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コロナ禍を機に官民一体となって動き出したDX(後編)

世界中で猛威を振るっている新型コロナウイルス。経済は混迷を深め、2008年のリーマショックを上回る影響が出るとされている。こうした中、経済産業省の旗振りのもと、経済界もDX推進に動き出した。日本経済団体連合会(経団連)は2020年5月、新型コロナウイルスの影響で、日常生活が制約される今こそ、デジタル技術で社会を変えるDXに取り組むべきだとの提言をまとめた。平川氏は「官民が一体となってDXを推進していくことが何よりも重要なことです」と経団連の動きが、DXに拍車を掛けるきっかけになると期待している。

経営トップのマインドが重要

九州経済産業局ではDX推進のためにさまざま取り組みを実施し、今後も新たな計画を打ち出している。2017年7月には、業種や職域にとどまらない横断的なビジネス連携が不可欠な時代に対応するため、モノのインターネット「IoT」技術の提供者と導⼊者、⽀援機関(⼤学・⾼専、産業⽀援機関、金融機関、自治体など)によるネットワーク「九州IoTコミュニティ」を設⽴した。

この他に中小企業の現場の悩みや課題に対して、システムの提案から設計・導入・フォローまでを担う存在としてSIer(システムインテグレータ(エスアイアー))を紹介する「九州FA/ロボットSIer企業 MAP/事例集」やDXにいち早く取り組み、新事業への進出や生産性向上、コスト削減を実現した「ものづくり企業が目指すデジタル・トランスフォーメーション~’デジタル・トランスフォーメーション’ で描く!一歩先行く成長戦略~(取組事例集)」を発行している。

独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が公開したDX推進指標 自己診断結果 分析レポートによると、DX先行企業の危機感共有の成熟度は「経営トップのコミットメント」が重要としている。平川氏は「経営者の危機意識とコミットメントが重要になります。既存のシステムを刷新し、事業を変革していくには、経営トップが現場にしっかりとコミットしていかないと、DXは成し遂げません」と言う。

九州経済産業局では、「第4次産業革命エグゼクティブビジネススクール」による製造業のデジタル化を担う経営者層向けカリキュラムの普及を支援している。

行政にも動きが出てきている。株式会社 chaintope(本社:福岡県飯塚市)と株式会社ハウインターナショナル(本社:飯塚市)は、飯塚市と共に、各種証明書の電子交付に関する連携協定を2020年7月3日に締結し、市が交付する各種証明書をスマートフォン上で扱うことができるサービスの実現に向けた実証事業を開始した。平川氏は「この他にも九州の保育園などでIT/IoTによる乳幼児の見守りや帳票作成を取り入れ、保育士がより保育に専念できるようなデジタル化の動きもあります」と話す。

問われるセキュリティ対策とIT人材

DXを推進する動きの一方で、重要なことはセキュリティ対策を講じることだ。総務省の試算によると、2020年はセキュリティ人材の不足数が19.3万人に達するといわれている。

平川氏は「希少なIT人材をAIやビックデータ、IoTといった先進デジタル領域に投じて、新たな収益源を確保する必要がある一方で、サイバーセキュリティ対策も急務になってきます」と語る。九州経済産業局では、九州経済連合会と連携したセキュリティセミナーの開催や近畿経済産業局が産学官連携で実施する初級者向けの「サイバーセキュリティ・リレー講座」(オンライン配信)も情報提供し受講を促している。

九州の事業者数は、約60万事業所で、全国の10.4%を占める。平川氏は「国内の企業数の 99% を占める中小企業は雇用の約 7 割を 生み出しています。九州経済にとっては、中小企業の成長は欠かせません。そのためにはいかにDXを進めていくかが、企業の将来を左右します」と強調する。九州経済産業局は、DXの推進状況や推進していくうえでの課題を探るアンケートを企業に募る取り組みとして、2020年7月に実態調査に乗り出した。

新型コロナでDXが加速 どうスピードに対応できるか

DXを推進する上では、さまざまな支援がある。中小企業庁は中小企業向けのポータルサイト「ミラサポplus」を開設し、さまざまな補助金・支援の情報を開示している。ここに掲載している支援の一つとして、「IT導入補助金」は、中小事業者の生産性向上を後押しするため、ITツールの導入支援にかかる費用を一部支給する制度だ。初回の2017年度の申請数は約1.4万件、2018年は10万件と年々増加し、予算も大幅にアップしている。

平川氏は「企業のDXを推進するためには、セミナーや補助金などの支援施策をより多くの企業の人に知ってもらう必要があります。企業の人たちもぜひ経済産業省などのホームページなどを活用して、情報を集めてほしい」と訴えた。

現在、世界は史上稀に見る災害に直面し、新型コロナウイルスによって、密閉・密集・密接の三密を避ける新しい生活様式の実践に取り組んでいる。企業の生産性向上支援、コンサルティング事業などを行うINTLOOP株式会社(本社:東京都港区)はDX推進への新型コロナウイルスの影響を明らかにするための調査を実施。2020年6月に発表した調査結果の内容から、コロナ禍の中でもDXの計画を推進し、または計画を早めた企業が72%に上ることがわかった。

出典:PRtimes

各企業では事業継続の一手として、インターネットを活用したオンラインでの業務遂行や電子決済のような接触場面の少ない取引の拡充、テレワークを活用した新しい働き方の実践を、かつてない勢いで進めている。

米国の調査会社IDCの予測によると、2020年のDXの世界市場(支出額ベース)は前年比10%以上拡大して、約1兆3000億ドルになる見通しだ。

平川氏は「九州の企業の将来像はどうなっていくかは、はっきりと言えませんが、コロナが収束しても世界的にDXはもはや欠かせないものになっています。新しいビジネスができれば雇用も確保でき、企業価値が高まります。DXとどう向き合って、いかに社会のデジタル化のスピードに対応できるかが、企業の今後、ひいては九州の経済の大きな鍵を握っているといえるでしょう」と締めくくった。

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DX.WITH編集部