「DXで変わる!北九州の企業」シリーズ⑥ABC研究所
赤嶺さんらに行動記録のデジタル化を相談する今本さん(中央)
行動記録のデジタル化が発達障がい児・者支援の向上へ
発達障がい児・者支援の研究を続けてきた今本繁代表が、2015年に設立したABC研究所。当事者と家族の個別相談のほか、学校や施設の職員たちに発達障がい児・者の支援についてのアドバイスをしている。
支援は応用行動分析(ABA)に基づいているが、その基礎データとなる日々の行動記録は施設や学校の担当者が手書きでFAX送信してきた。これをデジタル化することによって職員の負担が軽減され、より支援に注力できるのではないかと考えた。
応用行動分析の元データは紙ベース
ABC研究所の支援の基礎となるABAとは、行動の前後を分析することでその行動の目的を明らかにし、環境を整えて問題行動を解消し、ポジティブな行動を支援する方法。このため、「どんなときに、なぜ、そういう行動を取っているのか」という詳細な記録が必要になる。学校や施設の職員が、その記録を取ること自体が大きな負担となり、紙ベースで送られてきた情報をExcelに入力して集計するのも膨大な時間がかかっていた。
デジタルの力を福祉現場や学校にも取り入れられないかと考えながらも「どこから手を付けていいか分からずにいた」今本代表は、支援制度の存在を知って北九州市ロボット・DX推進センターに連絡した。
情報整理からアプリ開発検討まで
人間の行動や観察を対象としているので、単純に「紙をデータに置き換える」わけにはいかない。また、分析に必要な情報と実際に各現場で入力されている情報には若干のギャップが存在し、分析前の集計にも新たなノウハウが必要だった。
専門家として派遣された赤嶺奈美さんは、以上を踏まえて同研究所の事業内容をヒアリング。デジタル化に向いているモノと人が関わらなければいけない部分に業務を切り分けるなど、主に下記の内容を支援した。
❶アウトプットに必要な既存情報の整理支援 |
❷インプット方法の検討とツール選定 |
❸DX推進補助金への応募書類作成支援 |
データ登録のツールはたくさんあるが、それぞれの特徴を比較検討した結果、今回は操作性を重視してアプリ開発を行うこととした。
全国の福祉現場に広げていきたい
自傷行為や他者を傷つける行為など、問題行動がなぜ起きるのかを知るためには、どういう環境の中で起き、職員がどういう対応をしているかといった詳細な分析が求められるが、紙ベースでは書き漏らしや見逃しも生じがちだ。デジタル化によって詳細な記録が統計データにリアルタイムに反映、確認されるとともに、コスト削減も期待される。
「現場の負担が大きく軽減され、支援もしやすくなるはず」と今本代表は確信する。システムを活用して研究所自体の事業拡大を検討するとともに、今回の取り組みを学会などでも発表。全国の福祉の現場にデジタル化の取り組みを呼び掛けていきたいと話す。
支援者メッセージ
株式会社佐々木総研 DX推進支援部 ICT活用推進課(センター登録専門家)赤嶺 奈美さん
業務担当者の知識がDX推進のカギ
DXを進める中で何より大切なのは業務の目的。今本さんから業務の話を伺い、ゴールを設定し、どのような方法があるか比較しながら進めていきました。その過程で、今本さんも、この業務はデジタル化できる、あれもできると未来へ想像を膨らませていかれたようです。
業務の担当者が最もその業務に詳しい方ですから、担当者の知識にIT専門家の意見を取り入れて一緒に取り組むことが、より早くより最適なDXの方法だと思います。
株式会社佐々木総研
住所:北九州市八幡東区石坪町10-13 URL:https://www.sasakigp.co.jp/
事業内容:税務会計業務、各種コンサルティング、人事労務支援、DX推進支援ほか
発達障がいや知的障がいのある人やその家族の支援を行う団体として2015年設立、17年に法人化。行動の観察や記録に基づく科学的アプローチで当事者や家族の相談に対応。施設・学校・職場での支援法や関わり方に関する研修・アドバイス、教材の研究開発などを手がけている。
合同会社 ABC研究所
代表者:臨床心理士 工学士 今本 繁
住 所:北九州市八幡西区熊手2-3-27
URL:https://www.abclab15.com/
動画公開中 DXで変わる!北九州市の企業⑥ABC研究所
このDX推進をサポートしているのが「北九州市ロボット・DX推進センター」
公財)北九州産業学術推進機構 (FAIS)が運営する「北九州市ロボット・DX推進センター」は、地域の中小企業のニーズに応え、ロボット導入やDX(loTの導入、業務のデジタル化等)推進をワンストップで支援する機関。
導入支援、操作体験、人材育成等の取り組みを通して、ロボット導入やDX推進に意欲のある地域企業を総合的・一元的に伴走支援。
また、集い・つながりの場として、地域企業と高等教育機関、金融機関等との連携を促進し、産学官金のハブとしての機能を果たす。
今回紹介しているDX推進支援においては、専門家を派遣し、Web会議やAI・IoT等、ITツールを取り入れた新しい
ビジネススタイルへの転換を図る企業に対して、専門家を派遣し、課題解決を支援している。