知識

「GAFAの次はMT SAASが来る?」注目を浴びる6社のサービス内容とは

マイクロソフト

世界の市場を席巻しているGAFA(Google、Amazon、Facebook、Appleからなる企業群)の次に来るメガトレンドとして、「MT SAAS」と呼ばれる6つの企業が注目を集めている。本記事では、MT SAASとは何か、各社の事業内容や6社に共通する特徴を解説する。

【関連記事】
GAFAの次は中国BATHの時代か、DXのけん引役アメリカのGAFAを紐解く
日本も導入か、14億人を信用スコアで格付けする中国の社会信用システムとは【用語解説】

GAFAに続き、次の市場リーダーとなるのはMT SAAS

MT SAASとは、GAFAの次に市場のリーダーとなることが有力視されているIT企業群を指す造語で、GAFA同様各社の頭文字をとっている。この略称の読み方は「マウントサース」。

M→Microsoft(マイクロソフト)

T→Twillio(トゥイリオ)

S→Salseforce(セールスフォース)

A→Amazon(アマゾン)

A→Adobe(アドビ)

S→Shopify(ショッピファイ)

TwilioやShopify、Linkedin(リンクトイン)などへの投資実績を持つアメリカの老舗ベンチャーキャピタルBessemer Venture Partners(ベッセマー・ベンチャーパートナーズ)が、2020年11月に「GAFAの次に市場を牽引するのはクラウドサービスを軸とするMT SAASである」と発表した。

GAFAが世界的な大企業だけで構成されているのに対して、MT SAASは大企業と急成長中の企業が混在しているとも指摘している。

クラウドプラットフォームAzureで躍進する「Microsoft」

マイクロソフトのウインドウズ

Roland Magnusson- stock.adobe.com

1975年にビル・ゲイツ氏らによって設立されたMicrosoft社は、コンピュータOS「Windows」や表計算ソフトウェア「Excel」など誰もが知る製品を世に送り出してきた巨大IT企業だ。とくに1995年に発売したWindows95は、発売後数ヶ月で400万本近く出荷されるという圧倒的な記録を持ち、その後に開発されるOSのベースとなった上に一部のマニアックな人々のものであったパソコンやインターネットを大衆へと一気に広めた存在でもある。

Microsoft社が注目を集めているのは、同社が提供するクラウドプラットフォーム「Microsoft Azure(アジュール)」にある。システム開発・運用ができるクラウドサーバーで、世界55ヵ所にデータセンターを持ち、グローバル展開を可能にしたネットワーク網、強固なセキュリティを持ち、クラウド上でAIやIoTなどの開発を行える機能も搭載されている。

自社で設備を管理するオンプレミスと比べて、サーバーマシンを保有する必要もなく、運用・保守・管理などにかかる人的リースやコストを削減できるメリットがある。トヨタ自動車や富士通など国内の大企業もユーザーとなっており、世界2位のシェアを誇る。

クラウドコミュニケーションAPIを提供する「Twillio」

Twilioはアメリカで2008年に創業したクラウドコミュニケーションプラットフォームサービス(CPaaS)企業である。CPaaS業界において、世界各国約20万社、約900万人に利用されている世界トップシェア企業である。

Twilioが提供するコミュニケーションに特化したアプリケーション プログラミング インタフェース(API)は、電話やSMS、チャット、SNSなどのコミュニケーションツールをWebとつなぎビジネスに活用できるもので、たとえば営業時間外の電話をチャットに誘導する仕組みやパソコンと連携した在宅コールセンターなどを簡単に構築できる。

Twilioの導入によって営業時間外の問い合わせに自動応答するなどオペレーターの負担を削減できたり、従来の電話とSMSやLINEなどをつなげるWebサービスと比べて、低コストで顧客との接点をスムーズに増やせたりすることもTwilioが生み出した新たな価値の一つだ。

クラウド上で顧客データを管理するSalesforce

2000年にアメリカで設立されたSalesforce.comは、クラウドCRM(Customer Relationship Management)ツールを提供する企業だ。

CRMとは「顧客関係管理」を指し、顧客の連絡先、交流履歴、商談の状況といった情報を部署を超えて一元化し、営業やサービス、カスタマーサービス、マーケティングに活用するもので、SalesforceのクラウドCRMツールは世界トップシェアを誇っている。

CRMツール以外にも、SFAツール(Sales Force Automation:営業支援システム)も提供しており、部門や担当者ごとの売上予測を行う機能や過去に取引の案件管理

