事例

北九州市内の先進事例から学ぶDX実践ガイドブック_製鉄記念八幡病院

【北九州市内の中小企業が実践したDXの先進事例を紹介】

経営課題 働き方改革・長時間労働  令和6年度 北九州DX大賞 グランプリ  製鉄記念八幡病院

働きやすさと医療の質を高め、地域医療に貢献

きっかけ ●電子カルテ刷新が、DX推進の大きな転換点に ●情報の一元管理を実現し、働き方改革にも波及

製鉄記念八幡病院は、1900年に官営製鐵所附属病院として設立して以来、安心できる医療の提供を通じて地域社会に貢献する病院を目指してきた。製鉄記念八幡病院がDXを本格的に進める契機となったのは、電子カルテシステムの刷新である。2018年当時の環境では、部門システムごとにデータが分散し、必要な情報を円滑に共有しにくいという課題を抱えていた。加えて、システム動作の遅さや入力作業の負担により、医療従事者が診療や患者に向き合う時間を十分に確保しづらい状況があり、医療の質向上に向けた取組の足かせにもなっていた。  さらに、働き方改革の進展により、業務効率化や適切な労働時間管理への対応が急務となった。こうした背景を踏まえ、同院は21年秋に新たな電子カルテシステムを導入。あわせて各部門システムとの連携を進め、情報の一元管理を実現した。これにより業務効率化、データ活用の高度化、ヒューマンエラーの低減など、さまざまな効果が生まれている。  また、新電子カルテを基盤として、地域医療機関とつながる地域医療連携システムやスマートフォンを活用したモバイル電子カルテも導入。単なる既存業務のデジタル化にとどまらず、働きやすい職場環境の整備と地域に開かれた医療サービスの構築を同時に進めている。

内容 ●現場起点で進めるDX推進体制の構築    ●電子カルテ刷新を核にした具体的なDX施策を展開

DXに向けた取組は、2018年度から本格化した。まず着手したのは、情報システム部門の体制整備と、外部パートナーとの連携強化である。推進体制を整えた上で、ネットワーク環境の刷新など基盤整備を進め、電子カルテ更新を機に、DX推進は大きく加速した。  同院が特に成果を上げた取組として、以下の3例が挙げられる。一つ目は、iPhoneを活用したモバイル電子カルテの導入である。iPhoneから電子カルテ情報の参照や入力が可能となり、カルテ記事や実施記録に加え、チャット機能を活用したリアルタイムな情報共有も実現した。これにより、医療者がその場で情報を確認・共有しやすくなり、現場の機動性が高まっている。  二つ目は、地域医療連携システム「さらくらネット」を構築し、同院の電子カルテと連携した診療情報を地域医療機関から参照できる環境を整えた。地域の医師からは「必要な情報を即時に把握でき、医療の質向上や医療資源の有効活用に役立つ」といった評価の声が寄せられている。三つ目は、RPAの導入による業務自動化である。これまで職員がPC上で行っていた定型業務をRPAで自動化し、大幅な効率化を推進した。

「第一回さくらネットユーザ会」活用事例紹介(27施設、87人参加)

成果・展望 ●モバイル電子カルテ導入で超過勤務時間が約30%減少    ●RPA活用で年間約4300時間の業務時間削減を実現

DXの取組による効果は着実に現れている。モバイル電子カルテ導入前後の比較では、病棟看護師の移動回数が約40%減少、超過勤務時間が約30%減少、病室滞在時間は8.3%増加という結果が得られた。DX単独の成果としては捉えられないものの、現場では確かな効果を実感しているという。また、チャット機能の活用により、医師と看護師の電話でのやり取りも減少した。柳田太平理事長は、「医師が診療に集中できるようになり、大いに助かっているという声を聞く」と手応えを語る。業務上のコミュニケーション手段を見直し、情報共有の即時性を高めたことが、医療の質と働き方の双方に好影響をもたらしている。

患者の情報もスマホで読み取れ、看護師の移動距離も大幅削減

地域医療連携システム「さらくらネット」も着実に広がりを見せている。現在は76施設が導入し、登録患者数は7500人を超え、地域全体の医療サービスの質向上に寄与している。病院単体の最適化にとどまらず、地域医療の情報連携基盤として機能している点は、同院のDXの大きな特徴といえる。RPAによる自動化でも成果は明確だ。稼働から1年2カ月で、年間約4300時間の業務時間削減を実現。定型業務を自動化することで、職員がより付加価値の高い業務に注力できる環境づくりが進んでいる。加えて新電子カルテの導入以降、現場とともにDXを推進してきたことで、デジタル化に対する職員の意識が高まり、ITリテラシーの向上にもつながっている。内藤隆真総務部長は「現場との信頼関係を構築してきたからこそ今がある。人と人とのつながりを最も大事にしてきた」と強調する。現在は生成AIの導入も進めている。退院サマリー作成には医師1人あたり1患者につき約20分を要するというデータがある一方、先行導入した他院では、生成AI活用時に3分程度で完了したという結果も報告されている。こうした知見を踏まえ、同院でも医師・看護師の負担軽減や業務効率化、さらには診療の質向上につなげていく方針だ。今後は、内視鏡やCT画像の診断支援をはじめとするAI活用の広がりも見据える。柳田理事長は、「最終判断は医師という生身の人間が担うが、AIは診断や治療を支える補助的ツールとして活用する時代になっている」と語る。既存システムの強みを活かしながら、地域に密着した医療をさらに進化させる取組は、地域医療におけるDXの実践例として今後も注目される。

経営者のメッセージ 柳田 太平 理事長兼病院長

  DXを推進することで、現場の負担軽減や業務の効率化が進み、結果としてコスト削減にもつながります。一人一人の業務負担を減らしながら、医療の質を落とさず、むしろ高めていくためにも、DXは今後も着実に進めるべき重要な取り組みです。

DX推進担当者のメッセージ 内藤 隆真 総務部長(情報システム責任者)

 人が担ってきた業務がAIやロボットへ移行していく中、DXを“活用・創造”できる人材の確保と育成は急務です。ITの導入で終わるのではなく、現場でいかに活用し、改善を継続的に推進できるかが問われ、その実現に向けた体制整備が極めて重要だと考えています。

32診療科を有し、脳卒中や虚血性心疾患などの心血管疾患、腎不全、整形外科疾患、がん診療など幅広い急性期医療に対応。救急医療にも力を入れ、地域の医療機関と連携しながら、地域医療支援病院として高度な医療を提供している。職員数816人(2025年4月時点)。

社会医療法人 製鉄記念八幡病院  代表:柳田 太平 理事長病院長
住 所:北九州市八幡東区春の町1-1-1
ホームページ:https://www.ns.yawata-mhp.or.jp/

DX推進をサポートする「北九州市ロボット・DX推進センター」

公財)北九州産業学術推進機構 (FAIS)が運営する「北九州市ロボット・DX推進センター」は、地域の中小企業のニーズに応え、ロボット導入やDX(loTの導入、業務のデジタル化等)推進をワンストップで支援する機関。

導入支援、操作体験、人材育成等の取り組みを通して、ロボット導入やDX推進に意欲のある地域企業を総合的・一元的に伴走支援。
また、集い・つながりの場として、地域企業と高等教育機関、金融機関等との連携を促進し、産学官金のハブとしての機能を果たす。

DX推進支援においては、専門家を派遣し、Web会議やAIIoT等、ITツールを取り入れた新しいビジネススタイルへの転換を図る企業に対して、専門家を派遣し、課題解決を支援している。

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北九州市ロボット・DX推進センター
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