事例

「DXで変わる!北九州の企業」シリーズ③松本工業

自社のDXの方向性を明示したビジョンの前で話す松本社長(左)と舘下繁仁副社長(右)ら

スマートファクトリー化を推進「環境+DX」で取り組み加速

「DXとは単なるデジタル化ではなく、企業価値を上げること」という明確なコンセプトの下、無人搬送車(AGV)による物流自動化や無線周波数識別(RFID)を用いた生産管理システム導入などスマートファクトリー化を進める松本工業。その取り組みが注目され、北九州デジタル大賞の準グランプリに選ばれた。「環境とデジタルをキーとした独立系メーカーとしてのポジション確立」を掲げ、AI企業と積極的に連携しながら地域のDXをリードしている。

DXの定義を明確化、全社に徹底

1966年に創業し、製缶や金属加工を手がけていた松本工業は日産自動車の九州進出を機に自動車産業に参入。自動車の部品製造を主事業としながら、同時に建築や流通、保育事業など多角化経営を進めている。
DXのきっかけは十数年前、松本茂樹社長が経済団体の視察でヨーロッパを訪れたことだった。ちょうどドイツで「インダストリー4.0」が提唱され、「IoT」という言葉が流行し始めた時期。DXやデジタル化が先行しているのを目の当たりにし、自社の将来に危機感を抱いた松本社長は、工場のスマートファクトリー化を決意した。
しかし、当時の日本では中小企業がDXに取り組む意味はおろか、DXとデジタル化の違いを含め、DXの意味自体が認識されていなかった。そこで、まずは自社にとってのDXを「企業価値を上げること」と定め、DXが進んだ先にスマートファクトリーが実現するという目標を社内外に浸透させていった。

ヘッドレストのシェアは国内トップクラス

品質確保のトレーサビリティー

日報や品質チェックシートなどのデジタル化に始まり、AGVの導入による工場物流の自動化、RFIDチップを活用した品質確保トレーサビリティーシステムを構築していった。その結果、工場内のペーパーレス化や物流自動化を実現し、コストダウンと作業環境の改善を両立させ、「見える化」は品質や生産性の向上につながった。
特に効果が大きかったのが、自動車のヘッドレストに導入したRFID生産管理システムだ。RFIDチップを装着することで、材料入庫から製造、出荷に至るまで一品一品のきめ細かな状況を把握。工程内での不良率を大幅に低下させたことに加え、システム構築後は1件の出荷ミスも発生させていない。
現在、同社はヘッドレストでは国内シェアのトップクラスを誇っているが、年間500万~600万個の増産体制が実現できたのも、このシステムあってのことだ。

RFID生産管理システムで出荷ミスゼロを実現

AI事業に投資しさらなる新事業も

松本社長は「中小企業には中小企業なりのDXのやり方がある」として、1経営者がトップダウンで推進していくこと2社内で人材を育成することに加えて「自前でできないことに関しては、積極的に他社と連携・コラボしていくことが大切」と指摘する。
AIが必要だと認識していたが、知見はなかった。そこで、AI企業に投資し連携。知識や技術を共有することで取り組みの幅が広がり、相乗効果を期待している。次に松本社長が意識しているのが「環境」。独自開発の「溶接レス結合工法(Jmec)」など「環境とDX」を結びつけた新たな取り組みにも挑戦する。

高性能なロボットを導入しさらなるDXに挑む

喜びの声代表取締役社長 CEO松本 茂樹氏
自前でできないことは外部の力も使いながら

「DXで企業価値を高める」という目標を掲げて進めてきたことが評価され、大変喜んでいます。DXは決して大企業だけが取り組むものではなく、中小企業が自前でできないことは外部の力を使えばいいのです。AI活用など、スタートアップ企業などと連携してチャレンジしていきたいですね。
 

 

1966年創業。シートフレームやヘッドレスト、アームレストなど自動車部品のほか、住宅や建材部品などを製造。そのほか総合建築業や食品スーパー、保育園、学校給食の運営など北九州地区を中心に多角的な事業を手がけている。

松本工業 株式会社
代表者:代表取締役社長 CEO 松本 茂樹
住 所:北九州市小倉北区三萩野1-2-5
URL:https://www.matsumoto-kk.co.jp/

 

 

動画公開中 DXで変わる!北九州市の企業③松本工業

北九州市内企業のDXを推進している北九州市ロボット・DX推進センター

公財)北九州産業学術推進機構 (FAIS)が運営する「北九州市 ロボット・DX推進センター」は、地域の中小企業のニーズに応え、ロボット導入やDX(loTの導入、業務のデジタル化等)推進をワンストップで支援する機関。

導入支援、操作体験、人材育成等の取り組みを通して、ロボット導入やDX推進に意欲のある地域企業を総合的・一元的に伴走支援。
また、集い・つながりの場として、地域企業と高等教育機関、金融機関等との連携を促進し、産学官金のハブとしての機能を果たす。

今回紹介しているDX推進支援においては、専門家を派遣し、Web会議やAIIoT等、ITツールを取り入れた新しい ビジネススタイルへの転換を図る企業に対して、専門家を派遣し、課題解決を支援している。

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北九州市ロボット・DX推進センター
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