国立がん研究センター東病院とVIE STYLE、ウェアラブル外耳道脳波計を用いた内視鏡処置における鎮静深度推定法に関する研究成果を発表
VIE STYLE株式会社
今後患者及び医療関係者の安全と負担軽減に向けて開発・臨床研究をさらに加速
次世代型ウェアラブル・イヤホン型脳波計の開発とニューロテクノロジーの社会実装を行うVIE STYLE株式会社(代表取締役:今村 泰彦、本社所在地:神奈川県鎌倉市、以下VIE STYLE(ヴィー スタイル))は、国立研究開発法人国立がん研究センター東病院と共同で行った内視鏡処置中の患者の鎮静深度推定に関する研究成果を日本臨床麻酔学会第42回大会にて発表したことをお知らせします。
処置下における患者の鎮静状態を手軽かつ高精度にモニタリングできる可能性が示され、今後患者及び医療関係者の安全と負担軽減に向けて開発・臨床研究をさらに加速させていきます。
発表(書誌)情報:
渡邊崇・茨木拓也・砂川弘憲・岡田大吾・橋本学・矢野友規 (2022).
ウェアラブル外耳道脳波計を用いた内視鏡処置における鎮静深度推定法の検討. 日本臨床麻酔学会誌 42(6).
1. 研究の背景
内視鏡処置における鎮静は、患者の負担と呼吸抑制などのリスクをバランスさせた「中等度鎮静」が望ましいとされています。消化管内視鏡の偶発症発生割合は0.057%と比較的安全に実施されていますが、発生した偶発症の35%は鎮静薬投与に関連しており、その中には死亡例も含まれます。そのため、内視鏡における鎮静深度のモニタリングとコントロールは極めて重要です。
全身麻酔では脳波による鎮静深度のモニタリングをおこなっている一方で、内視鏡領域では鎮静深度のモニタリング機器は一般的には使用されていません。担当医がバイタルサインや体動等から経験則により鎮静薬を調節しているのが現状であり、簡易かつ客観的指標による鎮静深度評価が望まれています。そこでVIE STYLEが開発する簡易なイヤホン型の脳波計により、鎮静深度をモニタリングが可能かどうかを探索的に検証しました。
2. 方法の概要
本研究では、イヤホン型の外耳道電極を用いた簡易な脳波計を用いて10名の内視鏡処置(上部消化管の早期癌に対し内視鏡下で粘膜に局注を行い、病変を切除する)中の患者の脳波を記録しながら,鎮静深度指標 (RASS:Richmond Agitation-Sedation Scale※)および使用薬剤の情報をリアルタイムで同時計測するシステムを開発し、それを利用しました。既存の鎮静深度指標としてBISモニターデータも記録しました。
記録された外耳道電極のデータをもとに、鎮静深度(RASS値)を予測する機械学習モデルを学習させました。
※RASS(Richmond Agitation-Sedation Scale):開眼状況、 呼びかけと物理刺激に対する患者の反応から患者の鎮静深度を0(意識清明)~-5(昏睡)の6段階で評価する尺度
3. 結果の概要
結果、記録した脳波から中等度鎮静以上の覚醒状態にあるか、深い鎮静状態にあるかを機械学習モデルで81.68%の精度で分類可能でした。また、2値分類の予測尤度と実際のRASSとの相関も0.67となりBISとの相関0.44よりも高くなりました((t 9)=4.53,p=0.001)。安全な内視鏡処置を遂行するにあたり、こうした簡易デバイスを用いて鎮静深度を定量的かつ簡便に評価しコントロールすることで、術者及び患者の満足度を上げることが期待できます。
イヤホン型脳波計「VIE ZONE」
VIE STYLEが開発するイヤホン型脳波計「VIE ZONE(ヴィー ゾーン)」は、イヤーチップが電極となり、耳(外耳道)から脳波を取得できるウェアラブルデバイスです。イヤホン型脳波計(In-Ear EEG)は従来課題だった日常生活における脳波計測デバイスの煩雑性(装着するのが面倒、見た目が悪い等)の問題がなく、いつものようにイヤホンをつければ脳波を測れるという、近年注目を集めている技術です。
今回は内視鏡の処置のような、臨床場面でも気軽に利用できるベッドサイドモニターとしてのニーズに合致するため共同で研究をする運びとなっています。
VIE STYLE株式会社
VIE STYLEは、「味わい深い人生を~Feel the life~」をミッションに掲げ、ニューロテクノロジーとエンターテインメントで、人々の感性をアップデートし、ウェルビーイングに貢献することを目指しています。世界の人々が感性豊かな人生をおくることをサポートするプロダクトを創造し、人々をZONE(ゾーン)状態に導くサービスの開発を行うとともに、 脳神経に関わる未来の医療ICT・デジタルセラピューティクス(DTx)の発展にも寄与していきます。