事例

「DXで変わる!北九州の企業」シリーズ⑥アイム製作所編

北九州市の中小企業では「DX(デジタルトランスフォーメーション)」が進む。シリーズ第6回目はアイム製作所の事例を紹介。

作業の「見える化」で業務改善社員のモチベーションも向上

 1978年設立の「アイム製作所」は、従業員60人の制御装置・配電盤メーカー。工場や公共設施設などの設備を動かすための制御盤や、その設備に電源を安全に供給する配電盤を受注生産している。
オリジナルのCAD(コンピュータ支援設計)システムを活用するなど十数年前からデジタル化に取り組んできたが、工程管理や情報伝達は紙ベースのままだった。そこで、倉本新社長はペーパーレス化を決断。同社のDX推進はここから始まった。

情報の一元化と「見える化」

高品質の制御盤システムを製造

DX推進の第1弾として2020年、北九州市の補助金を活用して65インチのデジタルサイネージを社内に設置した。工程情報のデータ化を進めたものの、紙や口頭での報告・伝達という状況に大きな変化が見られなかったことがその理由だ。デジタルサイネージの設置により、製造工程や個人スケジュールなどの情報が一元化され、社員全員がそれを確認できるようになってきた。
次の課題は、そこに日々の作業実績をどうやって付加していくか。作業日報には個人によってバラツキがあり、精度も懸念される。このため21年、FAISと市内の企業が共同開発した、作業進捗をリアルタイムに「見える化」するシステム「PIYOT®(ピヨット)」を導入。これにより、作業実績をデータ化して分析することが可能になった。
そして、次のステップはPIYOTのデータ精度を上げ、より活用できるようにすることだった。

ペーパーレス化から経営改善へ

データが活用できるようになれば経営改善につながると考え、北九州市ロボット・DX推進センターの支援事業の利用を決めた。
PIYOT開発者の1人、「ハピクロ」の中田佳孝さんが専門家として派遣され、次の内容を支援した。

❶データ活用上の課題分析
❷データ入力ミス修正機能付加の仕様を議論
❸端末アプリ更新、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)活用、BCP(事業継続計画)対策
❹クラウドサーバー活用の議論

社内に設置された大画面デジタルサイネージで作業を「見える化」

中田さんは、倉本社長、ICT企画室次長の武内喜一さんらと議論を重ね、課題を整理するとともに、現場の状況や作業工程を把握。全社的に改善意識が高まり、現場に寄り添ったDXが進んでいることを実感した

仕事を見直し、業務への意欲喚起

全工程にPIYOTを導入し、ほぼ全員が作業時にリアルタイム入力することで、精度の高い作業実績情報を共有、分析できるようになった。社員にとっては、日報と実績報告の二重入力が不要になるなど負担が軽減。武内さんは「どの作業にどれだけ時間がかかったか、作業実績が明確になり、自分の仕事を見直すきっかけになっています」と、その効果に手応えを感じている。
倉本社長は「作業実績の『見える化』は、自分を高めたいと思う社員にとって非常に大きな励みになります」と社員のモチベーション向上に期待。この業務分析によって生産性をさらに向上させ、経営戦略を練って利益アップを目指している。

支援者メッセージ 株式会社ハピクロ(センター登録専門家)中田佳孝さん
継続してデジタルツールの活用を

  作業日報のペーパーレス化や分析機能など、今回の課題解決にマッチするツールとしてPIYOTを提案。「見える化」から分析可能になるまでの2年計画を7カ月で達成することができました。倉本社長はじめ経営層がDX推進の必要性を理解し、中間管理職を中心に改善意識が浸透していたこと。さらに、改善への意欲とITへの理解があり、現場に寄り添える旗振り役がいたことが、その大きな要因です。
今後は、経営課題や事業課題に対してデジタルツールをうまく活用することを意識して、取り組みを継続してもらいたいですね。

株式会社ハピクロ
住所:北九州市八幡西区八千代町3-16  URL:https://hapikuro.com
事業内容:IT・IoT導入サポート事業、保育園運営事業 ほか

1954年創業の八幡絶縁工業所(現・アイム電機工業)から制御装置部門を分離独立して1978年に設立。「安全と品質」にこだわった技術とサービスで、荷役、公共向け、鉄鋼向け、電力向けなどの制御システムをニーズに合わせ構築している。

株式会社 アイム製作所
代表者:代表取締役 倉本新
住 所:北九州市八幡西区黒崎城石3-5  URL:http://www.eimss.co.jp

 

 

動画公開中 DXで変わる!北九州市の企業⑥アイム製作所編

このDX推進をサポートしているのが「北九州市ロボット・DX推進センター」

公財)北九州産業学術推進機構 (FAIS)が運営する「北九州市 ロボット・DX推進センター」は、地域の中小企業のニーズに応え、ロボット導入やDX(loTの導入、業務のデジタル化等)推進をワンストップで支援する機関。

導入支援、操作体験、人材育成等の取り組みを通して、ロボット導入やDX推進に意欲のある地域企業を総合的・一元的に伴走支援。
また、集い・つながりの場として、地域企業と高等教育機関、金融機関等との連携を促進し、産学官金のハブとしての機能を果たす。

今回紹介しているDX推進支援においては、専門家を派遣し、Web会議やAIIoT等、ITツールを取り入れた新しい ビジネススタイルへの転換を図る企業に対して、専門家を派遣し、課題解決を支援している。

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