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【摂南大学】脂肪細胞の分子ネットワークを地図に

学校法人常翔学園

―高速網羅的たんぱく質間相互作用解析が可能にー

 摂南大学(学長:久保康之)農学部応用生物科学科の矢崎潤史教授(研究当時:理化学研究所)、理化学研究所生命医科学研究センター統合ゲノミクス研究チームの清田純チームリーダー、かずさDNA研究所の川島祐介グループリーダーらの共同研究グループは、新しいたんぱく質間相互作用解析法である「高速網羅的相互作用解析法(ハロマス、HaloMS法)」を開発し、この技術とたんぱく質の複合体を予測するAI(人工知能)「AlphaFold Multimer」を用いてヒト脂肪細胞における多数の新規たんぱく質間相互作用を突き止めることに成功しました。本研究成果は、医療基礎科学、特に医療プロテオミクス研究に影響を与え、新規の薬剤標的発見や高精度な予防医学に貢献することが期待できます。

【本件のポイント】
● 高速かつ網羅的にたんぱく質複合体を解析する技術を開発した
● 脂肪細胞に特異的なたんぱく質間相互作用を発見、AIで評価した
● 新しい薬剤標的の発見に役立つことが予想される

HaloMS法を用いたたんぱく質間相互作用の発見:たんぱく質間相互作用探索のためにハイスループット技術HaloMSを開発した。これにより、新たな相互作用たんぱく質を迅速に捕捉できるようになった。ヒト脂肪細胞におけるたんぱく質複合体検出のためにHaloMSとAIを用いて、分子ネットワークがどのように統合されているかが明らかになった。

 たんぱく質は他のたんぱく質と相互作用(結合)することで、細胞機能をつかさどっています。相互作用により細胞機能を変化させることもできるため、新たな治療薬開発につながる標的として注目されています。今回、共同研究グループは、結合タグたんぱく質のハロタグと高深度質量分析、AIを利用して、たんぱく質間相互作用解析の新技術とその評価方法「ハロマス」を開発しました。本手法はこれまで1つずつ行っていた相互作用実験のスループット(処理能力)を100倍に上げ、既報のたんぱく質-たんぱく質間相互作用の再現にも成功しました。脂肪細胞を含むヒトの4種類の細胞を用いたたんぱく質間相互作用の検出では、脂肪細胞で特異的にみられる1000ペア以上の相互作用の発見に成功し、脂肪細胞の分子ネットワークがどのように統合されるかを明らかにする「地図」を示すことができました。
 本研究は、2024年5月29日付で英国の科学雑誌『Biology Methods and Protocols(オンライン版)』に掲載されました。
URL:https://academic.oup.com/biomethods/advance-article/doi/10.1093/biomethods/bpae039/7684954?login=true
 本研究の一部は、日本糖尿病財団・ノボノルディスクファーマ研究助成「100万回スケールのマルチプレックス相互作用解析技術による糖尿病分子ネットワークの分子基盤解明(代表者:矢崎潤史)」、武田財団ビジョナリー研究助成「DNAバーコーディングによるデジタル蛋白絶対定量(代表者:矢崎潤史)」による支援を受けて行いました。

論文情報

論文名 Mapping adipocyte interactome networks by HaloTag-enrichment-mass spectrometry
    (和訳:HaloTag質量分析による脂肪細胞インタラクトームネットワークのマッピング)

著者名 矢崎潤史1、山梨貴士2、根本信乃3、小林敦夫2、韓龍雲2、長谷川知子2、
    岩瀬哲5、石川将己6、紺野亮6、今見考志4、川島祐介6、清田純2
    1 摂南大学農学部応用生物科学科(研究当時:理化学研究所)
    2 理化学研究所生命医科学研究センター 統合ゲノミクス研究チーム
    3 理化学研究所生命医科学研究センター 粘膜システム研究チーム
    4 理化学研究所生命医科学研究センター プロテオーム恒常性研究ユニット
    5 理化学研究所環境資源科学研究センター 細胞機能研究チーム
    6 かずさDNA研究所応用プロテオミクスグループ

雑誌名 Biology Methods and Protocols(オンライン版)

DOI 10.1093/biomethods/bpae039
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