事例

北九州市内の先進事例から学ぶDX実践ガイドブック_クラウン製パン

【北九州市内の中小企業が実践したDXの先進事例を紹介】

経営課題 品質・安全・ミス防止令和5年度 北九州DX大賞 優秀賞    クラウン製パン

「便利の積み重ね」でデジタル化を浸透 

きっかけ ●手作業によるミスと現場の混乱を解消 ●経営課題の解決と並行してデジタル化を推進

2013年、家業であるクラウン製パンに入社した松岡寛樹常務取締役が目にしたのは、昭和時代のオフィスコンピューターと、手書き伝票が飛び交うアナログな現場だった。製造指示と製造数にズレが生じ、計算ミスや伝票漏れによるトラブルは日常化。デジタル化の遅れに危機感を抱いた松岡常務は、中小企業基盤整備機構に相談したが、「優先順位はそこではない」と指摘を受けたという。デジタル化を進める前に、経営課題を整理し、何を解決すべきかを明確にする必要があると気付かされた。そこで、山積する経営課題を洗い出し、長期経営計画を策定。まずは、衛生管理(HACCP)や人事制度の整備など、企業としての足腰を鍛えることに重点的に取り組んだ。それらと並行してデジタル化にも着手。事務所では1人1台パソコンを用意して、顧客との連絡にはFAXではなく極力メールで行うようにしたほか、各店舗にカメラを設置して情報収集しやすい環境を整備した。「当初はすぐに数字で確認できるような成果はありませんでしたが、『慣れる』というレベルから取りかかり、経営課題の解決と両輪で進めたことが、結果的に良かった」と振り返る。

人気ミニクロワッサンや給食用パン

取組内容 ●高価なソフトを買わず既存機能を最大限に活用 ●現場に寄り添う業務改善で、デジタル活用を浸透

同社のDX推進は、高額なシステム導入ありきではない。「外部サービスを使い倒そう」という方針のもと、「試用版を使ってみて、良ければ採用する」という柔軟なスタイルを取った。特に注力したのが、文書作成やオンライン会議などを統合した業務用ソフト「Microsoft 365」の機能活用。「おそらく多くの企業で導入されていると思いますが、ExcelとWordしか使わないのはもったいない。実はものすごく多機能で、100以上もの機能を備えているんです。当社ではTeamsで会議や連絡といったコミュニケーションをはじめ、資料共有、タスク管理も行っています。セキュリティ機能も標準搭載されており、安心して使えます」と話す、総務部門で情報システムを担当する奥苑拓朗さん。   奥苑さんは北九州市立大学と北九州市が実施するIT人材育成のためのリスキリングプログラム「everiGo(エブリゴー)」出身で、松岡常務を中心としたDX推進体制の一員として取り組んでいる。現場業務の経験が少ない立場だからこそ、既存の習慣にとらわれず、業務の便利、面倒を捉える視点を持つ奥苑さんは、現場に寄り添ったデジタル活用に貢献。「使わないと仕事が進まない」環境をつくり、「便利だから、教え合いながら使う」でデジタル化は着実に浸透。属人的な業務を整理し、業務の自動化も進めている。

「Microsoft365」をフル活用している社内

成果・展望 ●デジタル活用の定着により、ミスと労働時間を大幅に削減 ●業務の自動化を進め、人に依存しない仕組みづくり

既存のツールやサービスをフル活用し、必要以上にコストをかけずにデジタル化に取り組んできたクラウン製パン。今や、店舗や工場に設置された100台以上のカメラやTeamsでの情報共有により、経営層は現場に行かずとも状況を把握できるようになった。現場でも、半日かけていた手入力作業を、データ連携によって一瞬で終えられるようにするなど、ミスや労働時間を大幅に削減できる仕組みが広がっている。  松岡常務は現場をつぶさに観察し、「手間や面倒くさい」を見つけては、デジタルを活用した課題解決に挑んできた。今後のDX推進の狙いに「管理職の業務負担の軽減」を掲げる。従来は新人が入ってくるたびに、管理職は質問対応に手を取られていたそうだが、チャットによる報告・連絡・相談を実施し、すぐにフィードバックできる体制を整えた。今後は、「業務指示や進捗管理にもデジタルツールを導入してよりスムーズに仕事を進められるようにしたい」と意欲をみせる。「業務のスピードが上がったりチーム力を発揮できたりするようになれば、それがDXのひとつの答えではないでしょうか」

直営店や向上を本社で一括管理

トレーサビリティー(生産流通履歴)にも積極的に取り組む

同社ではローテーション配置を基本とし、環境の変化や新しいことを覚えることが当たり前という方針にしている。そのため業務の習熟がデジタル技術の習熟にも直結するように育成している。「これまで口伝えで教えてきた、ベテラン担当者の頭の中にしかない複雑な業務フローを整理して、手順を確立できました。次は、各業務を自動化したいです」と語る松岡常務。人が関わらなくても業務が回る仕組みづくりを見据えている。

経営者のメッセージ 松岡 寛樹 常務取締役


DX推進ありきではなく、まず行うべきは現場課題の整理です。そして、課題解決に向けて「面倒くさいことをやめよう」と考えること。業務を便利にできる仕組みをつくっていけば、おのずと従業員にも浸透していくと思います。

現場担当者のメッセージ 奥苑 拓朗 総務部門情報システム担当


DXと聞くと仰々しいですが、「Microsoft 365」を契約していれば、追加費用をかけずとも、今ある契約の中に使える機能が必ずあるはずです。まずは小さな「便利」を体験し、日常業務に落とし込むことから始めてみてください。

1948年創業。学校給食用パンや米飯8万人分の製造と配送を担い、地域に根差して食のインフラを支える企業。人気ミニクロワッサン専門店「ミニヨン」などの店舗運営のほか、パンや菓子の製造も手がける。従業員数200人(2026年1月時点)。

クラウン製パン株式会社  代 表:松岡 寛樹 常務取締役
住 所:北九州市小倉北区泉台4-4-41
ホームページ : https://www.crown-pan.co.jp/

DX推進をサポートする「北九州市ロボット・DX推進センター」

公財)北九州産業学術推進機構 (FAIS)が運営する「北九州市ロボット・DX推進センター」は、地域の中小企業のニーズに応え、ロボット導入やDX(loTの導入、業務のデジタル化等)推進をワンストップで支援する機関。

導入支援、操作体験、人材育成等の取り組みを通して、ロボット導入やDX推進に意欲のある地域企業を総合的・一元的に伴走支援。
また、集い・つながりの場として、地域企業と高等教育機関、金融機関等との連携を促進し、産学官金のハブとしての機能を果たす。

DX推進支援においては、専門家を派遣し、Web会議やAIIoT等、ITツールを取り入れた新しいビジネススタイルへの転換を図る企業に対して、専門家を派遣し、課題解決を支援している。

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北九州市ロボット・DX推進センター
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