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「確実に日本企業は敗者へ」経産省のDXレポート2で発覚、DXが進まない企業の実態

デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進しなければ日本企業はデジタル競争の敗者になりかねない」と警鐘を鳴らした経済産業省のDXレポート(2018)。公表から約3年が経ち、経産省は2020年12月にDXの推進状況を取りまとめた中間報告書「DXレポート2」を公表した。それによると、9割超の企業でDXは進んでいない実態が明らかにされた。想定よりも厳しい現状を受け、レポート2では「今すぐ企業文化を変革できない企業は、確実にデジタル競争の敗者としての道を進む」と前回よりも危機感を強める。2021年現在の日本のDX事情を分析したDXレポート2の内容を読み解いていく。

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2018年発表した経済産業省のDXレポートとは

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2018年のDXレポート公表によってデジタル変革に対する危機感は広まったが、DXに取り組む企業と未着手の企業とで二極化しつつある。そうした現状を受け、レポート2ではコロナ禍による企業活動への影響を明らかにするとともに、DXを加速するため企業が取り組むべきアクションについてより具体的に示している。

レポート2は要点をまとめると

・2018年のDXレポートから企業はどう変わったのか

・コロナ禍によって急速に進んだデジタル化

・コロナ禍でDXの緊急性が高まっている

・民間企業がDXを成し遂げるために必要なアクション

・ベンダー企業も事業変革が必要

・民間企業のDXをサポートするための政府の政策

といった中身になっている。

日本企業の9割超がDX進まず、その理由とは?

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2018年のDXレポートでは、「2025年の崖」という言葉を使って日本の危機を警鐘2025年までにDXを完了させデジタル企業に変革しなければデジタル競争の敗者となり、日本経済は最大年間12兆円の経済損失が発生すると訴えていた。しかし、今回のDXレポート2では、企業のDX自己診断結果は、2019年の時点で約95%の企業がDXに「まったく取り組んでいない」か「散発的な実施(一部の部門や単発など)」レベルにとどまっていた。コロナ禍でデジタルが急速に進んでいるようにも感じるが、いまだDXがほぼ手つかずのまま進んでいない実態が明らかにされたのだ。

さらに、ITシステムのユーザーの企業によって構成する日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)の調査では、「デジタル化のトップランナー」と自認している企業は40%に達しているのに、現在のビジネスモデルの抜本的な改革に取り組む必要性を感じている企業は12%と少なかった。一方で、9割以上の企業が、新しいビジネスモデルの開拓や抜本的なビジネスモデルの変革が必要と感じており、意識とアクションには乖離が生じていることも透けて見える。

つまり、DXの必要性を理解しているが、自分の会社は健全だ、現時点での競争力があるのでビジネスモデルの変革は必要ない、と思い込んでいる企業が多いといえる。DXの本質は「経営戦略やレガシー文化からの脱却」であるはずなのに、「競争優位性が確保できていれば、これ以上のDXは不要」という誤った認識が広がってしまっている状況なのだ。

コロナ禍で表出したDXの本質

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コロナ禍を契機に企業のデジタル化が進んだ現状についても紹介している。例えば、テレワークの導入をみると、2020年3月時点で導入率は24%だったのが、4月7日に発令された第一回目の緊急事態宣言後は、62.7%と1ケ月で2.6倍に大幅増加。経営トップの判断次第で、企業変革を達成できる証だと評価した。

コロナ禍は、生活者の生活様式や価値観も大きく変えた。テレワークやキャッシュレス決済など新しいサービスを歓迎し、ビジネスの中心は急速にデジタル空間に移ってきている。

一方で、急速な市場の変化に対して、「2025年を待つ余裕はなくなった」と国は危機感を募らせる。「今すぐ企業文化を刷新しビジネスを変革できない企業は、デジタル競争の敗者としての道を歩むことになるだろう」と今回はより踏み込んだ表現で、企業にDXの推進を促す。そして、DXの本質は単なる既存のITシステムの更新ではなく、企業文化の刷新にあると強調しているのだ。

企業が目指すべき姿、変革を遂げるためのアクションとは

日本経済のDX状況に警鐘を鳴らした上で、レポートでは、企業が目指すべき姿とそのために必要な具体的アクションを紹介している。

企業は常に変化する顧客・社会の課題をとらえ、「素早く変革し続ける」能力を身に着けることが重要だ、と強調。事業変革するために必要なアクションについては、超短期~中長期に分けて具体的に示している。

<コロナ禍を契機に企業がすぐにでも取り組むべきアクション>

業務環境のオンライン化

業務プロセスのデジタル化

従業員の安全・健康管理のデジタル化

顧客接点のデジタル化

これらは、コロナ禍でも事業継続させるために必要な対応として挙げており、DXのファーストステップにもなる。実際に、これらの取り組みを導入できたかが、コロナ禍でも事業継続できかの分岐点になっていたことは明白だ。

また、オンラインチャットやWeb会議システムなどのツール導入には、経営者のリーダシップが欠かせない。

<短期的に取り組むアクション>

DX推進体制の整備

DX戦略の策定(DX成功パターンの策定など)

DX進捗状況の把握

<中長期的に取り組むアクション>

デジタルプラットフォームの形成

産業変革のさらなる加速

DX人材の確保

デジタル企業へと変革するプロセスでは、まずDXを走らせるための体制を整えることが必要だ。短期的なアクションとして、自社の現状を振り返るとともに、企業内で「DXとはなにか」「DXの目的はどんなことか」の共通理解を持つための戦略や体制を構築することが求められる。

そして中長期的には、DXを促進する高度人材を確保できるための仕組みづくりや、自社だけでなく業界全体の業務効率化を促進できる面では、共通のデジタルプラットフォームの形成が必要だとも言及している。

経産省のレポート2ではITベンダーも変革を求めている

今回は、ITシステムを提供するベンダー側にも変革を求めている。発注元からの要望に応じる「受託開発型」から脱却し、顧客や社会の課題や変化に合わせてフィードバックしながら開発を進める「アジャイル型開発」に変わる必要があると訴える。そして、将来的にはユーザー企業の変革を促進するパートナーとなることが望ましいとしつつ、ベンダー企業自身が社会に新しい価値を提供するビジネスモデルを生み出すことを期待している。

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DXレポート2では、DXの停滞要因として、政府もDX施策が十分なものではなかったとも振り返っている。民間企業の事業変革をサポートするため、企業の内面へ働きかける施策(DX推進指標の策定など)と、DXを促進させるための周辺環境の整備(DX認定制度など)に力を入れていくとしている。

DX.WITH編集部

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