北九州市内の先進事例から学ぶDX実践ガイドブック_松本工業
【北九州市内の中小企業が実践したDXの先進事例を紹介】
経営課題 生産性・業務非効率 令和5年度 北九州DX大賞 準グランプリ 松本工業
AIでDXを推進する次世代のスマート工場
きっかけ ●ヨーロッパとの温度差を感じDX 推進へ ●外部技術も取り入れ最適化と効率化を
松本工業のDX推進のきっかけはヨーロッパ視察だった。十数年前、当時の社長だった松本茂樹代表取締役会長が、日本よりもデジタル化が進むヨーロッパの現状を目にした。ヨーロッパでは行政のデジタル化が、特にドイツでは工場内の見える化が日本よりはるかに進んでいた。対して自社工場は、運搬や記録の自動化が遅れていて生産性が向上せず、危機感を抱いていた。そこで2016年頃から独自の「松本工業スマートファクトリープロジェクト」を掲げ工場DXを推進。社内に機械や設備などの設計、製作のほか制御システムも内製化できる素地があり、無人搬送車(AGV)の制御構築などの経験が蓄積されていたことも後押しとなった。舘下繁仁代表取締役社長は「デジタル化を進めることでものづくりを楽にしたいという発想だった」と当時を振り返る。 さらに企業の合併・買収(M&A)で新たな事業に進出したことで、複雑な生産順序やベテランの技術者に依存する属人化の問題が見えてきた。そこで内製だけではなくAI など社内に蓄積のない分野に関しては、社外の知識や技術を活用して新たなビジネスや市場の開拓につなげる「オープンイノベーション」に取組み、効率的に進めたという。

取組内容 ●自動化と見える化で現場の負担を減らす ●製造の追跡性を高め品質管理を高度化
「松本工業スマートファクトリープロジェクト」では、工場内の「物流自動化」と「見える化」から着手した。AGVはキットのみ購入し、社内エンジニアが制御・棚・供給装置を設計、製作して、搬送システムとして組み上げた。センサーを設置し、プレス機の稼働などを常時監視。1日数百枚も必要だった紙の帳簿は、電子化しペーパーレス化を始めた。また、製造順序が複雑で熟練の作業者への依存が強い業務についてはAI を活用。顧客の需要に応じて、AI が計画立案を支援することにより、生産計画の立案に極力人手をかけないシステムが完成した。 品質管理では、不良品が出る要因が多岐にわたっていたが、原因究明には9秒に1個の割合での記録が必要で、人力では不可能だった。そこで「一個一個の製品に起こっていることを自動的に記録しよう」と、製造工程の追跡性を強化。非接触で情報を読みとる無線周波数識別(RFID)を採用した。それまでのやり方と異なる作り方には反発もあったが、現場の意見を細かく聞き取り、最終的に記録を取り込めるようになった。現在ではAIが設備を操作して不良品の発生を自動的に抑制する仕組みが試験稼働している。

製品のRFIDを読み込んで、出荷計画と一致させて積み込んでいる様子
成果・展望 ●データを集約し現場を任せられる仕組みづくり ●他の企業を巻き込んださらなる進化を
DXの推進で、工場内物流の自動化やペーパーレス化を実現した。中でもRFIDの活用により、不良品が発生する原因の特定が可能になった。人力に依存していた作業環境を改善し、品質や生産性の向上につながった。一方で、内製化にこだわりすぎず、外部のサービスを活用し、属人化という課題も大きく改善した。舘下社長は「絶対に変えてはならない企業理念は持ち続け、生き残るためにこれからの時代の変化に柔軟に対応していかなければならない」と意気込む。

工場内の見える化に積極的に取組む

手前の青い無人搬送車(AGV)が磁気テープに沿って走行している
また、製造業の本質を変える可能性を秘めているというAI にも魅力を感じている。「AIを日常的に自然に使うことが求められています」と話すのは、製造本部豊前工場長の松本大樹さん。A Iの積極的な活用は、事務処理を高速化させてスマートなワークライフバランスを目指すだけにとどまらない。これまでの安全管理ノウハウや社内規則をAIに学習させることで、事前の危機管理で従業員のけが防止を期待できる。現在の工場では、設備ごとにデータが異なり、異常時にはライン長や工場長が随時対応している。そこで各設備のデータを一つの基盤に集約し、AIからアクセスさせることで、稼働の最適化やラインの停滞予測を自動化。AIが工場管理の一部を担い、生産量の変動やトラブルが発生した際の自動的な対応を可能にするエージェント型AIの開発にも取り組んでいる。舘下社長は「自社工場をショールームにしていきたい」と、これまでに培ったDXやAI構築のノウハウを提供し、他の企業を巻き込んださらなる進化を目指す。
経営者のメッセージ 舘下 繁仁 代表取締役
DXを進める際、いろいろな悩みを共有することで、共通点や違う部分から新しい発見につながり、活発な議論へと広がると思います。工場見学を随時受け入れていますので、ぜひ気軽に電話やメールでご相談ください。
DX推進担当者のメッセージ 松本 大樹 製造本部豊前工場長
現場作業を少しでも軽くするためにもAIは積極的に使うべきだと思います。AIは中小企業こそ遅れず活用するべき武器。何事にもチャレンジして、後ろを向かずに前を向いて進むことがDXには大切です。
1966年創業。福岡県豊前市と群馬県に工場を構え、自動車向けのシートフレームやヘッドレストを製造。建材部品等の製造、総合建築業や保育園、食品スーパーなどの事業も手がける複合企業。従業員387人(単体:2025年12月時点)。
松本工業株式会社 代表者:舘下繁仁 代表取締役社長
住 所:北九州市小倉北区三萩野1-2-5
ホームページ:https://www.matsumoto-kk.co.jp/
DX推進をサポートする「北九州市ロボット・DX推進センター」

公財)北九州産業学術推進機構 (FAIS)が運営する「北九州市ロボット・DX推進センター」は、地域の中小企業のニーズに応え、ロボット導入やDX(loTの導入、業務のデジタル化等)推進をワンストップで支援する機関。
導入支援、操作体験、人材育成等の取り組みを通して、ロボット導入やDX推進に意欲のある地域企業を総合的・一元的に伴走支援。
また、集い・つながりの場として、地域企業と高等教育機関、金融機関等との連携を促進し、産学官金のハブとしての機能を果たす。
DX推進支援においては、専門家を派遣し、Web会議やAI・IoT等、ITツールを取り入れた新しいビジネススタイルへの転換を図る企業に対して、専門家を派遣し、課題解決を支援している。
北九州市ロボット・DX推進センター
運営 公益財団法人 北九州産業学術推進機構(FAIS)
〒808-0135北九州市若松区ひびきの北8−1 TEL092-695-3090