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待ち時間ゼロへ。医療業界のDX化を進める 「ゼロマチクリニック」の挑戦

ゼロマチクリニック・天神の玄関前

2021年4月1日、福岡市中央区天神、ソラリアステージビルM2Fに「ゼロマチクリニック天神」が開院した。このクリニックのコンセプトは、その名の通り、「待ち時間ゼロを目指す」という画期的なものだ。全国的にもめずらしいクリニックが生まれた経緯や背景について、代表の古賀俊介氏に話を聞いた。

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効率化を極めるIT業界と、改善の余地がある医療業界の間で

医療業界における長年の悩みの種である「待ち時間」は、受診者にとってはもちろん、医療従事者にとっても大きな足かせとなっている。

ゼロマチクリニック天神・代表の古賀 俊介(こが・しゅんすけ)氏例えば、病院でよくある一連の流れを思い出してほしい。受診者が病院を訪問して名前や住所を記入し、症状について看護師に話し、それを看護師が記録して、医師に伝える。医師は、受診者と対面し、再度話を聞きながらカルテを書き、診察が終わった後には会計でも長時間待つことになる。

これにより、どんな問題が起きるか。受診者視点で見ると、病院に行くだけで半日・1日を費やすことになり、仕事や子育てなどに追われる人々にとってこの負担は大きい。ひいては、時間を理由に病院から遠ざかり、症状が悪化し、早期発見を阻むことにもなってしまうかもしれない。医療従事者の視点で考えれば、二度手間・三度手間の事務作業がかさみ、本来最も注力すべき医療行為、受診者のケアにあてる労力が奪われているといえよう。

こうした問題を解決するには、医療従事者や受診者だけではなく、抜本的なシステムを導入する必要がある。そこで、「ゼロマチクリニック天神」のプロデュースには、同じく福岡市中央区を拠点としてヘルスケアアプリケーションの開発を手がける「Inazma」が関わっている。そして、ここの代表を務めているのが、「ゼロマチクリニック天神」の医師でもある古賀氏なのだ。

元々古賀氏は、大学在学中から医学教育のためのWebサービスを開発する企業を立ち上げるなど、ソフトウェアエンジニアとしての背景を持ちながら勤務医として働いていたが、「ユーザー中心の思想に基づいてホスピタリティを重視しつつ、効率化を徹底するといういう面に長けたIT業界を見てきた自分なら、まだまだ効率化の余地が大いにある医療業界の悩みの種を解決できるのではないかと考えた」とゼロマチクリニック開院の経緯を語る。

デジタルにまかせられるところはまかせ、アナログでしかできないことにより力を注ぐ

古賀氏が医療業界の問題解決について考えていた2019年、もう1名の医師と出会ったことで生まれたのが「Inazma」だ。

まず取りかかったのは、医療業界における「無駄」を減らすこと。医師や看護師など、専門知識を持った人間ができるだけその人にしかできない仕事にエネルギーを注ぎ込めるよう、システムを活用し、データ入力や決済など事務作業の二度手間を減らせばいいと考えた。

<ゼロマチクリニック天神の特徴>

・スマホやPCで予約&来院時の手間をスリムに 事前にスマホまたはパソコンでゼロマチクリニックのホームページアクセスし、予約しておくことで待ち時間を減らす。予約も簡単で、事前に問診もしておくため、来院時の個人情報の記入や、0からのヒアリングが省けて時短。
・来院時の接触機会を低減 予約時に情報を入力しているので、話を聞くスタッフや書類記入を促すスタッフが不要で、予約時間に来院し、QRコードをかざして受付完了。非接触で感染リスクも低く。
・会計も事前登録のキャッシュレスでスムーズ 会計は、事前に登録したクレジットカード情報などでキャッシュレス決済ができるので、会計待ちや会計自体の時間をほぼ0に。

削ぎ落とせるステップは極力削ぎ落とし、「ゼロマチクリニック天神」では待ち時間だけでなく空間もスリムになった。実に、10坪程度しかないミニマムなクリニックで、スタッフの数も、待合室で同時に待つ受診者数も少ないため、都心の小さな空間で運用できる。この点もデジタルトランスフォーメーション(DX)化されているからこそ生まれた強みの1つだ。

とにかく極めたいのは「受診者ファースト」という考え方

「ゼロマチクリニック天神」では、24時間365日予約や相談ができるようにと、受診者との接点をすべてオンライン化している。予約もスマホで、相談もLINEから受け付けている。

また、完全リモートでのオンライン診療も行っている。診療科目が、内科一般、女性内科のため、風邪などすぐに薬をもらいたい場合は、来院の方がタイムラグは少ない。しかし、花粉症や生活習慣病、月経に関する悩みや低容量ピルの処方などについては、オンラインでの診療の方が都合がいいという人も多いのではないだろうか。

体調が優れない中でクリニックを訪れる時間やエネルギーは小さくない。テクノロジーを活用し、そうしたストレスや待ち時間を減らすことで、「病院をもっと身近に感じてほしい」と古賀氏。実際、同クリニックは、ランチタイムにも診療しており、土日も21時まで開いている。

一貫しているのは、「受診者ファースト」であること。

「待ち時間ゼロ」「非接触」とコロナ禍におけるキーワードをカバーしている同院だが、実は、開院の計画はコロナ禍とは関係なく進んでいたそうだ。

古賀氏は今後の構想について、「『ゼロマチクリニック』は、天神を皮切りに福岡市でもう数カ所拠点を増やし、クリニック同士が連携したデータやノウハウの共有を図り、自宅と職場の近くどちらに通っても情報が通じているような環境を構築していく予定です。今後ますます高齢化が進む日本において、待ち時間をはじめ、医療業界の抱える問題は深刻化するでしょう。こうしたシステムを他クリニックや病院にも導入し、DXを推進することで、さまざまな問題を1つ1つ解決していくことができれば、受診者の方・医療従事者双方にとってより良い医療が実現できると思います」と語ってくれた。スマホやパソコンが利用が難しい場合は、予約なしでの直接来院診察も可能だそう。

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人にしかできない仕事とデジタルにまかせられる部分をきちんと見極め組み合わせることで、より健やかな医療の明日が描かれていく日もそう遠くなさそうだ。

 

<ゼロマチクリニック天神>
住所:福岡市中央区天神2-11-3
ソラリアステージビルM2F
診療時間:平日・土日祝9:00〜21:00(昼休み:14:00〜15:00)
休診日:火・水曜
診療科目:内科、女性内科(風邪、花粉症、生活習慣病、月経・妊娠に関する相談受付

ライター:戸田かおり

戸田かおり

福岡市出身&在住。雑誌編集や企業広報、広告制作プロダクションで制作業務を経験し、フリーランスに。雑誌や冊子物のインタビューやブランディング、Webメディアの立ち上げなどに携わる。趣味は、猫、車、ボード&カードゲーム、ダーツ、麻雀。