『誰も書かなかったPLMの不都合な真実』を公開
株式会社オーツー・パートナーズ
製造業特化型コンサルティングファームが大規模システム導入成功の秘訣を明かす
株式会社オーツー・パートナーズ(本社:東京都千代田区区、代表取締役社長:松本晋一)は、「日本の製造業を元気にする」を ビジョンとして掲げ、創業来、製造業に特化した DXコンサルティングに注力、展開、しております。当社では8月31日(木)に当社ウェブサイトをリニューアルいたしました。同時に、新たな『コラム』コンテンツの第一弾記事をアップいたしました。PLM(Product Life-cycle Management)システムの導入は当社が対応することが多いプロジェクトの一つです。「製造業特化型コンサルティングファーム」として蓄積してきたノウハウの一端を公開するコラム『誰も書かなかったPLMの不都合な真実』を公開しました。
https://www.o2-inc.com/column/202308141461/
筆者
板東司(プリンシパル PLMマイスター)
PLM/BOMシステム導入を中心としたコンサルティングのキャリアを25年以上持つPLMマイスター。開発・設計・生産準備・製造領域における構想策定からシステム導入等のプロジェクト経験を多数有し、IT企画から導入・運用までのシステム導入ライフサイクル全般におけるコンサルティングとプロジェクトマネジメントを得意とする。
京盛健一(シニアマネージャー)
工学博士。研究機関にてバイオマス材料の研究開発と背品不具合の評価分析の技術支援に従事。その後、ITベンダーにてCAD/CAE/PLM製品の導入支援、MBDやMBSEのプロセス構築と実装支援に従事。オーツー・パートナーズ参画後は設計業務改革の企画構想から業務やデータフローの可視化、設計品質の向上を実現させるための3D活用やプロセスの構築、それらのデジタル実装支援を中心に設計開発DXの実現に取り組んでいる。
PLMとは、エンジニアリング・チェーンを管理するシステム
今日のPLMパッケージは、本当の意味での製品ライフサイクル、すなわち、製品の企画から開発や製造、販売、保守、終売までを管理するシステムとなりえているかというとそうではなく、実際はエンジニアリンク・チェーンの領域のみをカバーしているにとどまります。
とは言うものの、PLMパッケージにはこのエンジニアリング・チェーンにおける重要な情報(部品表、CADデータ、ドキュメント、日程、仕様、コストなど)を管理できる、多様な機能が準備されており、多くの製造業は下図のような姿の実現を目指してPLMシステムの構築を推進しています。
PLMの持つ一般的な機能
PLM導入における失敗の原因
しかしながら、多くの企業でこのPLM導入に失敗する例が後を絶ちません。素晴らしいコンセプトのシステムではありますが、その導入にはいくつもの落とし穴があります。失敗の典型的なパターンについてご紹介していきます。
1.スコープが狭い
PLMシステムの歴史を見ると、元はPDM(Product Data Management)システムから発展して今の姿となっているのですが、いまだにユーザーの頭がPDMの域を出ていないケースが多く見られます。
筆者が依頼を受けたA社では、IT部門が主導してユーザーから要件をヒアリングしてPLMシステム導入を進めていました。その主な要件は以下の通りです。
1.CADとPLMの連携(3D CADデータをローカル管理からPLM管理に)
2.E-BOM(設計部品表)と生産準備BOM(生産準備BOMはERPのM-BOM(製造部品表)に連携)の連携
3.図面をはじめとする設計成果物の管理
先に示したように、今日のPLMパッケージは企業活動全般にまつわる多様な機能を持っているにも関わらず、これら3点だけでPLMシステムの導入を進めてよいのか、また、費用対効果が得られるのか、という点からスコープの狭さを指摘して、依頼を差し戻しました。
2.これまでの業務を変えずにパッケージ導入
PLMシステムの導入費用は数億から数十億と、決して安いものではありません。それにもかかわらず、「(他社もやっているので、)我が社もそろそろPLMを」「DXのためにはPLMが必要」といった安易な動機でシステム導入に着手してしまう例が少なからずあります。確かに、PLMは製造業がDXを実現するための必要条件のひとつではあるが、決して十分条件ではありません。DXについても、まず「D(Digital化)」ではなく、まず「X(Transformation:業務改革)」があり、それを実現する手段としてDigitalを用いる、と考えるべきです。
3.PLMに期待しすぎ
PLMシステムを魔法の箱だと幻想を抱いてしまうケースもある。極論してしまうとPLMパッケージ自体は「ただの情報の箱」で、そこに業務プロセスは存在しません。PLMが対象とする開発・設計の世界は定型化が非常に難しいため、機能の定義はあっても、標準の業務プロセスを定義しがたいのです。
