経産省が発表した「2021年DX銘柄」一覧、東証と共同で選定する目的とは【用語解説】
こんにちは、DXやデジタルに関する用語を解説しているディックです。
今日は「DX銘柄」について詳しく解説していくよ。ここ数年で新聞やニュース記事でも取り上げられるようになってきたから、耳にしたことがあるかもしれないね。
そもそもDX銘柄とは?
DX銘柄は正式名称を「デジタルトランスフォーメーション(DX)銘柄」と言うよ。
経済産業省と東京証券取引所が、東京証券取引所(一部、二部、ジャスダック、マザーズ)に上場している企業の中から、企業価値の向上につながるようなDXを推進して結果を出している企業を選定しているんだ。いわば、DX先進企業の証みたいなものだね。
もともとは2015年から経産省が積極的なIT活用に取り組む企業を「攻めのIT経営銘柄」として選定していたんだ。だけど、近年の急速なデジタル化でDXの重要性が高まってきたことから、2020年からDXに焦点を当て「DX銘柄」という名称に変えたんだよ。DX銘柄の中でも、特にデジタル時代を先導する企業は「DXグランプリ」に選ばれるんだ。あとは、DX銘柄に選定されていない企業の中から、総合的な評価が高くて注目したい取り組みを推進している企業は「DX注目企業」に選定されているよ。
2021年に選定されたDX銘柄一覧は以下の通り。
<DXグランプリ> 企業名 |
証券コード |
株式会社日立製作所(電気機器) | 6501 |
SREホールディングス株式会社(不動産業) | 2980 |
<DX銘柄 ※DXグランプリを除く> 企業名 |
証券コード |
清水建設株式会社(建設業) | 1803 |
アサヒグループホールディングス株式会社(食料品) | 2502 |
旭化成株式会社(化学) | 3407 |
中外製薬株式会社(医薬品) | 4519 |
出光興産株式会社(石油・石炭製品) | 5019 |
株式会社ブリヂストン(ゴム製品) | 5108 |
JFEホールディングス株式会社(鉄鋼) | 5411 |
株式会社小松製作所(機械) | 6301 |
日本電気株式会社(電気機器) | 6701 |
ヤマハ発動機株式会社(輸送用機器) | 7272 |
株式会社トプコン(精密機器) | 7732 |
凸版印刷株式会社(その他製品) | 7911 |
東日本旅客鉄道株式会社(陸運業) | 9020 |
SGホールディングス株式会社(陸運業) | 9143 |
日本郵船株式会社(海運業) | 9101 |
日本航空株式会社(空運業) | 9201 |
ソフトバンク株式会社(情報・通信業) | 9434 |
トラスコ中山株式会社(卸売業) | 9830 |
株式会社セブン&アイ・ホールディングス(小売業) | 3382 |
日本瓦斯株式会社(小売業) | 8174 |
株式会社りそなホールディングス(銀行業) | 8308 |
東海東京フィナンシャル・ホールディングス株式会社(証券、商品先物取引業) | 8616 |
MS&ADインシュランスグループホールディングス株式会社(保険業) | 8725 |
東京センチュリー株式会社(その他金融業) | 8439 |
株式会社GA technologies(不動産業) | 3491 |
株式会社ベネッセホールディングス(サービス業) | 9783 |
<DX注目企業> 企業名 DX銘柄には選定されていないが、総合的な評価が高く 注目したい取り組みを推進している企業を選出 |
証券コード |
日清食品ホールディングス株式会社(食料品) | 2897 |
株式会社ワコールホールディングス(繊維製品) | 3591 |
ユニ・チャーム株式会社(化学) | 8113 |
大日本住友製薬株式会社(医薬品) | 4506 |
AGC株式会社(ガラス・土石製品) | 5201 |
三菱重工業株式会社(機械) | 7011 |
富士通株式会社(電気機器) | 6702 |
大阪瓦斯株式会社(電気・ガス業) | 9532 |
ANAホールディングス株式会社(空運業 | 9202 |
日本電信電話株式会社(情報・通信業) | 9432 |
三井物産株式会社(卸売業) | 8031 |
住友商事株式会社(卸売業) | 8053 |
Hamee株式会社(小売業) | 3134 |
株式会社三井住友フィナンシャルグループ(銀行業) | 8316 |
株式会社大和証券グループ本社(証券、商品先物取引業) | 8601 |
SBIインシュアランスグループ株式会社(保険業) | 7326 |
SOMPOホールディングス株式会社(保険業) | 8630 |
リコーリース株式会社(その他金融業) | 8566 |
三菱地所株式会社(不動産業) | 8802 |
ユナイテッド株式会社(サービス業) | 2497 |
なんのためにDX銘柄を選ぶの?
