事例

「DXで変わる!北九州の企業」シリーズ⑪ゼムケンサービス

ウェブ会議などが鴛海常務(手前)らのワークライフバランスの手助けに

必要に迫られたDXの推進で業界全体の女性をサポートする

男性多数の建設業界で、社員11人中7人が女性という建設会社(小さな工務店)「ゼムケンサービス」。弱みとされてきた女性であることを高付価値化、DXの推進でカバーし、業績を伸ばしてきた。しかし籠田淳子代表は自社の成長や発展だけを望んでいるわけではない。歯を食いしばりながら奮闘している建設業界の女性をサポートし、より多く活躍の場を増やしたいと考えている。その思いは国内だけでなく、海外にも広がっている。

デジタルが仕事と育児の両立を実現

社内にはもともとデジタル化に積極的に取り組む風土があった。2002年頃から社員同士の連絡には携帯電話のメーリングリストを採用し、稟議書などの書類のやり取りもインターネットを活用し、役職者や社長が社内にいなくても迅速に物事を進められる体制を整えていた。「社内にデジタル技術を浸透させようと始めたわけではなく、デジタルがなければ働き続けられなかった」と鴛海奈緒子常務は当時を振り返る。女性の割合が圧倒的に多いゼムケンサービスでは、仕事と育児や家事を両立させたいと考えている社員がほとんどだ。建築設計や現場管理等技術者の仕事を、育児や家事の影響であきらめてほしくないという思いが会社にもある。だから就業時間に縛られるのではなく、子どもの学校行事や病気対応を優先してもらい、家事や育児もしっかり向き合ったうえで業務に取り組めるようにした。ワークライフバランスの実践である。そこにはデジタル機器や技術が不可欠だった。

建築現場で活躍する女性技術者

愛あるツールで若手社員を手助け

DXを本格的に進めたのは19年頃から。同社には籠田代表が社員に伝えてきた建築技術やデザイン、ブランディングの基礎知識や経営理念、経営方針をまとめた「Zmʼken赤本」という冊子がある。入社10年目ぐらいまでの若手社員はその冊子を現場に持って行っていたが、長年の知識の集積で今ではA4サイズで約900ページもある。膨大なボリュームとなったため、まずはタブレットで読めるようにした。とはいえ、建築現場は住宅や店舗、施設などあらゆるものがあり、マニュアルだけでは対応できないこともある。
「もっともっと現場で役立つものにしたい」と考えた籠田代表は、20年から早稲田大学産学融合国際戦略研究所と共同で情報システム「AI+AR(愛ある)マネジメントツール」を開発。文字通りデータ駆動型・知識駆動型人工知能(AI)と拡張現実(AR)技術を用いたもので、建設業界での人材育成と品質向上を目的としたシステムだ。具体的には、現場にいる経験の浅い社員と事務所の先輩をタブレットでコミュニケーションできるようにし、やるべきことや注意すべきことを共有する。また現場でタブレットをかざすとAIの活用で危険箇所が分かるような安全管理のサポート機能や、「ネコ=手押し車」といった現場独特の専門用語を分かりやすく表示する辞書、地鎮祭から完成までの工程別にやるべきことを確認できるマニュアル機能も盛り込んだ。「他社の知識やノウハウも取り込めるようにして、業界の特に中小企業の女性技術者をサポートしたい」との籠田社長の思いを込め、さらに開発を進めている。

長年の知識が詰まった「Zmʼ ken赤本」


AI+AR(愛ある)マネジメントツールを使い、現場と事務所でコミュニケーション

きめ細かな建築技術で海外展開へ

業界の底上げはこれだけにとどまらない。23年4月からは、デザイナーや建築士、専門技能者といった女性の専門家がDIYやリノベーションをサポートする「DIYフレンズ」をウェブでスタート。材料や工具の選び方から見積もりの依頼方法、壁紙の張り替え方などの困りごとに、社内外のプロが女性ならではの目線で応えている。「今後はDXを活用し、和室などで培ったきめ細かな建築技術を海外に販売し、日本女性の技術の高さをアピールしたい」と夢見る籠田社長。社名の由来にもなった「建築は善を生み出すサービス業」を胸にグローバル展開も視野に入れる。

1993年創業、2000年に籠田氏が2代目の代表取締役に就任。女性のきめ細かな感性を生かし、住宅や店舗、病院などのデザイン、設計、施工を手がける。女性視点の現場監督者らの育成を目的とした「けんちくけんせつ女学校」も開校。
 
有限会社 ゼムケンサービス
代表者:代表取締役 籠田 淳子
住 所:北九州市小倉北区片野3-7-4
URL:https://www.zmken.co.jp/

 

動画公開中 DXで変わる!北九州市の企業⑪ゼムケンサービス

北九州市内企業のDXを推進している北九州市ロボット・DX推進センター

公財)北九州産業学術推進機構 (FAIS)が運営する「北九州市 ロボット・DX推進センター」は、地域の中小企業のニーズに応え、ロボット導入やDX(loTの導入、業務のデジタル化等)推進をワンストップで支援する機関。

導入支援、操作体験、人材育成等の取り組みを通して、ロボット導入やDX推進に意欲のある地域企業を総合的・一元的に伴走支援。
また、集い・つながりの場として、地域企業と高等教育機関、金融機関等との連携を促進し、産学官金のハブとしての機能を果たす。

今回紹介しているDX推進支援においては、専門家を派遣し、Web会議やAIIoT等、ITツールを取り入れた新しい ビジネススタイルへの転換を図る企業に対して、専門家を派遣し、課題解決を支援している。

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北九州市ロボット・DX推進センター
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