「日本でD2Cビジネスが加速」D2Cブランドとして人気のアパレル企業の事例を紹介
新型コロナ禍で変化した生活様式の一つが買い物ではないだろうか。リアル店舗より、インターネット上での買い物・Eコマース(EC)を利用する場面が一気に増えてきている。その中でも、「D2C(ディーツーシー)」という、流通を通さず自前サイトからネット上で顧客に直販するビジネスに注目が集まっている。リアル店舗でモノが売れない時代に、新しい消費のトレンドである「D2C」ビジネスについてわかりやすく解説していこう。
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目次
そもそもD2Cとはどんな意味?
D2Cとは「Direct to Consumer(ダイレクト・ツー・コンシューマー)」の略で、自ら企画開発した商品を、仲卸業や小売店を通さずにネット上で消費者に直接販売するサービスを指している。中間業者を介さないため、高品質でありながらも価格を抑えた商品をつくることが可能だ。
D2Cの大きな特徴の 1つは、商品の売り切りではなく、SNSや自社サイトでファンが集まる仕掛けをつくり、顧客との長い付き合いを目指していること。
例えば、Instagram(インスタグラム)にブランドのアカウントからライブ配信を行い、ブランドマネージャーや開発者などが積極的に情報を発信。顧客側は感想や商品への質問をコメントで投げかけ、その場で答えてもらえる。こうした、ネット上で購入までのプロセスを楽しめる「体験」を提供しているブランドが多い。
また、自社サイトでは作り手のこだわりを伝えるストーリーを載せたり、ブランドの世界観を全面的に押し出すコンテンツを作ったりするなど、自社ブランドを好きになってもらえるような工夫を凝らしている。
顧客とのコミュニケーションを重視しているので、オンラインで商品を注文するときのスムーズさや、商品の配送時間、商品が届いた後のアフターケアも大切にしている。
「商品企画、マーケティングも」D2Cなら全てデジタルで完結する
D2Cのもう一つの特徴として、商品企画からマーケティング、広告、商品の購入まで全てがデジタルで完結してしまう点がある。従来の小売販売や通販と比べて、SNSやデジタルマーケティングを駆使し、顧客の声やデータをダイレクトに収集できる。そのため、顧客ニーズを商品開発に反映させる強みが生まれるのだ。顧客側にとってみれば、良質な商品を購入できるだけなく、「自分にあったサービス」を受けとることができるのだ。
今は、いいものを作っただけでは売れない時代。こうしたデジタル技術を駆使して消費者との信頼関係を築くことが、差別化のポイントとなっている。
D2C流行の裏に、
ミレニアル世代の「コト消費」「エシカル消費」
D2Cの流行には、消費の主役を担う「ミレニアル世代」の価値観が大きく影響している。ミレニアル世代とは1980〜2000年始めに生まれた世代で、世界の人口2割を占める。幼いころからインターネットに触れてきたデジタルネイティブなこの世代は、買い物もパソコンやスマホからネットで買うのは当たり前。リアル店舗で買う場合も、デジタルを駆使して情報収集してから購入するか決めるという行動をとっている。
ミレニアル世代は所有を目的としたモノ消費への意欲は低い。しかし、自分にとってより良い顧客体験が受けられる「コト消費」や、地球環境にやさしく社会貢献につながる「エシカル消費」にはお金を惜しまない傾向が強い。消費に対して「機能より体験」、「ストーリー性」や「共感」を求めているのだ。そして、2020年のコロナ禍。社会全体の消費行動でも、物質的な価値から情緒的な価値を重視するようになってきている。
実際、アメリカで成功しているD2Cブランド、眼鏡のワービー・パーカーやスーツケースのアウェーなどは、環境対策などの取り組みについてSNSで発信し、消費者の支持を集めている。
日本のD2Cブランド「FABRIC TOKYO」の事例
最後に、D2Cビジネスで活躍する国内企業の事例を紹介したい。オーダーメードスーツをD2Cブランドで手がけるFABRIC TOKYO(ファブリックトウキョウ)。リアル店舗も持つが、レジやスーツはない。店は「サービスを体感する場所」と定義しており、体の採寸や、生地感、色の好みのデータを入力するだけ。後で自分の好きなタイミングで、スマホから簡単にオーダーメードスーツを購入できるシステムをとっている。
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D2Cの台頭は、小売りとECを融合させた新しいビジネスモデルを生み出す原動力となりそうだ。価格は百貨店などのオーダー商品の3分の1程度。仲卸や流通を通さず、自社で製品を作り、自社サイトで売ることで価格を下げることを実現。「値段が高く気後れする」といったテーラー販売のイメージを覆し、その気軽さと品質・デザインのよさからリピーターを増やし、売上げ増大も実現させた。百貨店の丸井グループと資本業務提携も結び、累計調達額は20億円を超えるまでに成長している。両者は今後、リアル店舗を「経験の場」と位置づけるデジタル・ネイティブ・ストアに進化させようとしている。小売店舗は「モノを売らない店」と変わっていくビジネスモデルの大転換となるかもしれない。
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