北九州市内の先進事例から学ぶDX実践ガイドブック_大英産業
【北九州市内の中小企業が実践したDXの先進事例を紹介】
経営課題 情報の分断 令和6年度 北九州DX大賞 優秀賞 大英産業
DXの推進で社内外にワクワクを創出
きっかけ ●10年ビジョンの達成手段として不可欠だったDX ●DX推進計画は現場の声を聞きながら3、4回作り直し
九州の「まち」を元気にしたいと、新築分譲住宅の販売やタウンハウスの企画などを手がける大英産業。2022年からスタートしたDXの推進は、一ノ瀬謙二代表取締役社長の就任が契機となった。当時、顧客や土地などの業務情報が部門ごとに分散されていた。そのため、情報集約が難しく、入力や閲覧などの手間がかかっていた。その結果、顧客接点時間を確保できないうえ、生産性も上がらず、顧客への新たな価値提供にリソースを割けない状況だった。 危機感を覚えた一ノ瀬社長は、自社の経営理念「元気な街、心豊かな暮らし」の実現に向け、指針となる10年ビジョンを策定。不動産の販売事業にとどまらず、地域や街全体を活性化する企業を目指している。ビジョンに不可欠と考えたのがDXの推進だった。地域の魅力を創造するには、まず社内の非効率解消から取り組まなければならないと考えたからだ。「DXは目的でなく、事業戦略を支える手段」と捉える一ノ瀬社長。DX推進の計画は、現場の声を熱心に聞きながら、概念や予算に関してすり合わせを行い、3、4回も作り直した。一ノ瀬社長は「大きく動きを変えるには必要な作業だった」と当時を振り返る。

取組内容 ●社員一人一人がアイデアを出せる環境を整備 ●DX推進基盤の整備と従業員・顧客の体験価値向上
策定したDX推進計画に基づき、まず取り組んだのは、情報戦略課の設置だった。不動産の営業や仕入れ、総務や経理財務、マーケティングなどの業務をそれぞれ行ってきた9人で構成。①推進基盤の整備②働き方改革(生産性・従業員満足度向上)③事業変革(社会課題解決・顧客体験価値向上)という三つの柱を掲げて取り組んでいった。①推進基盤の整備では、サイボウズの業務支援サービス「kintone(キントーン)」を活用した。導入には各所から大小さまざまな抵抗もあったが、現場と一緒に仕組みをつくり改善や成功を重ね、現場の声を聞き入れることで理解を深めていった。社内の情報を一元管理できるシステムとし、社員一人一人が担当業務やサービス、組織に課題意識を持ち、アイデアを出せる時間や環境を整えていった。 ②働き方改革では、光学式文字読み取り装置(OCR)やパソコンの定型作業を自動処理する(RPA)、一つのIDで複数のサイトやアプリにログインできる(シングルサインオン)などを導入。入力や閲覧などに関する日々の業務を徹底的に自動化、省力化して“ムリ、ムダ、ムラ”を削減していった。③事業変革では、仮想空間(メタバース)を企画し開発。社内の会議や研修、採用活動で活用したほか、地域企業と共に大学生向けの「業界研究会」イベントも開催した。白石貴之経営企画室情報戦略課課長は「とにかく業務に変化を起こし、提供価値を増やしたい一心だった」と語気を強める。

成果・展望 ●年間2500時間と1300万円が削減 ●表彰や取材で若手社員の自信に結び付く
3年間の取組で大英産業は大きく変わった。具体的にはキントーンの活用で受発注請求業務時間が月300時間から200時間へと約33%削減した。年間では、RPAやペーパーレス化などで社内申請に関する5000枚の紙と処理にかかっていた2500時間、契約の際の印紙代1300万円が削減できた。メタバースを使った採用活動で、学生との接点を増やし相互理解が深まった。推進基盤の一環で作成した社内からアイデアを募るアプリでは、思いがけない動きもあった。昼休みに社内の動きや成功事例を AI 音声によるラジオで流し、社員から「文字だけの情報よりも会社の取組を深く理解できた」などの声も出てくるようになった。

メタバース空間を活用した新たな採用活動

AIの知識・スキルの習得のための社員教育を実施
うまくいった点について一ノ瀬社長は「情報戦略課が、相談しやすい部署だったこと」と分析する。同課はいろいろな部署に積極的に出向き、社内外の困りごとを聞き、改善していった。また「成果が出て、表彰や取材を受けることが若手社員の間で自信につながっている。社内に良い風が吹き出した」と一ノ瀬社長は予想以上の効果に笑みを浮かべる。現在は、社内教育で社員全員がAIを使いこなせる段階に近づいている。今後は、AIをさらに活用し土地の仕入価格や最適な事業の選定を自動で進める考えだ。新しいものを積極的に取り入れ、変革を続ける大英産業。「元気な街、心豊かな暮らし」と題した2022年からの10年ビジョンは前倒しで達成されそうだ。
経営者のメッセージ 一ノ瀬 謙二 代表取締役社長
DXを推進しようと思ったら、まずは目的地や到達点を決めましょう。やみくもに始めてもうまくいかないように思います。優先順位を決めて、小さなことやできることから始めるのが成長のカギとなります。
DX推進担当者のメッセージ 白石 貴之 経営企画室情報戦略課課長
DX推進に必要なのは、難しい専門知識ではなく、行動力です。いろいろ考える前に、面白そうだなと思うツールや分野からまずやってみましょう。現場を巻き込みながら、徐々に広げていくとリスクも抑えられます。
1968年創業。新築分譲マンションや新築一戸建て住宅の企画販売のほか、街づくり事業も手がける総合不動産企業。産学官連携で「若者の居場所づくり」に取り組むなど、地域貢献にも力を入れている。従業員数417人(パート含む/連結:2025年9月時点)
大英産業株式会社 代表者:一ノ瀬 謙二 代表取締役社長
住 所:北九州市八幡西区下上津役4-1-36
ホームページ:https://www.daieisangyo.co.jp/
DX推進をサポートする「北九州市ロボット・DX推進センター」

公財)北九州産業学術推進機構 (FAIS)が運営する「北九州市ロボット・DX推進センター」は、地域の中小企業のニーズに応え、ロボット導入やDX(loTの導入、業務のデジタル化等)推進をワンストップで支援する機関。
導入支援、操作体験、人材育成等の取り組みを通して、ロボット導入やDX推進に意欲のある地域企業を総合的・一元的に伴走支援。
また、集い・つながりの場として、地域企業と高等教育機関、金融機関等との連携を促進し、産学官金のハブとしての機能を果たす。
DX推進支援においては、専門家を派遣し、Web会議やAI・IoT等、ITツールを取り入れた新しいビジネススタイルへの転換を図る企業に対して、専門家を派遣し、課題解決を支援している。
北九州市ロボット・DX推進センター
運営 公益財団法人 北九州産業学術推進機構(FAIS)
〒808-0135北九州市若松区ひびきの北8−1 TEL092-695-3090