「くら寿司も導入へ」人と接触しないコンタクトレスエコノミーとは?
いまだ収束の兆しを見せない新型コロナウイルス。外出自粛などの影響を受け、外食業界や観光業界のように接触機会の多い業種は大きなダメージを受けている中、さまざまな非接触サービスが導入され始めている。
額にかざすだけで検温できる体温計や、PayPayなどのキャッシュレス決済などは既に浸透してきたが、コンタクトレス・エコノミー(非接触経済)という新たな市場も生まれるほど、非接触サービスの開発が活発になってきた。どのようなサービスが既に開発されているのか最新事例を紹介しよう。
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目次
出典:mapo- stock.adobe.com
ドアオープナーにタッチパネル…身近なものが次々非接触化
コロナ禍によって一気に浸透した非接触サービス。身近なものが次々に非接触化しており、生活や仕事のさまざまな場面で利用されるようになってきた。
多くのオフィスビルでは、サーマルゲート(非接触温度センサー)が設置され、自動で検温やマスク着用の確認が行われるようになっている。不特定多数の人が触れるドアノブやつり革に触らないで済むようにドアオープナーの利用も進んでいる。
オフィスでは、受付スタッフの姿が消え、案内ロボットやタッチレスパネルが使用された非接触受付システムが登場。エレベーターも非接触化が進み、スマートフォンアプリで呼び出して階数を選択できるなど、コロナ禍における消費者心理に寄り添うサービスが増加している。
その他、クライアントとの商談には、デジタル名刺など営業に特化した機能を備えた非接触商談システムも注目を集めている。
カードのないクレジットカード?非接触サービスに積極的な金融業界の事例
非接触化に向けて金融業界も活発な動きをみせている。QRコードなどを利用したキャッシュレス決済の利用者数や送金額は、いずれもコロナ禍前と比較して右肩上がりに上昇している。(出典:一般社団法人キャッシュレス推進協議会「コード決済利用動向調査」)
ここで非接触サービスを積極的に活用している金融系企業の3つの事例をピックアップしてみよう。
情報通信事業などを展開する沖電気工業(OKI)は群馬銀行や百五銀行と共同で非接触型ATMの実証実験を開始。特殊なタッチセンサーを使用し画面に触れることなくATMを利用できるもので、商品化へ向けて取り組んでいる。
みずほ銀行は非接触型店舗への切り替えを始め、銀行員を配置した窓口の代わりにタブレット端末を設置し、はんこレスで口座開設など各種手続きが行えるように。その他大手銀行も窓口を減らしたり予約制にしたりと非接触型へと軸足を広げている。
大手クレジットカード会社のクレディセゾンはプラスチック製のカードを使用しないカードレス決済を開始。スマートフォン上のデジタルカードを表示して決済できる仕組みを開発した。また、VISAは端末にカードをタッチするだけで決済できるタッチ決済の普及に注力。JCBはスマホアプリ決済システムの開発を進めるなど、各社それぞれ非接触化に力を入れ始めた。
「くら寿司」や「ケンタッキー」も非接触に積極的
客足復帰を狙う外食・観光業界の事例
コロナ禍で大きなダメージを受けた外食・観光業界でも非接触化で安全性を訴え客足を呼び戻す動きが見られる。
外食業界では注文や決済を客のスマートフォンで行うモバイルオーダーシステムやAI搭載の自律歩行型配膳ロボを導入する店舗が増えている。
大手回転寿司チェーンのくら寿司では入店から会計まで店員を介さない完全非接触の仕組みを持つ店舗が登場し、全店での導入を目指している。日本ケンタッキー・フライド・チキンではネット注文した商品を店内に設置されたロッカーから受け取る非接触型テイクアウトを開始し話題を集めた。
苦戦を強いられている観光業界も非接触サービスの導入が進んでいる。宿泊施設では、宿泊者のスマートフォンを利用してチェックインする「スマートチェックイン」や接客スタッフが常駐せずセルフチェックインシステムを備えた無人の「非接触ホテル」なども登場した。
非接触型観光コンテンツの需要は大きく、京都府福知山市では官民連携で「非接触自動スタンプラリー」を実施。観光庁が取り組む「あたらしいツーリズム」の一環で行われ、IoT対応のカードを持ち歩くだけで観光客が訪れた場所が自動で記録される仕組みだ。イオンモールでも千葉県内の観光スポットやイオンモールにあるQRコードを読み込むと参加できるラリーイベントを開催。群馬県みどり市もスマートフォンと二次元バーコドを使用した非接触スタンプラリーが行われている。
兵庫県の生田神社は正月の初詣向けにスマートフォンを利用したおみくじサービスを開始。京都の八坂神社や長野県の真田神社では、お詣りの際に鳴らす鈴をセンサー式に変更。手をかざすと鈴の音が鳴る装置が設置され、感染予防に工夫を凝らしている。
「JR東日本」「ANA」の取り組み事例も、非接触化は業界問わず
その他、交通業界、百貨店などの取り組みも見ていこう。まず交通業界では、JR東日本が乗客の案内に対応する非接触型ディスプレイを試行設置。遠隔で駅係員が案内する実施実験も行われている。
全日本空輸(ANA)も手荷物預け機に非接触センサーを設置する実証実験を開始した。また、バスやタクシー、トラック業界では、点呼にIT点呼機器を使用したり、体調確認やアルコール検知を非接触で行ったりして社員間の感染予防に努めている。
百貨店もまた接触機会の多い業種だが、そごうや西武の紳士服売り場では非接触AI採寸システムが導入され、横浜高島屋のランジェリー売り場には客が自分でサイズ計測から商品検索まで行える専用の機器が設置された。また、靴メーカーのアシックス商事や化粧品メーカーのコーセーは入店から購入まで完全非接触の無人店舗を展開している。
この他にも全国で調剤薬局を展開する日本調剤が処方薬を宅配ロッカーで受け渡す実証実験を開始。不動産業界でも、物件の内見をオンラインで行うなど、さまざまな業界で非接触化が進んでいる。
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2020年11月に発表されたデロイトトーマツグループのレポート「非接触経済の台頭~コンタクトレス・エコノミーがもたらすCOVID-19危機後の世界」によると、アジア太平洋地域(APAC)において非接触市場は2025年までに従来の2倍超の市場規模に達する見通しで、日本は6ヵ国の中で成長見込み率が最も低く、非接触経済の成長が鈍い懸念があるという。
今後もしコロナ禍が収束したとしても非接触サービスの需要は継続するであろうことから、日本における非接触市場のさらなる発展が求められている。
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