「在宅勤務でDXが進む?」コロナ禍で企業の働き方改革が加速した背景
新型コロナウイスルの感染拡大によって人々の移動が制限され、多くの企業はモバイルワークや在宅勤務などのテレワークの導入を余儀なくされた。シトリックス・システムズ社の調査(2020年6月発表)によると、こうしたテレワークの拡大がデジタルトランスフォーメーション(DX)を加速させているという。企業がテレワークを導入することで、DXが加速するとは一体どういうことなのか。そもそも今回の新型コロナウイルスの影響で、テレワークの導入がどの程度進んだのかも気になるところである。DXはIT業界だけに関係しているもの…と考えている人や企業も実はテレワークの普及によってすでにDXを体験しているのかもしれない。
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目次
2020年、新型コロナウイルス流行でテレワークや在宅勤務は浸透したのか?
自宅やサテライトオフィスなど会社以外の場所でICTを活用して働く「在宅勤務」や「モバイルワーク」といった働き方を総称して「テレワーク」と呼ぶ。かねてより東京都は、働き方改革の一環として、そして東京オリンピック・パラリンピックでの交通混雑緩和のためテレワークを推進していたものの、都内企業(従業員30人以上)のテレワーク導入率は2019年度の調査では25%程度に過ぎず、緊急事態宣言前の2020年3月時点でもほぼ変わらず24%に留まっていた。しかし、緊急事態宣言後の2020年4月時点では62.7%と2.6倍に急増。つまり新型コロナウイルス感染予防のために一気にテレワークが浸透したことが伺える。
テレワーク(在宅勤務)はDXではない
新型コロナウイルスの影響でテレワークの導入率は上がったものの、会社のPCでなければできない業務があったり、業務に必要な書類を閲覧したり、上司の承認印を得るためだけに出社せざるを得ない人も多くいたという。仕事のプロセスや考え方が従来のままで、ただ業務を遠隔で行うだけではDXを進めるテレワークとはいえない。DXを進めるテレワークの実現には、テクノロジーの活用と同時に労働生産性の大幅な向上や業務の変革を伴わなければならないのである。
企業のDX推進につながるテレワークとは?
では、DXを進めるテレワークには何が必要だろうか。まずレガシービジネスの習慣を見直す必要がある。例えば、社内稟議や決裁、取引先との契約締結などにおける紙文化とハンコ文化をペーパーレス化や電子署名化するだけでも、DXへ一歩近づくことができる。業務を円滑に進めるための情報共有ツールの導入など、テレワークに関する社内制度や業務の進め方のアップデートも欠かせない。そして何より重要なことは、テレワークの導入自体を目的にするのではなく、テレワークによって何を達成したいのか明確な目的を設定することである。仮にその目的が労働生産性の向上であれば、テレワークの導入過程においてペーパーレス化や不要な業務を見直すことでその大幅な向上が期待できるだろう。
新型コロナウイルスの流行によって日本企業のDX推進も加速
新型コロナウイルスの影響によるテレワークの導入は、非接触・非対面を前提とした「新しい日常(ニューノーマル)」に対応する動きの1つだが、労働生産性の向上や新価値の創造を目指したテレワークを進めることで、企業のDXも推進される。特に小売業や飲食業、銀行の窓口業務、生命保険の営業のような対面での業務を抱える企業は、コロナ禍においてDXを一気に加速している。たとえばがん保険などを取り扱うアフラック生命保険では、これまでの紙文書による契約変更手続きを、AIを組み込んでデジタル化。AI OCR(人工知能を用いた光学文字認識機能)で紙文書をデータ化し、変換したデータをRPAで社内システムに自動で入力するなど効率化を図り、ウィズコロナで当たり前になる非接触・非対面に対応しながら顧客と従業員の利便性向上を実現した。
コロナ禍でもDX推進を実現するために
「補助金」や「助成金」など国のテレワーク支援制度の活用を
テレワークを導入するにあたって、通信機器の導入などコストがかかることで二の足を踏む企業も多い。そこで国や都道府県が設けた助成金など支援制度を利用して自社のテレワーク推進に活かしたい。具体的には、厚生労働省の「働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)」ではテレワークに取り組む中小企業事業主に対して、テレワーク導入にかかる費用の一部が助成される。他にも経済産業省の「IT導入補助金」や総務省による「テレワークマネージャー相談事業」、東京都独自の「テレワーク定着促進助成金」や「テレワーク導入促進整備補助金」などが設けられている。
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テレワークは情報漏えいを防ぐサイバーセキュリティ対策、勤怠管理やオフラインに劣らないコミュニケーションのあり方、デバイスや通信環境の整備など取り組むべき課題も多いが、会社にいてもいなくてもスムーズに業務が進められる環境を整えることは、新型コロナウイルスの対応に限らず、災害時の事業継続計画(BCP)推進や従業員の育児、介護といったライフイベントにも対応可能となる。多くの企業が少子高齢化による人材不足という採用課題に直面する中、テレワークのような多様な働き方の実現はその解決につながる一手となる。企業が生き残るためにも、時代の変化に適応したテレワークを推し進めていきたい。
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