「経済安全保障重要技術育成プログラム」で先進的サイバー防御機能・分析能力強化に着手
NEDO
自由、公正かつ安全なサイバー空間の確保を目指す
NEDOは経済安全保障を強化・推進する観点から支援対象とすべき先端的な重要技術の研究開発を進める「経済安全保障重要技術育成プログラム(通称“K Program”)」(以下、本プログラム)の一環で「先進的サイバー防御機能・分析能力強化」(以下、本事業)の研究開発に着手します。
近年、インターネットに代表されるサイバー空間においては、多様なサービスが展開される一方、従来のサイバー攻撃に加え、人工知能(AI)を活用した攻撃に代表される新たなサイバー攻撃のリスクが生じています。また、量子計算機の広がりに伴う既存暗号の危殆(きたい)化によりデータが漏えいするリスクも顕在化しています。
本事業では、サイバー空間の情報を収集・調査する状況把握力、サイバー攻撃から機器やシステムを守る防御力の向上、ならびにそれら能力と技術の評価技術および評価環境の開発・展開を目指します。併せて、重要インフラの高い利便性やセキュリティを確保するため、量子情報通信技術を開発します。
1.経済安全保障重要技術育成プログラムについて
世界的に、科学技術・イノベーションが国家間の覇権争いの中核となっている中、日本が技術的優位性を高め、不可欠性を確保するためには、研究基盤を強化することはもちろんのこと、市場経済のメカニズムのみに委ねるのではなく、国が強力に重要技術の研究開発を進め、育成していく必要があります。
そこで、経済安全保障を強化・推進するため、内閣府や経済産業省、その他の関係府省が連携し、先端的な重要技術の研究開発から技術実証までを迅速かつ柔軟に推進するため、本プログラム※1が創設されました。
本プログラムでは、NEDOに造成された基金※2により、国が定める研究開発ビジョンや研究開発構想※3に基づき、科学技術の多義性を踏まえ、民生利用のみならず公的利用につながる研究開発とその成果の活用を推進します。
2.事業の概要
本プログラムの支援対象のうち、「サイバー空間※4」領域の要素技術の一つに「先進的サイバー防御機能・分析能力の強化」が挙げられています。
サイバー空間の「公共空間化」が進展し、サイバー空間において提供される多様なサービスが複雑化するに伴い、サイバー空間内やサイバー空間とフィジカル空間※5の垣根を超えた主体間の「相互連関・連鎖性」が一層深化しています。また、近年では、AIを活用した攻撃に代表される新たなサイバー攻撃のリスクが生じています。例えば、AIが不正メール検知ツールの応答を学習することで検知機能を回避することが可能なメール文面を生成し、 こうしたメールによる攻撃手法が報告されているほか、アンチウイルスソフトの検知結果を機械学習し、検出を回避するマルウエア※6の生成手法に関する研究が報告されています。さらに、量子計算機の活用の広がりに伴う既存暗号の危殆化※7によりデータが漏えいするリスクが顕在化しています。こうした状況にあって、「自由、公正かつ安全なサイバー空間」を確保するためには、これらをとりまく不確実性の変容・増大によって生じるリスクを適切に把握した上で対応していくことが必要です。
先進的なサイバー防御機能や分析能力を強化していくにあたっては、「サイバー空間の情報を収集・調査する状況把握力」、「サイバー攻撃から機器やシステムを守る防御力」の視座に立って、能力の向上に努めることが重要です。
このような背景の下、NEDOは「先進的サイバー防御機能・分析能力強化」として、(1)サイバー空間の情報を収集・調査する状況把握力の向上、(2)サイバー攻撃から機器やシステムを守る防御力の向上、(3)共通基盤の整備、および(4)セキュアな量子情報通信技術の開発のテーマを新たに採択しました。
これらの研究開発を進めることにより、サイバー空間の情報を収集・調査する状況把握力、サイバー攻撃から機器やシステムを守る防御力の向上、ならびにそれら能力・技術の評価技術と評価環境の開発・展開を目指します。
3.実施内容・採択テーマ
事業名:経済安全保障重要技術育成プログラム/先進的サイバー防御機能・分析能力の強化
採択テーマ:サイバー空間の情報を収集・調査する状況把握力の向上(研究開発項目(1))
サイバー攻撃から機器やシステムを守る防御力の向上(研究開発項目(2))
共通基盤の整備(研究開発項目(3))
予算:290億円以下(研究開発項目(1)~(3)の合計)
期間:2024年7月~2029年6月(予定)
実施予定先:一般社団法人サイバーリサーチコンソーシアム
事業テーマの詳細は、以下の事業概要資料をご覧ください。
(別紙1)事業概要資料
事業名:経済安全保障重要技術育成プログラム/先進的サイバー防御機能・分析能力の強化
採択テーマ:セキュアな量子情報通信技術の開発(研究開発項目(4))
予算:30億円以下
期間:2024年7月~2027年6月(予定)
実施予定先:株式会社日立製作所
事業テーマの詳細は、以下の事業概要資料をご覧ください。
(別紙2)事業概要資料
※上記「別紙1」および「別紙2」については、いずれも以下のURLよりご確認ください。
https://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_101762.html
【注釈】
※1 本プログラム
事 業 名:経済安全保障重要技術育成プログラム
事業期間:2022年度~2031年度
事業概要:経済安全保障重要技術育成プログラム https://www.nedo.go.jp/activities/k-program.html
※2 NEDOに造成された基金
本基金は、経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律(令和4年法律第43号)第63条第1項における「特定重要技術の研究開発の促進及びその成果の適切な活用を目的するもの」として指定基金として指定されています。
※3 国が定める研究開発ビジョンや研究開発構想
「研究開発ビジョン」とは、経済安全保障推進会議および統合イノベーション戦略推進会議で取りまとめられる、支援対象とする重要技術や重要技術となり得る要素技術などを示したものです。「研究開発構想」とは、研究開発ビジョンをもとに内閣府および経済産業省が具体的な研究開発の構想を示すために策定するものです。最新の資料は、内閣府ホームページ(経済安全保障重要技術育成プログラム https://www8.cao.go.jp/cstp/anzen_anshin/kprogram.html)を参照ください。
※4 サイバー空間
インターネットを代表とする主にコンピュータやネットワークによって構築された仮想的な空間のことです。
※5 フィジカル空間
実世界のことを指し、サイバー空間に対して私たちの現実の社会のことです。
※6 マルウエア
コンピュータやその利用者に被害をもたらすことを目的とした、悪意のあるソフトウエアのことです。
※7 既存暗号の危殆化
コンピュータの性能向上による暗号解析能力の向上や効率的な解析手法により、既存の暗号が容易に解読されてしまう状態となり暗号の安全性が低下してしまうことです。
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