事例

「DXで変わる!北九州の企業」シリーズ⑨グランド印刷

受注や顧客、原価情報をクラウドで一元管理し、事業の多角化も加速

業務改善とビジネスモデル変革が好循環のデジタルスパイラルへ

1969年、シルクスクリーン印刷で創業したグランド印刷は、サイン事業にインクジェット出力、段ボールディスプレイなど時代のニーズに合わせて事業領域を拡大してきた。小泊勇志社長は、東京進出とリーマンショックを通じデジタル化の必要性を痛感。社内の業務改善とビジネスモデルの変革に着手した。
まだ「DX」という言葉が広まっていなかった頃のスタートだったが、業務の効率化、働き方の改革といった社内の変革とともに新規事業が次々と誕生。好循環のデジタルスパイラルが生まれている。

きっかけは東京進出とリーマンショック

まだ珍しかった段ボールディスプレイを武器にグランド印刷が東京進出した2008年、時を置かずしてリーマンショックが日本の市場に大きな混乱をもたらした。メイン事業である販促物の受注は激減。東京撤退をも視野に入れざるを得ないほどの苦境を経験した小泊社長は09年、二つの取り組みに着手した。
一つは「デジタル化による社内業務の改善」。東京で活動する中で、本社に電話―FAX送信―確認、といった繰り返しに「事業活動の基盤がまったくできておらず、このままでは業務拡大は難しい」と気付いたためだ。
もう一つの取り組みは「ビジネスモデルの変革」。不景気になると、広告宣伝費は真っ先に削られる。「景気に左右されない会社」をつくるためには、販促物頼りだったビジネスモデルを根本的に見直すことが必要だった。

主力のシルクスクリーン印刷事業

デジタル化で実現した働き方改革

まずは、当時普及し始めたクラウドツールを活用。社内資料やカレンダーを共有するとともに、営業担当者にはスマートフォンを配布して、どこからでも必要な情報にアクセスできるようにした。その後、ビジネスチャットを導入して社内メールを廃止、営業日報、稟議書などもチャットに切り替えた。
これによってミスやクレームが激減し、業務効率は格段に向上。また、業務がシステム化されたことで「属人化」が解消され、「みんなで協力しながら休みが取れる」体制に。その結果、男性中心だった職場に子育て中の女性社員が増えるなど「多様な働き方」「多様な人材活用」が進展している。
さらに既成のツール導入にとどまらず、社内のプロジェクトチームでオリジナルの基幹システムを自社開発。徐々に適用業務を拡大し、現在は受注や顧客、原価などあらゆる情報をクラウドで一元管理している。

デジタル化が多様な人材活用を後押し

業界の枠超え「連邦多角化経営」を

「事業の柱が一つだけでは企業として不安定」との反省から、従来の枠にとらわれない新たな分野へのビジネスモデルの変革にも意欲的に取り組んでいる。
その一つが、オンラインで建築現場の足場広告シートを注文できるサイト「GO!GO!不動産」だ。そして、このサイトにおける注文顧客データを分析することで、注文の多い垂れ幕に特化しながら対象業界を広げた事業「まくする」が誕生した。さらに「まくする」によって学校・飲食業界という新たな顧客層を獲得し、その分析から、また新たな事業のヒントが導き出されている。
好循環のデジタルスパイラルが発生し、年に1、2件の新規事業が立ち上がっているのだ。当初、別々に進めてきた「D」(デジタル化)と「X」(事業変革)が見事につながった格好で、「これこそ、デジタルトランスフォーメーションの醍醐味」と小泊社長は言う。
アナログ時代の多角化とは異なり、既存事業を含むいくつもの事業が互いに連携した「連邦多角化経営」を目指している。「これまで培ってきた印刷加工技術にDXの強みを生かして、他の業界で新たな価値を創出することにチャレンジ。地域経済の活性化に貢献していきたい」

「まくする」のサイト内ページ

1969年、シルクスクリーン印刷で創業。福岡と東京に事業所を構え、デジタルプリント事業、サイン事業、段ボールディスプレイ事業へと領域を拡大。2016年には、日本初のデジタルプリント壁紙ブランド「Arms」を立ち上げるなど新規事業を次々と生み出している。

グランド印刷 株式会社
代表者:代表取締役社長 小泊 勇志
住 所:北九州市門司区松原1-2-5
URL:https://grand-in.co.jp/
 

 

動画公開中 DXで変わる!北九州市の企業⑨グランド印刷

北九州市内企業のDXを推進している北九州市ロボット・DX推進センター

公財)北九州産業学術推進機構 (FAIS)が運営する「北九州市 ロボット・DX推進センター」は、地域の中小企業のニーズに応え、ロボット導入やDX(loTの導入、業務のデジタル化等)推進をワンストップで支援する機関。

導入支援、操作体験、人材育成等の取り組みを通して、ロボット導入やDX推進に意欲のある地域企業を総合的・一元的に伴走支援。
また、集い・つながりの場として、地域企業と高等教育機関、金融機関等との連携を促進し、産学官金のハブとしての機能を果たす。

今回紹介しているDX推進支援においては、専門家を派遣し、Web会議やAIIoT等、ITツールを取り入れた新しい ビジネススタイルへの転換を図る企業に対して、専門家を派遣し、課題解決を支援している。

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