「新たなビジネスも?」人の能力を強化するテクノロジー「人間拡張」とは【用語解説】
こんにちは、デジタルトランスフォーメーション(DX)に関連する用語を解説しているディック君だよ。今日は「人間拡張」とは何を表すこ言葉なのかわかりやすく解説していくよ。
SF映画に出てくる超人のようになれたら――こんな妄想をしたことがある人は、多いはず。ものすごく重たい荷物を軽々と持てるようになったり、まるで別の世界にワープした気分が味わえたり……そんなことができるようになったら、確かに最高だよね。
なんだか夢物語のようだけど、実は映画のような世界が実現する日も、そう遠くはないといわれているんだ。そのカギを握っているのが、「人の能力を強化できる」として注目を集め始めている「人間拡張」なんだ。
それじゃあ、人間拡張とは何か一緒に見ていこう。
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「人間拡張」とは?
ヒューマン・オーグメンテーション(Human Augmentation)とも言い、人工知能やロボットなどの最新テクノロジーを使って人間の能力を強化・拡張させる技術のこと。
例えば、重い障害によって歩行が困難になってしまった人が体に装着することで人の動きや生活を支援する「ウェアラブルロボット」を標準装備して歩行が可能になったり、手を動かせなかった人が手を使えるようになったり……。介護の現場では、介助者がパワーアシストスーツを着用することで身体的な負担を軽くするといったことが可能になるといわれているんだ。もしもこうした技術がさらに発展していけば介護がスムーズになるだけでなく、配膳ロボットによる労働力不足の解消や人工知能(AI)による知的労働力の増加など、あらゆるビジネスの発展が期待できるかもしれないんだよ。
「人間拡張」によって時代はIoTからIoAへ
近年、モノとインターネットがつながることで暮らしが便利になる「IoT(Internet of Things)」のおかげで、実用的なデジタル社会を実現していく上でさまざまなことが進化しているけど、ソニーコンピュータサイエンス研究所副所長で東京大学大学院情報学環教授でもある暦本純一(れきもとじゅんいち)氏は、人とインターネットがつながることで、能力が強化される「IoA(Internet of Abilities)」へと変化するのではないかとも言っているんだ。
さらに、IoAが進むことで加速するであろう人間拡張の方向性は「身体」「存在」「感覚」「認知」の4つに分けられると提言しているよ。
外骨格・義手義足のように、身体機能を補綴(ほてつ=欠けた部分に装具などを使い、その働きを補うこと)するものなど。 |
IoTなどの活用により、遠隔地での感覚共有や共同作業を可能にすること。テレビ会議のように、場所の制約を越えてさまざまな行動を可能にするものなど。 |
メガネやコンタクトレンズ、スマートグラス、ARグラスなどを使って視覚を拡張するほか、補聴器や人工内耳で聴覚を拡張することで本来の能力を補完・向上させる。 |
AIと人間の協調により、何かを理解したり習得したりするプロセスそのものを拡張し、より良いパフォーマンスを達成できるようにするもの。学習アプリなどのことを指す。 |
人間拡張によって社会全体の構造も大きく変わるということだね。
「人間拡張」日本国内の事例3選
人間拡張が秘めている大きな可能性についてはわかったとしても「本当に映画やアニメに出てくるような世界が実現するの?」と、まだまだ半信半疑かもしれない。そこでここからは日本国内ですでに実用化されている人間拡張の技術を紹介するよ。
1)株式会社クボタ
農作業は、重い荷物を上げ下げしたり、立ったり座ったりと労働負荷が高い仕事。特に日本の農業は高齢化が深刻だから、重労働の軽減は重要課題の1つだったんだ。そこで、農業機械の国内トップメーカー「クボタ」は、「クボタウインチ型パワーアシストスーツ WIN-1」を考案。これを着用すると、肩や腰への負担が減り、約20kgの荷物でも楽に持ち上げられるようになるんだって。
2)超人スポーツ
人間拡張の考え方に基づき、超人同士がテクノロジーを自在に操って競い合う「超人スポーツ」も、注目を集めている。
例えば弾力性のある透明な球体を上半身にかぶり、激しくぶつかり合う「バブルジャンパー」という競技では、バネでできた「西洋竹馬」を足につけてジャンプ力を増強。相手に思い切りぶつかっていき、倒したほうが勝ちというルールだ。竹馬とボールによって、普段は体力差があるはずの大人と子どもが、互角に戦えるようになるんだよ。
スポーツといえば、障害の有無や男女差などの理由で、これまで「誰もが平等に楽しむ」ことは難しかった。でも人間拡張の技術によってスポーツの世界も大きく変わろうとしているんだね。
3)株式会社オリィ研究所
ロボット研究者の吉藤健太朗(よしふじけんたろう)氏が代表を務める「株式会社オリィ研究所」は、遠隔地から操作できる分身ロボット「OriHime」を考案。また、2015年には障害を持った人が視線で操作ができる「OriHime-Eye」などのインターフェース(=複数の装置を接続すること)を開発したよ。高齢や障害で寝たきりになった人でも、これらの分身ロボットを使って社会参加ができる未来を目指しているんだって。
ほかにも2021年には「分身ロボットカフェ DAWN ver.β」の常設店を東京・日本橋にオープンしているよ。障害者が遠隔地で操作し、分身ロボットがカフェで接客をするという実験にも挑戦しているんだ。
「人間拡張」によって進化する未来のビジネス
事例を知れば知るほど、技術の発展にワクワクしてくるよね。
でも一方で、脳や身体にデバイスを装着して外部からの刺激を与える人間拡張の技術に対し、倫理観を問う人々もいるんだ。
また、人間拡張は装置を装備できることが大前提。つまり、装置を「持てる人」と「持てない人」に二分されてしまい、格差が生まれる可能性だって考えられる。今後の技術発展は、こうした課題をいかに解決できるかという点も大事なポイントかもしれない。
とはいえ、国内の人間拡張市場は2025年に1兆円を突破すると予測されているし、日本には専門の研究機関も設立され、中には世界的に有名な研究者もいるんだ。
つまり、今後、人間拡張の最先端を日本が走る可能性は大いにあるということなんだ。ビジネスとして扱う企業は、まだまだ少ないけれど、だからこそ、早い段階から理解を深めて可能性について考えていくことが重要だともいえるね。
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日本は、用途から逆算してものを生み出すことが得意なものづくりの国だけど、研究を進めて生まれた技術から逆に用途が生まれることだってあるだろう。これからどんな新しい可能性が広がっていくか一緒に勉強しながら考えていこう!
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