医療現場に自走ロボットを導入、PCR検査や看護補助で人手不足解消なるか
コロナ禍で著しい活躍をみせているのが、医療現場などに導入されているロボットだ。医療従事者の感染リスクや負荷軽減のためにロボットの需要は高まっており、PCR検査を全自動で行うロボットや看護師代替ロボットなどの登場により、医療・介護現場の拡充に貢献している。感染予防から治療まであらゆる場面で活用されているロボットについて国内外の最新事例を紹介する。
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PCR検査や看護補助もロボットで!コロナ治療に関わるロボット事例
1日最大2500件の検査を可能とする自動PCRロボット検査システムを川崎重工が開発した。医師が遠隔操作して検体を採取し、産業用ロボット(マニピュレータ)が自動で分析作業を行う。運動学によって関節の角度などの位置制御が行われ、検体採取のような細やかな動きを実現している。
従来は約3時間かかっていた検査時間を80分に大幅短縮し、24時間連続稼働が可能。無人化・自動化によってヒューマンエラーの防止、人員不足の解消、医療従事者の感染リスクや作業負担の軽減が期待されている。同社は看護をサポートする移動型ロボットの開発も進めている。簡単な問診や心音の確認などの診察準備を遠隔操作で行ったり、食事の状態や薬の量などの情報を記録したりと軽症者のサポートを目指す。
こうした医療従事者を支えるロボットは海外でも活用が進んでおり、イタリアでは人工知能(AI)を搭載した看護師代替ロボットが導入され、コロナ患者の呼吸状態や血圧などを確認する。搭載されたカメラとマイクを通して医師と患者がコミュニケーションでき、接触回数を減らすことで院内感染の防止に寄与している。
感染者数世界2位(2021年1月時点)のインドでも医師や看護師をサポートするロボット「ミトラ」が活用されており、ミトラは患者からの質問へ返答する機能や過去に接した患者を把握できる顔認識機能、体温計測機能などを持つ。こうした機能を活用して病院の入り口での患者のふるい分けやICU内で胸部に設置されたカメラを使って患者と家族間のコミュニケーションのサポートを行い、医師や看護師のアシスタントとして活躍している。
消毒液の散布から密の監視まで、感染予防で活躍するロボットたち
ロボットの活躍は治療の現場だけにとどまらない。来院者の検温や手指や院内の消毒、検体搬送とさまざまな状況で医療従事者や来院者の安全確保に活用されている。
エレベーターのボタンや階段の手すりなど、消毒が必要な箇所を搭載されたカメラやIoTセンサーによって自動で判断し消毒液を散布するものや、自律走行しながら深紫外線(紫外線の中でも波長が短く、水や空気を殺菌する能力が認められている)を照射して新型コロナウイルスを殺菌するロボットなど、さまざまな消毒・殺菌用ロボットが開発されており、病院以外の一般企業のオフィスにも導入されている。建設業の大林道路はデンマーク製の完全自律走行型殺菌ロボットを現場事務所に導入。天井など人の手が届きづらい箇所も深紫外線を照射して除菌し、新型コロナウイルスの感染予防を目指す。
このほかコロナ患者に薬や食事を運ぶ配膳ロボットや、病院の床を清掃したり検体を搬送したりするロボットなども活用されている。シンガポールでは犬のような外見の4足歩行ロボット「spot」が”密”の監視に一役買っている。遠隔操作されたロボット犬spotが公園を巡回し、監視員がリアルタイムで公園内の様子をモニタリング。接近している人たちを発見すると注意を促す音声を流している。
こうしたロボットの活用によって非接触を実現し、新型コロナウイルスの感染予防に役立っている。
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メンタルのケアやコミュニケーションを支えるロボットも登場
ロボットによるサポートは物理的なものだけではなく、人間の心やコミュニケーションなど精神的なものも支えることが目指して開発が進められている。
2020年には東京都内の小学校で、新型コロナウイルスの影響で不安を抱える小学生の心のケアを目的に家族型ロボット「LOVOT(ラボット)」を導入する実証実験が行われた。心のケアに加えて、新型コロナウイルスの影響により中止となった数々の行事の代わりに児童の思い出づくりを目指す狙いもある。
またコロナ禍において、大勢の人が集まる式典は開催が中止されたり簡素化されたりと大きな影響を受けている。そこでビジネス・ブレークスルー大学・大学院(東京都千代田区)は2020年に行われた卒業式にて、普及型コミュニケーション「newme(ニューミー)」を導入。遠隔地の学生が卒業ガウンとハットを身にまとったアバターロボット「ニューミー」を操作し学長から卒業証書を受け取る完全オンラインの卒業式は話題となった。
いまだに世界中で猛威をふるう新型コロナウイルス。2021年2月には日本でもようやく新型コロナウイルスのワクチン接種が開始したが、いまだ収束は程遠いのが現状だ。医療現場はもちろん人々の安定した生活のために、ロボットのさらなる進化が期待される。
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