ISC2、サイバーセキュリティ人材の需給ギャップに関する調査結果を発表:日本のサイバーセキュリティ人材が48万人強に増加した一方、未だ11万人に及ぶ記録的な人材不足に陥っていることが明らかに
ISC2, Inc.
世界的なサイバーセキュリティ人材不足の解消には400万人の追加人材が必要 経済の不確実性、スキルギャップ、次世代AIの台頭などの影響で、サイバーセキュリティ人材が直面する課題をISC2の調査が紐解く
世界有数のサイバーセキュリティ専門家資格の非営利の会員制組織であるISC2(本社:米バージニア州アレクサンドリア、CEO:クレア・ロッソ、URL:https://www.isc2.org/ )は、本日、ISC2の年次グローバルサイバーセキュリティ人材調査「ISC2 Cybersecurity Workforce Study ( https://www.isc2.org/Research )」の2023年版を公開しました。本調査によると、日本のサイバーセキュリティ人材は48万659人(前年比23.8%増)に達し、2022年から9万2000人以上が新たに雇用されたことが明らかになりました。これは、ISC2がこれまでに同地域で記録した中で最多となっています。一方で、本調査の結果では、依然として需要が供給を上回っていることも浮き彫りになりました。日本のサイバーセキュリティ人材の需給ギャップは過去最大に達しており、デジタル資産を適切に保護するためには、さらに11万254人(前年比97.6%増)の専門家が必要であると試算されています。
【世界のサイバーセキュリティ労働力の需給ギャップ】
下図の通り、ISC2は現在の世界のサイバーセキュリティ人材の数を約550万人と推定しています。これは、前年比8.7%増、約44万人の新規雇用に相当します。一方で、世界的なサイバーセキュリティ労働人口が増加し続けているにもかかわらず、ISC2が実施した調査では、依然として需要が供給を上回っていることが明らかになりました。労働力の需給ギャップは、今年さらに12.6%増加し、過去最大の約400万人に迫っています。中東・アフリカやラテンアメリカのような供給が特に急増した地域ではギャップの解消が進んでいるものの、特にアジア太平洋地域(特に日本とインド)と北米で需給ギャップの格差は広がりました。
【調査結果詳細と日本市場】
本調査の結果、経済の不確実性、人工知能(AI)、細分化された規制、スキルギャップなど、サイバーセキュリティ分野の専門家に影響を与える新たな課題も見つかりました。さらに、日本のサイバーセキュリティ専門家の66%が、現在のサイバー脅威情勢は、過去5年間で最も厳しいと回答しています。今後2~3年間、サイバーインシデントに対応するための十分なツールと人材を自組織が有していると回答したのは、わずか44%(グローバル52%)でした。
日本のサイバーセキュリティ専門家が直面している課題には、以下のようなものが挙げられます:
<労働力とスキル格差>
日本のサイバーセキュリティ専門家の94%が、自組織においてスキルギャップ(企業に求められる能力と実際に従業員の持つスキルの差)があると回答
組織におけるスキルギャップが存在する分野の上位5つには、クラウドコンピューティングセキュリティ(30%)、リスク評価・分析・管理(29%)、脅威インテリジェンス分析(29%)、デジタル・フォレンジック、インシデントレスポンス(29%)、AI(28%)が挙がっている
世界全体では、サイバーセキュリティ労働力のレイオフを実施した組織の51%が、1つ以上の重大なスキルギャップにより影響を受けていると回答しており、レイオフを実施していない企業では39%となった
<経済の不確実性>
予算縮小、レイオフ、採用凍結や昇進停止を含むカットバックを経験したと答えた回答者は、世界全体では47%であったのに対し、日本では32%だった
回答者の49%が、サイバーセキュリティの最新トレンドに対応するために不可欠な技術の購入/導入の遅れに直面している
回答者の72%が、カットバック(人件費削減)によって仕事量が増え、チームの士気(63%)や生産性(64%)に悪影響が出たと回答している
61%の回答者が、カットバックにより脅威への対応が阻害されていると回答し、48%が内部不正や脅威に関わるインシデントが増加していると回答している
回答者の29%が、カットバックは2024年まで続くと考えており、64%がカットバックにはレイオフも含まれると予想している
<新興テクノロジー>
世界全体の47%に対し、日本の回答者の59%がAIについて「全く知らない」または「最低限の知識しかない」と回答
42%の回答者が、デジタル・フォレンジックとインシデントレスポンスが、キャリアアップのために最も必要なスキルであると回答している
ISC2のCEOであるクレア・ロッソは、次のように述べています。
「調査対象国の範囲が広がった今回の調査で、日本の人材及び人材ギャップの増加率が対象国中で最も高い結果となったことは、日本においてサイバーセキュリティに対する注目度と重要性が高まっていることを示唆しています。日本をはじめ、世界的にも過去最多のサイバーセキュリティ専門家が本分野に参入していることを嬉しく思います。一方で、企業・組織とそれらの重要な資産を適切に保護するためには、専門家の数を倍増させなければならないという差し迫った現実があります。かつてないほど複雑で巧妙な現在の脅威の状況の中で、サイバーセキュリティの専門家が直面する課題の深刻化は、ISC2が業界へ伝えるメッセージの緊急性を強調しています:企業・組織は、新たな人材と既存のスタッフの両面からチームに投資し、絶えず進化する脅威の状況を切り抜けるために不可欠なスキルを身につけさせなければなりません。それこそが、私たちの集団安全保障を強化することができる、レジリエンスのある専門家を確保する唯一の方法です」
<将来のサイバーセキュリティ人材の強化>