中長期的な企業価値が上がることを重視している投資家に向けて情報を紹介するためだけじゃないんだよ。DXで実績を上げている企業のモデルを広く発信することで、経営者に対してデジタル技術活用の意識改革を促す狙いがあるんだ。
この背景には、経産省の「2025年の崖」への懸念があるからなんだ。2025年の崖というのは、老朽化やブラックボックス化した既存システムを使い続けた場合、データ活用できずに市場の変化に柔軟に対応できずに企業としての競争力が落ちてしまうことを懸念する言葉なんだ。IT人材の大量引退や既存システムのサポート終了のピークを迎える2025年以降には約12兆円の損失が生じてしまいかねないと危惧しているんだよ。デジタル技術によって新しいビジネスモデルやサービスが生まれて、従来の市場や産業構造を覆して壊してしまうデジタルディスラプション(デジタルテクノロジーによる破壊的創造・破壊的イノベーション)の事例も出てきているしね。
だから「DX銘柄」という投資家を含むステークホルダーへの紹介を通して評価を受ける枠組みをつくることで、企業のDXを促進しようと考えているんだ。情報開示に前向きで、デジタル活用に積極的な企業には、株式市場は当然注目するよね。実際、DX銘柄の受賞企業が発表されると、翌営業日に株価を伸ばした企業が目立ったんだよ。
DX銘柄はどうやって選ばれるの?
東証に上場する約3700社を対象にアンケート調査を行い、エントリーを募集するよ。そこから有識者らでつくる評価委員会が業種ごとにDX銘柄を選定するんだ。
選定基準の前に、経産省がDXをどんな風に定義しているか知っておこう。ちょっと長いんだけど下のカギかっこを読んでね。
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と経産省は定義しているよ。この考えをもとに、経産省は「DX銘柄」選定基準の枠組みをつくっているんだ。
つまりは、IT化の技術を省力化や効率化だけじゃなくて、社会に新しい価値を提供するビジネスを生み出すような変革ができているか、ということが大事だと言いたいんだね。
もっと具体的に選定の仕方を教えて
アンケート調査から選定審査は始まるよ。DX銘柄2020では、まず下記の6つの評価軸と3年平均の自己資本比率(ROE)についてスコアリングして、候補企業を選定するんだ。
<6つの評価軸>
・ビジョン・ビジネスモデル |
・戦略 |
・組織・制度等 |
・デジタル技術の活用・情報システム |
・成果と重要な成果指標の共有 |
・ガバナンス |
次にアンケート調査の記述回答部分である、
・経営ビジョンにおけるDXの位置づけ |
・DXの取り組み(ビジネス・業務の変革) |
・DX推進に関する位置づけ |
について評価委員が評価。そして評価委員会による最終審査によって選定されるよ。経営の関与が重視される項目を重視していて、経営のあり方まで踏み込んだ評価の枠組みになっているだ。つまり、DX銘柄は経営者のDXに対する意識を重視しているともいえるね。
2020年のDX銘柄はどんな企業が選ばれたの?
2020年は、過去最多の535社がエントリーして、35社がDX銘柄2020に選定されたよ。さらに、DX銘柄2020の中から、デジタル時代を先導する企業として、建設機械製造の「小松製作所」(コマツ)と、機械工具の卸売「トラスコ中山」の2社がグランプリを受賞したんだ。
DX銘柄2020について、前身だった「攻めのIT経営銘柄」時代の2015年から通してみると、毎年選定され続けている企業が5社もあるね。一方で、初めて選定された企業は13社もあるよ。選定された企業を(下の図表を参照)見ると、いろんな業界の企業が選定されているよね。それだけITや情報通信業に限らない応募があったということだから、どの業界でもDXに取り組んでいることがわかるね。
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経産省の分析レポートによると、DX銘柄に選定された企業のROEは高い傾向にあることがわかったんだ。DXに積極的に取り組むことは、ROEの向上にもつながっているっていうことだね。ROEとは、企業が自己資本(株主資本)を使ってどれだけ効率よく利益を稼いだかを示している数値だから、株式市場ではROEの数値を重視している投資家が増えているんだよ。