滞が緩和され、交通事故も減少するなど安全性や生産性が向上し、運転手や環境に対する負担の軽減や移動手段が減少している地域に向けた新たな移動サービスの創出も期待されている。

また、ここ数年、主要国において自動車の販売台数は横ばいで大きな成長はみられていない。(参照:一般社団法人日本自動車工業会)完全に無人で走行する自動運転技術を確立できれば、新たな市場を開発できるという希望もある。

アメリカの自動車技術者協会であるSAE(Society of Automotive Engineers)によると、自動運転のレベルはレベル0からレベル5までに分類されている。

<自動運転レベル1~5>
レベル0 自動運転機能なし(従来の自動車)
レベル1 アクセルまたはブレーキやハンドルの操作といった部分的な運転支援(例:自動ブレーキ、前の車について走る)
レベル2 高度な運転支援(例:高速道路の分合流を自動で行う)
レベル3 特定条件下における自動運転(特定の条件下かつドライバーの対応のもとシステムが運転を行う)
レベル4 特定条件下における完全自動運転(特定の条件下、システムが運転を行う)
レベル5 完全自動運転(常にシステムが運転を行う)

※官民ITS構想ロードマップ2020

現在、すでにレベル2のシステムを搭載した自動車は各自動車メーカーから多く発売されている。トヨタ自動車の「Toyota Safety Sense」やホンダの「Honda SENSING」、日産の「プロパイロット」など耳にする機会も多いのではないだろうか。

ちなみに、レベル1〜2までは運転支援という位置づけであり、事故を起こした場合は運転者に責任があるが、レベル3以上は自動運転システム側が事故の責任を持つとされている。

2020年4月には日本の道路交通法と道路運送車両法が改正され、レベル3の公道走行が解禁され、市販の自動車にレベル3のシステム搭載が可能となった。

2021年3月にはホンダが世界で初めてレベル3の市販車「LEGEND Hybrid EX・Honda SENSING Elite」を100台限定で発売。ホンダの新型レジェンドは一定の条件のもと、自動運転中にアイズオフ(目の解放)、つまり「よそ見運転」が可能となる。ほかにもハンドル操作が不要で速度と車線を維持するハンズオフ機能や渋滞中に運転手に代わってシステムが運転する渋滞運転機能などの機能を搭載している。

「アメリカと中国のレベルは…」世界をリードする自動運転業界のツートップ

自動運転技術において群を抜いているのは、やはりレベル4の部分的な実用化に踏み出しているアメリカと中国である。

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アメリカは、電気自動車メーカーのテスラを筆頭に自動運転技術で世界トップレベルの技術力を誇っている。なかでも注目を集めているのは、グーグルの親会社アルファベットの自動運転技術の子会社「Waymo(ウェイモ)」が開発した自動運転のソフトウェア開発や自動運転タクシーサービス「Waymo One(ウェイモワン)」である。

2018年には、セーフティドライバーが同乗する自動運転タクシーの商用化を世界で初めて実現した。さらに2019年には秘密保持契約を結んだ少数のユーザーに限り、セーフティドライバーすら同乗しない完全無人運転の配車サービスを実際に提供している。

一方の中国も負けてはいない。自動運転技術開発を行う中国のスタートアップ・オートXは、2020年に深セン市の公道で完全無人自動運転タクシー「ロボタクシー」の試験走行を行っている。

また、通信機器大手のHUAWEI(ファーウェイ)も中国自動車メーカーと共同してレベル4相当の自動運転車を開発しており、2021年冬の発売を目指している。5Gを活用して、信号や他の自動車の位置を自動で感知し、スピードや車線を選択して走行するという。

大手IT企業Baidu(バイドゥ)は、人工知能(AI)を融合させた自動運転技術のプラットフォームをオープンソース化するアポロ計画を2017年にスタートさせ、アメリカや日本、フランス、ドイツなど世界各国130社以上の企業や研究機関がパートナー登録しており、急成長を遂げている。自動運転業界OSのAndoroidとも評されており、完全にオープン化することで開発スピードが早められる狙いだ。

「2030年までに世界一を目指す」日本の自動運転の現在

日本政府は「2030年までに世界一安全で円滑な道路交通社会」の実現を掲げており、自動運転技術の発達によって、交通事故の減少や高齢者など移動弱者の交通手段の確保、物流業界のドライバー不足などの課題解決を掲げている。

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とりわけ交通事故においては、国土交通省によると交通事故の96%は運転者に起因しており、高齢者はブレーキとアクセルの踏み間違えが最も多く、若年層は安全不確認が最も多いという傾向があり、こうした事故を自動運転によって防ぐことが目指されている

日本政府は2025年をめどに高速道路におけるレベル4の実用化や物流での自動運転システムの導入・普及、限定地域における無人自動運転移動サービスの普及を目標に設定している。

2020年には国内で初めて公道を自動運転で走行するバスの定時運行が茨城県でスタートしたり、経済産業省と国土交通省が手がけるレベル4の自動運転車による実証事業で2025年までに全国40カ所以上で導入を目指していたりと少しずつ自動運転の普及が進んでいる。

ドライバーはもう不要!?完全自動運転によって変わる社会

現時点では市販車に搭載されているのはレベル3止まりだが、自動運転の最高峰であるレベル5の実現もそう遠くないといわれている。2020年代の後半から2030年代にレベル5のサービス開始を目標に掲げている自動車メーカーも多く、完全自動運転の時代がすぐそばまで迫ってきているのだ。

自動運転の未来のイメージイラスト

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システムがすべての運転を行うレベル5は、ドライバーだけではなくハンドルやブレーキ、ひいては運転席すら不要となり、車内のデザインや移動中の過ごし方も大きく変わることが予想されている。

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一方、レベル5の実現には技術開発だけではなく、事故発生時の責任の所在や補償制度の見直しなどの法整備やビッグデータを必要とする自動運転に欠かせない5Gエリアの拡大、ハッキングなどサイバーセキュリティ対策などが求められており、一筋縄ではないかないのが実状だ。各メーカーの自動運転技術開発や法整備など、今後の動向に注目していきたい。

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