企業・組織はサイバーセキュリティチームを強化するための戦略を積極的に採用しています。日本の回答者は、人材不足の解消、または緩和のために、柔軟な労働条件の提供(72%)、スタッフ研修への投資(80%)、多様性・公平性・包括性(DEI)プログラムへの拠出(58%)、資格取得支援(78%)、新規スタッフの募集・採用・研修によるチーム拡大(70%)を行っている、と回答しています。
<非技術的スキルを備えた人材の採用>
日本のサイバーセキュリティ専門家は、各種スキルの技術的熟練度に加え、非技術的な側面の重要性を強調しています。その中でも、強力なコミュニケーション能力(41%)、好奇心や学習意欲(40%)、高い問題解決能力(40%)が上位を占めています。日本の回答者の65%は、応募者の態度や適性を重視して採用し、技術的スキルを身に着けさせるために新入社員にトレーニングを提供していると回答しています。
<サイバーセキュリティにおけるグローバルな多様性と包括性の育成>
サイバーセキュリティ人材の多様性を促進するために、世界中の企業・組織がDEIイニシアチブを導入し、スキルベースの雇用を採用、DEI目標を重視して職務内容を改訂しています。調査対象地域の中で、DEIに投資している企業・組織が最も少なかったのは、中東・アフリカの51%で、次点がアジア太平洋とラテンアメリカ(56%)でした。アジア太平洋でDEIに投資している企業・組織が最も少ないのは、香港(56%)で、次に少ないのが日本(58%)でした。スキルベースの雇用を採用している企業・組織では、世界平均で25.5%の女性がサイバーセキュリティ担当として働いているのに対し、このイニシアチブを採用していない組織では22.2%に留まっています。しかし、30歳未満の世界のサイバーセキュリティ専門家に占める女性の割合はわずか26%に過ぎず、まだ対策すべき点が残っています。
DEIへの取り組みは、多様性を促進するだけでなく、サイバーセキュリティ人材の有効性を高めます。DEI採用を実施している企業・組織は、今後2~3年のサイバー脅威に対処するために、サイバーセキュリティ専門家たちがより強い準備意識を持っていると報告しています。
世界的なサイバーセキュリティ人材不足を解消するために組織が取れる追加措置の詳細については、https://www.isc2.org/Research から、2023年版の「ISC2 Cybersecurity Workforce Study」(英語)をご覧ください。
【ISC2 Cybersecurity Workforce Studyについて】
ISC2は、サイバーセキュリティ専門家が直面する課題と機会について詳細な調査を実施しています。「ISC2 Cybersecurity Workforce Study」は、サイバーセキュリティ人材の需給ギャップを評価し、サイバーセキュリティ専門家が直面する課題をよりよく理解し、個人がその専門家として優れた能力を発揮し、キャリア目標を達成し、組織の重要資産をより安全に保護するためのソリューションを明らかにするために、毎年実施されています。
【調査方法】
2023年版の「ISC2サイバーセキュリティ人材調査」は、Forrester Research, Inc.と共同で2023年4月から5月にかけて実施し、北米、ヨーロッパ、アジア、ラテンアメリカ、中東、アフリカに居住している14,865人のサイバーセキュリティ実務者から収集したオンライン調査のデータを基にしており、そのうち936人の日本の回答者が含まれます。非英語圏の回答者は、現地で翻訳されたアンケートに回答しています。サイバーセキュリティ人材不足の推定方法の詳細な説明は、本レポート(英語:https://www.isc2.org/Research )をご覧ください。
【ISC2について】
ISC2(International Information Systems Security Certification Consortium)は、安全で安心なサイバー空間の実現を目指す、世界有数の会員制組織です。世界で総勢50万人以上の会員、準会員(アソシエイト)、Candidatesが所属しており、サイバー脅威から人々の生活を守るために尽力しています。サイバーセキュリティ関連の最高峰の認定資格であるCISSP(R)をはじめ、数々の受賞歴を誇るISC2の認定資格により、サイバーセキュリティ専門家は、キャリアのあらゆる段階において所有する知識、スキル、能力を証明することができます。ISC2は、相互接続された世界におけるサイバー安全性及びサイバーセキュリティを加速させる、アドボカシー活動、助言、人材支援を通じて、サイバーセキュリティ専門家の影響力、多様性、影響力を拡大しています。ISC2の慈善財団であるThe Center for Cyber Safety and Education( https://www.iamcybersafe.org/s/ )は、サイバーセキュリティ専門家としてのキャリアを歩むための門戸を広げ、サイバーセキュリティ業界との接点がない人々への教育を提供しています。ISC2に関する詳細は、ウェブサイト( https://japan.isc2.org/ )をご覧いただくかX(旧Twitter https://twitter.com/isc2_japan )、Facebook( https://www.facebook.com/isc2Japan )、LinkedIn( https://www.linkedin.com/company/isc2/ )をフォローしてください。
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(C) 2023 ISC2 Inc.、ISC2、CISSP、SSCP、CCSP、CGRC、CSSLP、HCISPP、CISSP-ISSAP、CISSP-ISSEP、CISSP-ISSMP、CBKは、ISC2の登録商標です。また、Certified in Cybersecurityは、ISC2のサービスマークです。
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