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企業や自治体の事例で見えた「ワーケーションの大きなメリット」

コロナ禍で注目を集める働き方の1つに「ワーケーション」がある。ワーケーションとはどのようなものか、そのメリットや導入率といった基本情報から実際に導入している企業の事例や自治体のワーケーション事情までわかりやすく紹介する。

そもそもワーケーションとは?

女性がワーケーションしている様子

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ワーケーションとは「Work(仕事)」と「Vacation(休暇)」を組み合わせた造語で、観光地やリゾートホテルなどさまざまな場所で働きながら休暇をとる新しい働き方を指す。コロナ禍においてテレワークが浸透しつつある現在、自宅に限らず会社以外の場所で働くことはニューノーマルな働き方として注目を集めている。

2000年代にアメリカで始まったとされるワーケーションは企業・従業員双方にとって多くのメリットがある。まず企業側のメリットとして優秀な人材確保に欠かせない「柔軟な働き方」を実現できる点やテレワークを推進でき、BCP(事業継続計画)対策としても有用な点が挙げられる。従業員にとってのメリットは休暇が取得しやすくなることやリフレッシュできたり集中力が向上したりと生産性を高める効果が期待できる。

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ネットリサーチ事業を行う株式会社クロス・マーケティングが全国の就業者を対象に実施したワーケーションに関する調査によると、7割以上の就業者がワーケーションを認知しており認知度は高いものの、企業における導入率は約1割と低い割合に留まっている。(参照:ワーケーションに関する調査
このような状況の中、政府や各省庁は積極的にワーケーションを推進している。ワーケーションを推進する背景には、働き方改革をはじめとして、新型コロナウイルス感染拡大の影響で苦しむ観光業の救済や東京オリンピック開催に向けた首都圏の人口分散対策などがあり、こうした観点からもワーケーションの普及が望まれている。

2020年7月に菅義偉官房長官(当時)が「政府としてワーケーションの普及に取り組んでいきたい」と発言し、環境省や観光庁が連携して宿泊施設などでの環境整備を進めていくこととなった。

環境省は屋外で新型コロナウイルスの感染リスクが低いとされる国立・国定公園でのワーケーション推進に注力しており、Wi-Fiやワークスペースなどワーケーションを実施するための環境整備事業を進めている。その背景にはワーケーション向けに国立公園の利用を促進することで、訪日客が激減した地域経済を支える狙いがあるとみられる。

北海道でのワーケーションの様子

観光庁「新たな旅のスタイル」ホームページ

観光庁はワーケーションの普及によって働き方改革を推進や柔軟な働き方の実現、地域の活性化が目指せるとしてワーケーションを推進している。2020年10月には「ワーケーション体験in北海道」を実施し、ワーケーションを積極的に受け入れている北海道にて観光庁職員が実際にワーケーションを行い、その効果や課題について検証するという。

また、内閣府は沖縄県は日本の主要観光地であり、一年中過ごしやすい気候やアジアの各都市に近い点など魅力が多いことから特にワーケーションを推進しており、沖縄県内の既存施設をワーケーション向けの施設に改修する市町村や企業に補助金を交付する沖縄テレワーク推進事業費補助金を創設した。

有給休暇の取得課題に効果も…ワーケーションを導入している企業の事例

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マイクロソフトやユニリーバ・ジャパン、JTB、サイボウズなどワーケーションを導入している企業は徐々に増加している。では、実際にどのようにワーケーションを導入しているのか、具体的な事例をみていきたい。

日本航空株式会社(JAL)では有給休暇の取得率が低いという課題があり、2017年より有給休暇中のテレワークを認めるワーケーションを導入。ワーケーションによって「長期休暇を取ると休み明けの業務が不安」というような長期休暇に対する抵抗感や不安感を軽減させ、有給取得率の向上に成功した。

業務時間より休暇時間を増やす調整や勤怠管理システムによる進捗状況の共有など工夫を行っており、導入時には11名程度だった利用者数は2020年度には400名以上にのぼり、社内のワーケーション利用率は2割を超えたという。

株式会社野村総合研究所(NRI)も2017年からワーケーションに取り組み、1ヵ月間の中期滞在型ワーケーション、通称「三好キャンプ」を年3回実施している。15名ほどの社員が徳島県三好市の古民家で業務を行い週末は休暇を取るという内容で、社員のモチベーション維持やイノベーション創出を目指す。

実際にワーケーションを行った社員からは視野が広がったり社内にいるだけでは気付けなかったことに気付けたりしたという声があり好評だという。また同社がワーケーションで滞在中に三好市の人材教育に協力するなど、地域の課題解決に関わる取り組みも生まれている。

自治体の事例で見えたワーケーションのメリット

リモートワークしている様子

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ワーケーションのメリットを享受するのは企業と従業員だけではない。ワーケーションを受け入れる地域にとっては、コロナ禍で打撃を受けた地元観光業の救済や新しいビジネスの創出、地域の活性化などが期待できるという大きなメリットがある

そのため各自治体は独自の補助金を設けたりワーケーション向けの環境整備をしたり、特色あるプログラムを作成したりと日本各地で積極的にワーケーションの誘致を行っている。

三重県伊勢市では「クリエイターズ・ワーケーション促進事業」として、芸術家が滞在しながら創作活動を行い、伊勢の観光をアピールしてもらうという目的で、宿泊費を市が全額負担する芸術家向けのワーケーション事業を行い、応募が殺到。2020年11月から2021年3月まで実施され、演出家の宮本亞門さんや歌手の相川七瀬さんなど著名人を含む92組130人が参加し、コロナ禍で激減した観光客数の回復に期待が寄せられている。

北海道斜里町は2015年からワーケーション誘致事業を開始し、滞在費が無料のワーケーション施設を設立するなどして多くの企業から人材を迎え入れている。北海道ならではの豊かな自然を活かして新しい働き方を提案することで、首都圏からの関係人口を創出するねらいがある。斜里町でのワーケーションは世界自然遺産である知床の大自然の中で働けると好評だ。地域住民との交流も多く、斜里町と首都圏のIT企業が連携して、鳥獣対策のためのシステム開発など実証活動が行われている事例もある。

埼玉県や栃木県をはじめとして関東にはワーケーションできるキャンプ場が多く、テントやバーベキュー道具といったキャンプ用品だけではなく、モニターやバッテリーなどワーケーションに関するツールをレンタルすることもできる。

ワーケーション先進県として知られる和歌山県白浜町では、地域課題である人口流出を防ぐためには魅力的な働き口が必要であるとして、もともと行っていたIT企業の誘致に加えてワーケーションに取り組むことで白浜町のITコミュニティを強化しイノベーションの創出を目指しており、実際に白浜で実証実験を行ったりビジネスを展開したいというIT企業からの要望は多いという。このようにワーケーションによって地方のDXが進む可能性もある。

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ワーケーションの導入が始まってまだ日は浅く、一般的な普及にはまだまだハードルが高いのが現状だ。とりわけ企業においてはワーケーションを運用するためのインフラや事故などが起きた場合の労務管理の規定の整備が必要であり、業務の進捗や勤怠管理といった組織マネジメントに関する課題は多い。しかしワーケーションの潜在需要は多く、近い将来浸透していく新しい働き方であるから今後の普及に期待したい。

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