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中小企業のDX推進を後押しする「補助金・助成金」の種類やメリットを解説

デジタルトランスフォーメーション(DX)を取り入れると自社の業務が効率化し、生産能力や独自性が高まることはすでに周知の事実だ。しかし、中小企業にとってはITツールひとつとっても導入コストを考えると不安が募ることだろう。そこで、ぜひ活用したいのが補助金・助成金制度。融資とは異なり、基本的に「返済不要」なため、企業にとってこれほどメリットがあるものはないといえる。本記事では4つの支援制度「IT導入補助金」「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」「小規模事業者持続化補助金」「キャリアアップ助成金」を紹介。自社に最も合うものを見つけて、有効に活用しよう。

「補助金」と「助成金」の違いとは?

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同じ文脈で語られがちだが、補助金と助成金は別ものだ。制度を利用する前に、まずは両者の共通点や相違点を明確にし、自社にとって最適なものがどちらか、しっかり見極めよう。

<補助金>

補助金とは、主に経済産業省や地方公共団体の管轄。年数回程度の公募制で、必要書類を提出しても内容が審査を通らなかった場合は補助金を受け取ることはできない。

<助成金>

助成金とは、主に厚生労働省の管轄。申請内容が受給要件を満たしていれば原則として誰もが受け取ることができる。

重要なのは、補助金と助成金の多くは「後払い」という形で交付されるという点。事業実施後、かかった費用を報告書などにまとめて提出し、承認が出てやっと支給される仕組みなのだ。「現状の財務状況が厳しいから、補助金や助成金を使って支出にあてる」ということはできないので、注意が必要だ。

DX推進に向けた補助金・助成金の種類

一つひとつの詳細は各公式サイトを確認のうえ、手続きを進めよう。
※2021年6月30日時点の情報をもとに作成

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1:IT導入補助金

2017年よりスタート。独立行政法人中小企業基盤整備機構より採択され、 経済産業省監督のもと一般社団法人サービスデザイン推進協議会が事務局業務を運用している。企業の生産性向上や業務効率化のために導入するオフィスの会計システム、医療機関の電子カルテの導入翻訳システムや接客ロボットなどのITツールに対し、補助金を支給。通常枠はA類型とB類型の2種類があり、それぞれ補助額が異なる。また、2021年度からは低感染リスク型ビジネス枠(特別枠:C・D類型)も用意されている。これを利用する際は非対面化ツール(テレワーク環境の整備など)の導入がマストだ(※D類型はクラウド対応も条件)。また、申請にはいずれも共同事業者として「IT導入支援事業者」の協力が必要なため、要確認を。

A類型 B類型 C類型 D類型
補助率 1/2以内 2/3以内
上限額・下限額 30万円~150万円未満 150万円~450万円以下 30万円~450万円以下 30万円~150万円以下

2:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金

中小企業庁及び独立行政法人中小企業基盤整備機構が2020年度から実施。新たな商品やサービス、生産プロセスの開発をはじめ、生産性を向上するための取り組みを支援する取り組みだ。試作品やサービスの開発、生産方法の改善に必要な設備などの補助を受けられる「一般型」のほか、海外事業の拡大・強化に活用する設備投資を補助する「グローバル型」、中小企業を支援する大企業向けの「ビジネスモデル構築型」の3種類。採択者一覧を参考にしてみると、神輿の組み換えイメージを共有できるようにシミュレーションシステムの開発に取り組んだ「有限会社中台製作所(千葉県)」など、やはりDX事業に力を入れている企業が多く見受けられる。

一般型
補助率 1/2~3/4(規模や申請する事業内容による)
上限額 1000万円

3:小規模事業者持続化補助金

小規模事業者が行う販路開拓や生産性向上の取組に要する経費の一部を支援する制度として2014年度からスタート。従業員数が20人(商業、サービス業は5人)以下の小規模事業者が対象。新たなビジネスやサービス、生産プロセスを導入し、販路開拓に励む事業者向け。導入事例としては、昭和45年創業の「藤枝はら喜鮨(静岡県)」は、シニア層の顧客拡大を狙って2階座敷席に畳用のテーブルと椅子を導入することに成功。法事に使用する客や女性客のランチ需要も大きく伸びたという。

補助率:2/3
上限額:50万円 ※100万円に引き上げられる場合もあり
※通年公募のため、各回の締め切りや補助対象などの詳細はこちらをご確認ください

4:キャリアアップ助成金

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2013年度からスタート。パートやアルバイトなど正社員ではないスタッフの能力を向上させる取り組みを実施するほか、処遇の改善などに励んだ事業者に支払われる。「賃金規定等改定コース」「健康診断制度コース」など、対象となるコースによって支給額は異なるが「正社員化コース」を活用して契約社員などを正社員化し、DX化の新規事業に従事させるケースも助成金の対象となる。

※要件によって支給額などが異なるため、詳細はこちらをご確認ください

補助金・助成金を利用するメリット

補助金や助成金は手続きがやや煩雑ではあるが、何より「返済不要」という点は最大のメリット。自己資金や借入金だけでDX化を進めるにはリスクが大きいが、返済義務がない制度を使うことでそれだけ負担が減るのだ。

しかし、メリットはそれだけではない。補助金や助成金のほとんどは、事業計画書を提出する必要がある。それらがトータルで判断され、すべての条件を満たした企業のみが制度を使えるのだ。つまり、支給を受けられたということは行政から自社の取り組みを認めてもらえたということと同義といえるだろう。金融機関や取引先からの信頼度が上がるだけでなく、この機会に事業計画を見直すことで、改めて自社の価値を認識できる可能性も秘めているのだ。

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アフターコロナを生き抜く上で、企業の変化は避けられない。今回紹介した支援制度を使って、ぜひ自社のDX化を実現させる一助にしてほしい。

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