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農業や医療の業務効率化を実現、AIやIOTの「活用事例」とは

デジタルトランスフォーメーション(DX)を進めるには、IoTAIなどの新たなデジタル技術の活用が欠かせない。すでに農業や医療分野、外食産業でも導入され、業務効率化、人手不足の解消に役立っている。しかし、まだ社会認知度は高くなく「AIやIOTって何ができるの?」と疑問に思う人もいるだろう。そこで今回は、新しいビジネスモデルを発想するために、IoTとAIとは何が実現できるのか解説していこう。

「DX=デジタル化ではない」DXの定義とは

経済産業省(以下、経産省)が2018年12月に発表した「DX推進ガイドライン」によると、DXとは「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズをもとに、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義されている。また経産省は、IT化とDXの差について「業務やビジネスに対する代替・改善・拡張にとどまるものであるか、破壊・変革・創造を伴うものであるか」とその違いを挙げている。

つまり事業にAIなどのデジタル技術を取り入れるだけではDXとはいえず、新たなビジネスモデルの考案や働き方改革のような企業の成長に関わる取り組みを達成するためのツールとして、デジタル技術を活用することがDXといえるわけだ。

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「介護や農業、工場でも活用」
IoTであらゆるモノがインターネットにつながる

AI・IOT活用イメージ
IoTとは「Internet of Things」の略称で、これまではインターネットに接続されていなかったデジタルカメラや家電、自動車など身の回りのさまざまなモノがインターネットに接続されることを指している。また、IoTにおける「モノ」とは、物体に限らず自然現象や人間の行動も含まれており、モノに取り付けられたセンサーが周辺の気温や人数、人の動きなどのデータを収集し、クラウドに蓄積。そうしてIoTで蓄積したデータを分析し活用していくことで、業務の効率化や高精度の予測、効率的な機械の制御を実現できるようになる。

例えば小売店内に設置されたセンサーが入店者数や店内での動線、棚ごとの客数などを検知し、それまでは自動で収集できなかった顧客の行動をデジタル化して集約することで、マーケティングの新たな切り口として役立ることができるのだ。IoTによってモノの遠隔操作や周辺のデータの収集が可能となり、遠隔地からのモノの位置や動き、環境といった状態を知ることができることから、現在は介護や農業、工場などさまざまな場で活用されている。

AIの種類は2つ、共感や感情を持って行動する「GAI」と
言語や画像、音声の識別や制御を行う「AGI」がある

AIとは「Artificial Intelligence」の略称で、人間が持つさまざまな知覚や知性、情報処理を人工的に再現するものとして1950年代に研究がはじめられ、2000年ごろからビッグデータを用いてAIが知識を獲得するディープラーニング技術によって精度が向上。人間と同様に与えられた情報をもとに、共感や思考、感情をもって行動することができる汎用的人工知能(GAI)、言語や音声、画像の識別や機械の制御などを行うことができる特化型人工知能(AGI)の2種類に分けられる。特化型人工知能は、医療診断や金融取引、自動運転などで多くの分野ですでに運用されている。

IoTとAIとの関係性

IoTとAIはまったく異なる性質のものながら、ともに語られることが多い。それはビッグデータと関係が深いという共通点があるためだ。ビッグデータとは、Volume(容量)、Variety(種類)、Velocity(速度、頻度)という3つの単語の頭文字をとった「3V」が、他のデータを凌駕するほど大きいことからビッグデータと呼ばれている。IoTの発達によって、ビッグデータをリアルタイムで収集できるようになり、膨大かつ多様なビッグデータをAIがスピーディーに分析することで、新たな価値を見出すことが期待されている。

「農業や医療も」身近にあるIoTとAIの活用事例

出典:Monopoly919- stock.adobe.com


IoTやAIが生活においてどのように活用されているか、実際の事例をみてみよう。農業分野ではAI搭載ロボットが人間に代わって収穫を行い、育成環境をAIが管理したり、温室内の病害を予測したりしている。医療分野においては、AIによるレントゲンや心電図などの画像解析の他、薬剤やワクチン開発が行われており、自動車業界ではAIによる自動運転の研究が進められ「AI運行バス」などの実証実験が各地で盛んである。

外食業界では、AIが店内の混雑状況をリアルタイムで解析する「混雑状況確認サービス」を導入する店舗が増加。IoTとAIの活用によってあらゆる業種で人手不足の解消や業務時間の短縮化、効率化が期待されている。ビジネス以外にも、駅やオフィスのトイレの空室情報やビルの空調や照明などもIoTとAIによって管理されるなど、生活の場においてもIoTとAIが省エネや暮らしの快適化に役立っている。

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5G環境でさらに加速するIoT&AI

2020年より部分的な機能移行がはじまる第5世代移動通信システム(以下、5G)は、「高速大容量通信」、「低遅延」、「同時多接続」という特徴を持つ。5Gは4G・LTEと比較して約100倍の通信速度となり、遠距離通信における遅延は1ミリ秒以下。100万台以上のデバイスが同時接続できるなど、これまでの通信システムが劇的に変わる。

自動運転や遠隔手術のような1秒の遅れも許されない精密な作業も5Gの本格導入によって可能となるであろう。身近なところでは、家にいながらVR(仮想現実)での遠隔旅行やコンサート、スポーツ観戦なども楽しめるように。また、これまでは長い年月をかけて蓄積したデータを分析していたが、5G環境ではリアルタイムで得られたビッグデータを瞬時に分析することが可能となり、さまざまな企業活動に変革をもたらすと考えられる。

ここまで、AIやIOTでできることについて解説してきた。AIでは、人間に代わって思考したり、画像を判別したりして分類や識別、予測することが可能。IOTはモノとインターネットがつながることで、モノとモノが通信しあい、読み取ったデータをコンピューターに送信すること。5G時代は、IoTやAIを活用して新たな事業を創造する絶好の機会。ビジネスチャンスの芽を見逃さず、変革の好機としたい。

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西日本新聞メディアラボ・AIソリューションズ(略称:N-AIs/ナイズ)は、西日本新聞グループのデジタル事業会社、株式会社西日本新聞メディアラボと、山口大学発のシンクタンク&コンサルティング会社、株式会社MOT総合研究所の共同出資で設立した、AI活用のトータルソリューションを提案する会社です。慶應義塾大学発・小売り企業向けAI開発のトップランナー”SENSY株式会社”などの企業と連携し、DXを進める九州・中国・四国エリアのAI導入、AIを活用した課題解決をサポートしていきます。

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