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「台湾13位、韓国10位、日本は…」世界に遅れをとる日本のDX事情

世界に比べて、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進が遅れているといわれる日本。新型コロナウイルスの影響で、企業だけでなく社会全体でのデジタルシフトが加速している海外と比べると、日本は「デジタル競争の敗者になる」と危惧する声すらある。世界のDX事例やランキングを比較して、日本の現状を見定めよう。

世界デジタル競争力ランキングでは、日本は23位 アジア勢でも後塵

日本は63カ国中23位。日本のデジタルスイス・ローザンヌに拠点を置くビジネススクールIMD(国際経営開発研究所)が発表した「世界デジタル競争力ランキング2019」の順位だ。1位は米国で、続いてシンガポール、スウェーデン、デンマーク、スイスが顔を並べる。トップ10内にはアジア勢では8位に香港、10位に韓国。台湾は前年より順位を3つもあげて13位に入っている。日本はアジア勢の中でも大きく差をつけられてしまっていることが、明らかになっている。

今やデジタルテクノロジーでビジネスを変革できるか否かが企業の競争力に大きく関わる。デジタル・トランスフォーメーション(以下、DX)によるパラダイムシフトについていけず、日本の国力低下にもつながりかねない。

<世界デジタル競争力ランキング2019>

1位:アメリカ 8位:香港
2位:シンガポール 9位:ノルウェー
3位:スウェーデン 10位:韓国
4位:デンマーク 11位:カナダ
5位:スイス 12位:アラブ首長国連邦
6位:オランダ 13位:台湾
7位:フィンランド 14位:オーストラリア


23位:日本

 

コロナ対策の迷走で露呈、日本政府も「日本のデジタル化の遅れに危機感」

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DXの「旗振り役」となるべき国はどうなのだろうか。まだ記憶に新しい新型コロナ対策での「あの目玉政策」の苦さが思い浮かぶ。国民や企業に対して現金を支給する制度を打ち出したが、オンライン手続きがスムーズに機能せず混乱を招いてしまった。

日本政府は7月、経済財政運営の基本方針(骨太方針2020)を発表した。方針内では、「デジタル化の遅れ」という表現が何度も登場する。行政手続のオンライン化などデジタル・ガバメントの構築を「一丁目一番地」の最優先政策課題として明記。民間分野も含めてデジタル化への集中投資と環境整備を掲げ、今後1年間で社会全体のデジタル化に集中的に取り組むと打ち出した。具体的には、テレワークの定着や教育・医療のオンライン化などのメニューが並ぶが、以前から叫ばれていたことといわれれば否めない。翻って、世界はどこが違うのだろうか。

【DX事例】コロナの混乱を回避、台湾のマスクマップ

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新型コロナの影響で日本がマスク不足に踊らされていた最中、近くの身近な国・台湾は違った。デジタルを駆使して、マスク購入をめぐる市民の不満や混乱をいち早く沈めている。日本でも話題になった「マスクマップ」だ。

台湾政府はマスクの品薄を受け、政府が買い上げて、1人が購入できる枚数を週3枚と制限。これに伴い、政府のIT大臣オードリー・タン氏は、全6000箇所ある薬局のマスク在庫数のデータ公開した。すると、台湾のエンジニア達がこのデータを活用し、わずか3日で「リアルタイムマスクマップ」を作り上げてしまったのだ。

マスクマップでは、各薬局のマスク在庫状況が一目でわかる上、在庫数やエリアで絞り込むことも可能。販売方法や販売時間など詳しい情報も入手できたことで、マスク購入をめぐる混雑や、市民の不安は減ったという。タン氏の手腕もさながら、行政と民間が協力しあって最善の方法を見つけ出す「集合知」をデジタルによって即座に成し得ているところに注目したい。

【DX事例】政府がデジタル戦略を打ち出したデンマーク

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国家全体でDXを推進しているデンマーク。1968年から国民にCPRナンバーという日本のマイナンバーに相当するものを付与。戸籍や住所、学歴、納税の履歴のほか、通院・入院歴、不動産など生まれてから今までのあらゆるデータをデジタル化し、一元管理している。これとデジタル署名による個人認証システムを利用し、各種手続きをパソコン1つで済ませることができるのだ。こうしたデジタル・ガバメント(電子政府)の取り組みによって節約できたコストは数百億円に達するという。

また、デジタル化は政府だけでなく、金融、医療、交通システムなど広い分野で進んでいる。例えば、医療では出生時の体重、通院・入院歴、、手術情報など、個人の生体情報を全てデジタルデータで一元管理し、蓄積。この医療ビックデータは公衆衛生や疫学の研究や、オーダーメード医療の研究に生かされている。政府は2018年に「デジタル化のフロントランナーになる」との国家戦略を打ち出し、2025年までに約170億円の予算を注ぎ込もうとしている。デンマークは企業だけでなく、市民や社会全体でのデジタライゼーションだ。

なぜ日本ではDXが進まない?

日本はなぜDXが遅れているのか。経済産業省が2018年にまとめたDXリポート「2025年の崖」では、「レガシーシステム」がその理由の一つに挙げられている。多額の投資で築いた旧来のシステムを刷新することができず、そのシステムが「老朽化・肥大化・複雑化・ブラックスボック化」していると指摘。そうした課題を抱えるシステムの維持にコストや人的リソースが奪われ、新たなIT投資ができず、ゲームチェンジした市場で取り残されてしまうと警鐘を鳴らす。

そこで、経産省は2021〜2025年を「DXファースト期間」として、レガシーシステムの刷新を提案し、企業DX推進のサポートにも乗り出している。民間企業も国においても、世界と比べて「デジタル変革への危機意識」の差異が、DX推進の遅れにつながっているのは明らかだ。両者の危機意識の共有がDXの推進には欠かせない。

DX.WITH編集部