「DXで変わる!北九州の企業」シリーズ⑩リョーワ
カメラ付きスマートグラスなどを使った研究風景
事業環境悪化への対応に迫られAIによる新規ビジネス創出
1968年創業のリョーワは、生産機械に使われる油圧装置の総合メンテナンスや油圧配管工事、油圧ユニットの設計や製作など「油圧業務」で知られている。しかし、駆動源を電動化する機械が増えるなど「脱油圧化」への流れと人口減少による日本市場の縮小を見据えて、早くから事業変革に取り組んできた。2018年には人工知能(AI)を使った外観検査システム市場に参入。社内DXを進めながら、新システムの開発・販売で中小製造業の生産性向上支援を目指している。
変革の必要性を痛感し新規事業に参入
リョーワの事業変革のきっかけは1997年にさかのぼる。田中裕弓社長が担当営業時、顧客から「これから油圧の機械はなくなる」と言われた。同じ頃、人口減少、国際競争力の衰退、年金問題、財政問題など日本市場の縮小、日本経済の弱体化による「2020年危機」を描く新聞連載などが話題となった。
そこで変革の必要性を痛感した田中社長だが、03年に経営を引き継ぐ際、先代の父と「10年間は事業内容を変えない」と約束。その間、中期経営計画を策定し、人材の育成に力を入れるなど社内改革に取り組んできた。
そのさなかにリーマンショックが起こり売り上げは半減。東日本大震災によって、さらに環境が悪化する中で「油圧から機械のメンテナンス」へと幅を広げるため、2人のエンジニアを中途採用した。この2人がたまたま製品や部品の表面を検査する外観検査装置の技術を持っており、このタイミングである会社から「外観検査を自動化する装置ができないか」との打診があった。こうして、「外観検査装置事業」という新規事業がスタートした。
AIを活用した外観検査システム開発
目視による外観検査はバラツキが生じやすく、生産人口の減少で現場作業者の採用が難しく高い精度の検査を維持し続けることは難しい。人の目の代わりにカメラの画像処理を使えば統一した基準で部品や製品を選別できる。
同社は、17年に他社のAI外観検査装置の販売を始めたが高価なことがネックだった。そこで18年にAIを活用した外観検査システムを自社開発。また、タイの大学内にもラボを設け、国内外でシステム開発を実現、自動車メーカーなどとの取引も始まった。
現在も同社のメイン事業が油圧関係であることに変わりはない。だが、次第に外観検査事業の売り上げは上昇、全体の1割を超えるようになってきた。
しかし、このシステムは高価なため、中小企業が導入することは難しい。このため、自社オリジナルのクラウドAI情報基盤(プラットフォーム)を作成して、スマートフォンやカメラ付きスマートグラスなどを使って低価格で検査できるシステムを開発。また、同システムを活用した油圧装置の遠隔メンテナンスなど、油圧メンテナンスとAI事業との融合による新たなビジネスを模索している。
DXで日本の中小企業のものづくり支援を
田中社長は15年に北九州市立大学大学院に入学し、ドイツが11年に発表した製造業の生産性を高める産業政策「インダストリー4.0」を学び、これをベースに将来戦略を立てていった。その考え方に基づいて、変革にデジタル技術を活用。「インダストリー4.0」とドイツの中小企業の実例に学び、自社モデルを構築していったのが、リョーワのDXだという。
そうして、オープンイノベーション、ダイバーシティ経営、グローバル化などの経営戦略を立て、大学やスタートアップ企業との協働事業や海外人材育成に注力。社外の人材の支援を受けながら海外戦略、知財戦略も進めている。
DXで実現したいこととして、田中社長は1企業文化の改革2価値の提供手段の変革3働きやすい職場の実現4新たなビジネスの創出-を挙げる。
「ものづくりは中小企業が支えている。低価格の画像処理システムなど、DXで中小製造業のものづくりを支援していくことが目標です」
1968年創業、油圧機器の販売や修理、メンテナンスを手がけてきたが、油圧の将来性への危機感から事業変革に着手し、AI外観検査システム市場に参入。社内DXを進めながら製造業の生産性向上に寄与している。
株式会社 リョーワ
代表者:代表取締役 田中 裕弓
住 所:北九州市小倉北区浅野3-8-1(AIMビル7階)
URL:https://e-ryowa.com/
動画公開中 DXで変わる!北九州市の企業⑩リョーワ
北九州市内企業のDXを推進している北九州市ロボット・DX推進センター
公財)北九州産業学術推進機構 (FAIS)が運営する「北九州市 ロボット・DX推進センター」は、地域の中小企業のニーズに応え、ロボット導入やDX(loTの導入、業務のデジタル化等)推進をワンストップで支援する機関。
導入支援、操作体験、人材育成等の取り組みを通して、ロボット導入やDX推進に意欲のある地域企業を総合的・一元的に伴走支援。
また、集い・つながりの場として、地域企業と高等教育機関、金融機関等との連携を促進し、産学官金のハブとしての機能を果たす。
今回紹介しているDX推進支援においては、専門家を派遣し、Web会議やAI・IoT等、ITツールを取り入れた新しい ビジネススタイルへの転換を図る企業に対して、専門家を派遣し、課題解決を支援している。