を行う機能などがある。

これまで属人的であった営業ノウハウや顧客情報が社内でシームレスに共有でき、業務の効率化と顧客満足度の向上が同時に望めるサービスだ。

AWSの快進撃でGAFAから唯一選ばれたAmazon

アマゾン

Sundry Photography- stock.adobe.com

1994年にアメリカでジェフ・ベゾス氏が設立したAmazonは、言わずとしれた巨大ECサイト「Amazon」を運営する巨大IT企業である。

GAFAから唯一選出されたのは、クラウド分野での成功にあるだろう。Amazonが提供するクラウドサービスAWS(Amazon Web Service)は、データベースやアプリケーションなどをクラウド上で利用できるクラウドプラットフォーム。ビッグデータの分析やシステム開発、Amazonが保有するAI機能の利用など、120以上のサービスが利用できる。

AWSの登場によって、ハードウェアの導入にかかる初期投資が不要となり、運用や管理などにかかる負担を削減できたり、自社のインフラの容量を気にせずに快適かつ迅速に開発を行えたりといった新たな価値が生まれた。

高機能な上に柔軟性や拡張性、セキュリティ性も高く、従量課金制で初期費用がかからない点などメリットが多く、世界全体でのシェアが3割を超え、突出して世界ナンバーワンの座についている。

サブスクに切り替えて好調なAdobe

adobe

tashatuvango- stock.adobe.com

1982年にアメリカで設立したAdobeは、看板商品である「Photoshop」や「Illustrator」といったクリエイティブ系ソフトウェアのパッケージ製品を販売する手法をとっていたが、2013年にサブスクリプション型クラウドサービス「 Adobe Creative Cloud」に切り替え、2020年には過去最高の売上を記録した。

また、クリエイティブ系サービス以外にも、読みやすいPDFを自動生成する「Document Cloud」やとAIと機械学習を組み合わせたサービス「Adobe Sensei」など新たなサービスも展開している。

従来のパッケージ製品と比較して、初期費用を低く抑えることができるAdobe Creative Cloudは、高額なパッケージ製品に手を出しづらかった見込み客へと大きく門戸を開いた。また、サブスク型に変わったことで常に最新版のソフトウェアを利用することが可能となり、買い切りのパッケージ製品では実現しづらかった価値を提供している。

越境ECの新王者Shopify

shopify

picsmart- stock.adobe.com

2004年にカナダで設立したShopifyは、EC構築プラットフォーム「Shopify」を提供する世界トップシェアのベンチャーである。簡単に本格的なオンラインストアを開設できるとして人気を博し、Shopifyを導入する企業はディズニーやテスラモーターズ、ルイ・ヴィトンニューヨーク・タイムズ、ペプシなど有名企業も含め60万社以上にのぼる。

Shopifyは、他のECサービスと比較して圧倒的に低コストで運用でき、海外展開も容易であること、5000種類を超える拡張機能アプリ(プラグイン)があり、マーケティング機能やSNS連携、配送関連機能などの追加が手軽に行える高い拡張性などの特徴を持つ。こうしたメリットから、資金に余裕のないスタートアップや中小企業がD2Cビジネスを実現させるチャンスをもたらしている。

【関連記事】
GAFAの次は中国BATHの時代か、DXのけん引役アメリカのGAFAを紐解く
日本も導入か、14億人を信用スコアで格付けする中国の社会信用システムとは【用語解説】

MT SAAS企業の共通項は「クラウド」と「BtoB」

GAFAがBtoCのサービスを中心に成長していったのに対して、MT SAASは主にBtoBのクラウドサービスを提供することで大きく成長している。

2030年までに企業向け、個人向けともにソフトウェアの大部分がクラウドに移行すると言われており、成長を続けるテクノロジー業界の中でも、クラウド分野は成長が著しいと見込まれている。

MT SAASが成長を続けることによって、ユーザーにとってより便利でより安価なサービスが登場するのではないだろうか。これから先、市場を長期的に牽引する存在となるMT SAASの今度の動向に注目していきたい。

DX.WITH編集部

DX推進に悩む人や企業に「九州の企業を中心とした具体的な事例」や「導入の方法」、「体制づくり」などの有益な情報をメディアを通じてお伝えし、DX推進の支援を行っています。AIやIOTなどデジタル技術を使って、新しい価値を生み出している九州・福岡のDXの事例やDXに関連するトレンドなどを紹介。DX推進を後押しするためのメディアとしてお役立てください。

 

運営:西日本新聞メディアラボ・AIソリューションズ
西日本新聞メディアラボ・AIソリューションズ(略称:N-AIs/ナイズ)は、西日本新聞グループのデジタル事業会社、株式会社西日本新聞メディアラボと、山口大学発のシンクタンク&コンサルティング会社、株式会社MOT総合研究所の共同出資で設立した、AI活用のトータルソリューションを提案する会社です。慶應義塾大学発・小売り企業向けAI開発のトップランナー”SENSY株式会社”などの企業と連携し、DXを進める九州・中国・四国エリアのAI導入、AIを活用した課題解決をサポートしていきます。

Facebook https://www.facebook.com/DX.With
HP https://nml-ais.co.jp/