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「オリンピックが顔パスに?」日本の最新DX事例とは

日本企業の多くが重要なテーマとして注目しているデジタル・トランスフォーメーション(以下、DX)。具体的なイメージがつかめない人も多いはず。日本企業による最新のDXはどんなものがあるのだろうか。今回は、NECの顔認証システム、富士通が手掛けるチケットの電子化、大日本印刷(DNP)が手掛けるDMのパーソナライズ化の3つをクローズアップしてみていくと共に、日本企業におけるDXの浸透具合と合わせて紹介していこう。

DXで成功しているのは約2割

国内でDXを推進している企業は36%、全く推進していない企業は61%。そんな調査結果が、2019年に日経BPから公表された。同社が国内900社の企業を調査した「デジタル化実態調査」によると、企業の規模が大きいほどDXを推進している企業の割合は高くなっている。従業員5000人以上の企業だと80%だが、従業員300人未満の企業は21%にとどまるなど、大きな開きが出ている。さらに、DXを推進している企業の中でも「本気で取り組んでいる」企業は65%に上るが、「成果を上げている」企業は26%。多くの企業が試行錯誤しているのが現状だ。

そうした中でも、DXを成功させ、新しい価値を生み出している先進事例をいくつか紹介したい。

【DX事例】どこでも「顔パス」OKの時代へ、 NECの顔認証

顔認証イメージ

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日本電気株式会社(以下、NEC)は、同社が世界に誇る「顔認証システム」の活用をあらゆる生活シーンで広げようとしている。顔認証は空港での出入国管理や企業の入退室管理など、本人確認が必要なセキュリティ対策が必要な場面で活用されている。これまでの本人確認は人による目視が一般的。そのため、確認作業の人的・時間的コストがかかったり、なりすましのチェックが難しかったりするなどの課題があった。

その点、顔認証は目、鼻、口などの位置や形などを特徴として捉えるため、なりすましが難しくセキュリティ性が高いとされている。機械の操作が不要な「非接触方式」のため、スピーディーかつ衛生的であることも注目を集める。現在は千、万単位の大量の人をチェックしなければならないコンサートや世界規模の大会などで採用が進んでいるようだ。

NECのHPによると、同社の顔認証は1200万人分の静止画の認証エラー率0.5%と世界トップクラスの正確性を誇る。なぜなら、人工知能(AI)のディープラーニング(深層学習)で他人との違いを強調する独自の工夫を施しているからだ。それにより、マスクやサングラスをしていたり、顔を横に向けていたりしても、人が立ち止まらずとも識別できるというのだ。2021年に

開催予定の東京五輪でも、アスリートやスタッフ、ボランティアら約30万人の大会関係者が会場入りする際の本人確認に利用される予定だ。顔認証システムが五輪で採用されるのは初となる。

NECは、顔認証による手ぶらショッピングやホテルへのチェックインなどの実証実験をスタートさせている。どんなとき、どんな場所でも「顔パス」で済んでしまうストレスフリーな生活もそう遠くないかもしれない。

【DX事例】富士通が手掛けた「チケットレボリューション」

野球観戦

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富士通が手がける電子チケットサービス「チケットレボリューション」。プロ野球の日本ハムファイターズの試合観戦チケットを電子化し、誰でも気軽に買えるよう販売方法を簡略化させたシステムだ。従来の課題だった、野球観戦ビギナーからの「いつ、どこで、どんな風に買えるのか分からない」とのニーズに応えたものだ。

特徴的な点は大きく2つ。まず1つに、「試合」「枚数」「座席の種類」「決済方法」を指定するだけでチケットを購入できる手軽さだ。これまで購入した席の好みをAIが学習し、オススメの席を自動で提案してくれる。使えば使うほど、使い勝手がよくなるというのだ。「どうしてもこの席で見たい」というファンは自分で好きな席を指定することもできる。また、球団側にとっても、席の割り当てや空席残数管理など業務の負担減につながっている。2つ目は、購入したチケットを公式リセールできる点だ。公式リセールサイトを公式サイトと同一プラットフォーム上で運営。もし試合に行けなくなったとしても、簡単に出品してリセールできる。このように、従来の野球ファンのユーザビリティを高めるだけでなく、チケット購入の心的ハードルを下げることで、新しいファン層の開拓を狙っている。

富士通は今後、プロ野球でなく他のスポーツやエンタメへの導入を目指しているという。

【DX事例】デジタルとアナログを融合した大日本印刷(DNP)の「DM送信アプリ」

ダイレクトメール

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最後に紹介するのは大日本印刷株式会社(以下、DNP)が2019年にリリースした「DNPパーソナライズドオファーサービス」だ。これは、家庭に送られてくる広告のダイレクトメール(DM)を、生活者の嗜好や最適なタイミングを見極め、自動的に送ることができるビジネス用のアプリだ。

デジタルマーケティングで集めたデータは、ウェブ広告や電子メールなど「デジタルメディア」に限られていることが多い。一方で、シニア層はアナログ媒体に馴染みがあり、目に留まりやすい。また、DMの方が電子メールより開封率が高いとされるデータもある。そこで、DM送信アプリを使うことで、アナログな紙媒体のDMでも、デジタルマーケティングを活用してパーソナライズした情報を消費者に自動で送ることができる。つまり、デジタルとアナログのどちらでも、個人に最適化した情報を常に届けることができるのだ。

実際の生活者の購買活動は、デジタルと現実を行き来するもの。DNPは「デジタルかアナログか」ではなく、両者を融合させ、企業のより効果的・効率的なデジタルマーケティングを支援している。

今回は、生活者目線に近いDXの事例について紹介した。ネット広告に限らずリアルでの販売・サービスにおいてもデジタル技術によるパーソナライズ化が加速している。それに伴い、私たちの生活もますます変化していきそうだ。

DX.WITH編集部