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なぜ?経産省が警鐘を鳴らすも、日本企業のDX推進が進まない4つの背景

現在の日本でデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進している企業は、一部の先進的な企業に限られている。遅々として進展しないDXを推進しようと、経済産業省は2018年に推進するためのガイドラインを公表した。日本は世界でも後塵に拝しているが、日本企業のDX化が進まないのは大きく4つの背景があるといわれている。企業のDX化を阻んでいる要因はどのようものだろうか。経産省が公表している「DXレポート〜2025年の崖」と「DX推進のガイドライン」を中心に紐解いてみよう。

日本国内の企業のDX推進は4割弱

2019年に日経BPが公表した「デジタル実態調査」(有効回答895社)によると、DXを推進している国内企業は36%、全く推進していない企業は61%だった。企業規模別で見てみると、従業員5000人以上の企業だと80%に上るが、従業員300人未満の企業は21%にとどまるなど、DXの取り組みは一部の企業に限られている印象だ。調査では、大きい企業ほどDXが推進している理由として「経営トップの意識の高さ」「人材の豊富さ」にあると分析している。

DXが進まない背景①:IT人材不足、産業構造の課題も

日本の中小企業のDXを阻む課題はどこにあるのか。その一つとしてあげられるのは「DXを担う人材不足」だ。経産省が2018年に公表した「DXレポート〜2025年の崖」では

ユーザー企業において、システムに精通した人や、ITで何ができるか理解できる人材が不足していると指摘している。特に、AIやIoT、ビックデータの活用など新たなデジタル技術を身につけている「先端IT人材」の不足が懸念されている。そのため企業内で人材を確保できず、ベンダー企業に頼らざるを得なくなるのだが、ベンダー企業でも旧来のITシステムの維持保守に人員が割かれてしまい、若く才能のある人材を活かしきれない可能性を指摘している。

こうしたベンダー企業へ依存してしまう日本の産業構造も、ユーザー企業におけるIT人材の不足を招いている一因だ。そもそも少子高齢化が加速して新卒採用が難しくなっていく中で、新たなデジタル技術の教育と人材確保をどう担保していくのかが、大きな課題となっている。

DXが進まない背景②:データと組織「縦割り」の弊害

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次に多くの日本企業が抱える課題が「データの縦割り」だ。日本企業に多く見られる縦割りの組織構造のせいで、部署間のデータの連携や活用ができない状況に陥っていることが多い。各部署がそれぞれのビジネスに最適化されたシステムを構築した結果、他部署では活用できないというデータの「サイロ化(孤立)」が起こっている。

また、特定のアプリケーションやシステムが乱立することで、データが分散してしまうケースもあるだろう。日本オラクルが2020年5月に公表した調査によると、調査対象企業の73%の企業が、「バラバラでサイロ化されたデータが原因で、ステークホルダーが必要とするデータを提供できていない」と回答している。

せっかく収集したデータも部署内でしか蓄積することができず、いざ一企業としてDX事業に乗り出す際に、そのデータを活用できないなどの影を落としてしまうことになる。経産省が2019年に出した「DX推進指標」とそのガイダンスでは、DXを推進するためには、サイロを超えて取り組む必要があると指摘。各部門に分散したノウハウを活用するため、いかに周りを巻き込んだ体制を組めるかどうかが重要だとしている。

DXが進まない背景③:ブラックボックス化したレガシーシステムの足かせ

人材不足、データの縦割りに関連して、システムの「ブラックボックス化」がある。長期間にわたって大規模なシステム開発を担ってきたIT人材が2025年までに大量の定年退職を迎え、属人的になってしまっていたシステム継承が難しくなっていることが要因だ。日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)のアンケート調査でも、約8割の会社が老朽化システムを抱えており、約7割もの企業が、老朽化システムが足枷になっていると回答している。

経産省の「2025年の崖」では、ブラックボックス化した老朽化システムを放置した場合、最大12兆円(年間)の経済損失を被る可能性があるとしている。DXの基盤となるシステムの刷新・再構築を推進するため、経産省は「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン」(DX推進ガイドライン)を策定。問題を見える化するためのポイントや、実行プロセスなどを示している。

DXが進まない背景④:経営者による明確な経営戦略を持っているか

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ITシステムの刷新とDXの実現には、経営者にかかっていると言っても過言ではない。他「デジタル技術を活用してビジネスをどう変革するか」という経営戦略が何よりも不可欠だと経産省は言及している。DXではビジネスモデルや組織、企業文化そのものの変化が求められており、企業自身の変革であるといえる。

先述した経産省のDX推進ガイドラインでは、経営者の明確なビジョンがなく、部下への丸投げ状態をDXの進まない要因として挙げている。DXをすることが目的なのではく、まずもって「DXで何を成し遂げたいのか」という経営戦略・ビジョンの提示が求められる、ということだ。また、「経営トップのコミットメント」、それを実行するための体制や横断的な企業内組織の構築が欠かせないと指摘している。

「人材」「組織体制」「経営」「システム」と、DXが進まない4つの背景についてまとめてきた。実際は、企業によって課題はさまざまで、複雑に絡み合っているものだろう。一部署、一部門で解決できるわけはなく、経営者を中心に全社的な現状のチェックが必要だ

DX.WITH編集部