北九州市内の先進事例から学ぶDX実践ガイドブック_白海
【北九州市内の中小企業が実践したDXの先進事例を紹介】
経営課題 人材不足・属人化 令和6年度 北九州DX大賞 準グランプリ 白海
DXで自社変革を実現し、業界の底上げと課題解決を先導
きっかけ ●作業船の老朽化、熟練技術者の高齢化 ●「2040年度までに生産性1.5倍」に向けて
白海が専門とするのは、水底の土砂を除去する浚渫工事。海や港を良好な状態に保つ技術で、洪水などの自然災害防止や船舶の安全航行、物流の活性化に貢献している。しかし、海洋土木業界は、作業船の老朽化や減少、熟練の船員や技術者の高齢化といった課題に直面しており、同社も例外ではない。国土交通省は「2040年度までに建設現場の生産性を1.5倍にする」という目標を掲げるが、達成へのハードルは非常に高い。 持続可能な企業経営の危機を感じた経営陣は「スマート浚渫で海の未来を創造する」という理念を掲げ、最新鋭のICT技術を搭載した作業船の建造を決意。また、「DXは会社を整理し、生き残るための道具」と定義して、さまざまな施工管理システムやIoTツール、クラウドサービスを導入。熟練者に依存し、事務作業まで現場が抱え込む仕事の進め方を見直すため、現場からバックオフィスまで一体で改革するDXに踏み出した。
取組内容 ●日本初の油圧制御式自動浚渫システム ●バックオフィスと現場の連携で作業負担軽減
最大の取組は新造船「アポロ18号」への「油圧制御式自動浚渫システム」の導入だ。従来、熟練の勘に頼っていた掘削作業を自動化・可視化するシステムを同業他社と共同開発。経験の浅い若手社員でもベテランと同等の精度で施工が可能となった。しかも、日本初の技術にもかかわらず、特許をあえて取得せず、業界内で技術を共有する道を選択。「業界全体の技術の底上げになれば、結果的に自社の競争力向上にもつながる」という石橋敬代表取締役の経営判断によるものだ。 さらに、現場技術者の業務負担軽減にも着手。浚渫範囲を高精度かつリアルタイムで測量できる「自動出来形測量・遠隔管理システム」を自社開発した。新システムで、現場に行かずとも遠隔でデータを共有・管理できる環境が整った。バックオフィス部門で働く女性技術者(総合職)を中心に、ICT活用による施工書類作成スキルを証明する「建設ディレクター®」資格を取得。従来、現場技術者が行っていた多岐にわたる事務業務を専門職として代行する体制を構築した。竹内桃花工事部主任は「大きなことだけでなく、日報の電子化や船内のWi-Fi環境の整備など、小さな改善の積み重ねを大切にすると、現場のDXが進みます」と強調する。

浚渫船で取得したデータを、本社から遠隔で確認する様子
成果・展望 ●技術提案力向上による受注拡大 ●業界目標の実現に向け、技術高度化を推進
一連の取組で、現場の安全性と生産性は劇的に向上。かつては10年以上要していた技術者育成も、自動化システムの誕生により、同じ業務を高卒後3年目の若手が担えるようになった。また、自社開発技術は国土交通省の新技術情報提供システム(NETIS)にも登録しており、業界全体の技術力向上にも寄与している。DX推進による技術提案力の向上で受注機会も増加し、経営資源が再び充実していく好循環も生まれている。技術者が減少している現況下でも、従来に劣らない生産性を実現できているのは、設備やシステムへの投資の成果といえるだろう。「2040年度に生産性を1.5倍に」という高い目標に向かって、今後は水中ドローンや音波探査技術の高度化を進めていく考えだ。

若手社員が担えるようになった難しい浚渫作業

ドローンの作業などを担う女性技術者
石橋代表取締役は「最大の成果は、会社の現状が整理されたこと。DX推進の過程で業務の精査やスリム化、見えていなかったことや考えていなかったことが明確になった」と強調する。「そもそも当社には、仕事を高度化させることや、業務改善に積極的な社風があります。今の経営陣は60歳前後ですが、次の世代に変わるまであと5年くらいしかないんです。会社として効率化を図っていくには、水中ドローンや音波技術の高度化 などが不可欠ですが、それが主軸ではありません。それに取り組むことで社員のモチベーションが向上したり、自発的に技術開発を行う企業風土が定着したりする、そこにこそ意義があると考えています」
経営者のメッセージ 石橋 敬 代表取締役
中小企業の課題は、限られた経営資源と設備投資の中でいかに効率的に生き残っていくかということ。DXの推進は会社を整理整頓するための「道具」と考え、自社の強みや無駄を見つめ直すことに取り組んでみてください。
DX推進担当者のメッセージ 竹内 桃花 工事部主任
システムの導入で、従来のやり方に敬意を払いつつ、便利さや有効さ、そして使い方もしっかり伝えることを心がけています。「沖合でも電波がつながるようになった」など改善の積み重ねが変革につながります。
1982年創業。海や河川などの水域における海上土木工事・浚渫工事の土木施工管理を専門とする。最新鋭の作業船と独自技術を強みに、環境保全や安全衛生に配慮した施工を展開。従業員数63人(2026年2月時点)。
株式会社 白海 代表者:石橋 敬 代表取締役
住 所:北九州市若松区響町3-1-33
ホームページ:https://shirakai.jp/
DX推進をサポートする「北九州市ロボット・DX推進センター」

公財)北九州産業学術推進機構 (FAIS)が運営する「北九州市ロボット・DX推進センター」は、地域の中小企業のニーズに応え、ロボット導入やDX(loTの導入、業務のデジタル化等)推進をワンストップで支援する機関。
導入支援、操作体験、人材育成等の取り組みを通して、ロボット導入やDX推進に意欲のある地域企業を総合的・一元的に伴走支援。
また、集い・つながりの場として、地域企業と高等教育機関、金融機関等との連携を促進し、産学官金のハブとしての機能を果たす。
DX推進支援においては、専門家を派遣し、Web会議やAI・IoT等、ITツールを取り入れた新しいビジネススタイルへの転換を図る企業に対して、専門家を派遣し、課題解決を支援している。
北九州市ロボット・DX推進センター
運営 公益財団法人 北九州産業学術推進機構(FAIS)
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