PLMパッケージベンダーの多くは、「弊社のPLM導入でベストプラクティスの実現を」と良くセールス活動の場で説明しますが、例えばBOMの例で考えると、どんな単位で定義し、品番をどう表現するか、バリエーションや製造の都合をどう表現するかは企業文化そのものであり、一概に「これがベストプラクティスだから、この通りに登録しなさい」と言えないのが実情です。実運用にあたっては、自社に合ったデータモデルやプロセスをデザインし、共通認識の上で使用する必要があります。
4.要件を盛り込みすぎ
よく見る事例として、過去の自分たちの仕事のやり方にこだわり、その通りに使えないと現場で受け入れられない、として、現状追従で要件を盛り込み過ぎ、カスタマイズのお化けとなり、開発期間・費用が膨大となり、さらにパッケージのバージョンアップの際に多大な工数・費用が必要となる(もしくは、バージョンアップが現実的に不可能なため、あるバージョンにロックされる)というケースがあります。
F社では、複数ある事業部門毎にユーザーの要望を聞き、個別のカスタマイズを実施した結果、せっかく同じPLMパッケージを導入したにも関わらず、事業部専用カスタマイズ群となってしまい、保守負荷に耐え切れず、PLM刷新に至ってしまいました。PLM刷新に当たっては、既に実施していた個別カスタマイズが、ユーザーの利便性を上げるきめ細かい対応だったことが仇になり、OOTB導入を基本方針とした新PLMの要件決めに苦労することになりました。エンドユーザーは、自分の日々の仕事のやり易さ(手数が少ないこと)に目が行きがちで、会社全体最適の視点(自分達が多少苦労してでも、後工程の利便性を上げる)を持て、と言われても難しいことが多々あります。
PLMに関わる全ての方に読んでほしいコラム
本コラムでは、これらの失敗の具体例を交えて深堀りし、そしてそれらを踏まえて「失敗しないPLM導入のコツ」「PLM導入時のポイント」についてご紹介しています。
PLM導入の大きな効果は、3Dを起点にしたコンカレントエンジニアリングの実現にあります。現状、多くの企業では3Dを使ってはいても、正データは2D(図面)であり、十分なデータ活用ができていません。これからは、3Dデータを元に、データを再入力することなしに連携する仕組みを構築する必要があります。現在、CADベンダーが中心となり推奨・推進しているのは、「(3D)モデル」にあらゆる設計・製造情報を“込めて“、モデルさえあれば、設計意図が正確に後工程に伝わるMBD(Model Based Definition)、さらには、モデルを中心に全ての業務が廻るMBE(Model Based Enterprise)の世界です。現在図面中心で業務をしている企業が、一足飛びにMBEの世界を目指すのはハードルが高く、下図のように段階的に進めるべきですが、3D化が進むと、図で示したように、開発・設計部門内だけでなく、営業部門や購買部門、保守部門など、各部門で3Dを活用したDXが実現できるようになります。
日本の製造業のさらなる進化のためにも、PLM導入におけるポイントを紹介し、PLMの刷新を考える企業、PLMを開発・提供しているパッケージベンダー、導入を支援するSIerのみなさんに本稿をお読みいただければ幸いに考えています。
また、8月31日(木)に当社ウェブサイトをリニューアルいたしました。今後、製造業に携わる皆様に向けて、このような当社のノウハウの一部を公開する記事を、継続的に更新してまいります。ご注目いただけますと幸いです。
段階的な3D正への道
株式会社オーツー・パートナーズについて
当社は、日本の製造業がモノづくりだけではなく、ノウハウのサービス化・提供を通じて新しい稼ぎ方を獲得するために、AIやIoT等の技術を取り入れた「設計・製造のデジタル化実装」と、既存技術の応用を通じた「新規事業創出・新製品/サービス開発」を中心に支援しています。
日本の製造業独自の「暗黙知」をハンズオン支援で可視化・数理モデル化し、生産のデジタル化を目的とするDXから、さらに一歩進んだ「日本流DX」を推進しています。
自動車、電機、工作機械、重工業、医療精密機器、素材など世界的に名だたる日本の有名企業から、エッジの効いた独自技術を有する中小企業まで多種多様な支援実績があります。
今後も、当社は「日本の製造業を元気にする」を信念に、地方から東京まで、日本中の製造業をより一層盛り立てられるよう尽力してまいります。
社名:株式会社オーツー・パートナーズ
本社所在地:東京都千代田区九段南一丁目6番5号九段会館テラス Classic Office 2A
設立日:2004年3月17日
代表取締役社長:松本晋一
事業内容:製造業向けコンサルティング、製造業プロジェクトマネジメント、教育など
HP:https://www.o2-inc.com/
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