事例

「DXで変わる!北九州の企業」シリーズ②戸畑ターレット工作所

DX推進課のメンバーと新たな取り組みについて話し合う松本社長(左)と中野課長(右)。

官民がタッグを組んで問題解決へ地域製造業のDXのけん引役に

 戸畑ターレット工作所は生産性を大幅に向上するDXを確立し、北九州DX大賞準グランプリに選ばれた。従業員約180人の自動車や住宅設備などの部品メーカー。非鉄金属の鍛造や摩擦圧接など、中小企業では珍しい多くのコア技術を持っている。
しかし、経営環境の変化などから生産性を飛躍的に高めなければならない状況に追い込まれていた。解決策で考えたのが、デジタル技術を活用した生産進捗の管理。他社へ無償配布するという社会貢献にまでつながった。

DXで大幅な生産性向上を狙う

松本大毅社長が就任した2014年、戸畑ターレット工作所は二つの問題を抱えていた。一つは海外企業とのコスト競争。非鉄鍛造やアルミ鋳造などで独自の技術を持っていたが、中国や韓国を中心としたアジアの各企業も技術力を高め、年々販売価格が下落していた。
一方で人手不足の問題があり、松本社長は「給与を含めた処遇面を改善したい」と考えていた。海外とのコスト競争、処遇面の改善。この二つの問題と向き合うには生産性を高めなければならないという結論に至ったが、これまでのやり方では限界がある。そこで取り組んだのがロボットの活用とDXだった。


多くの独自技術を持ち、自動車部品などを製造

センサーと管理システムを開発

17年ごろからロボットを導入し作業を自動化したが、仕上げ作業はどうしても人間の手が必要で品質面での問題も残った。解決するには設備の稼働状況や人手作業を把握し管理する事が不可欠と考え、北九州産業学術推進機構(FAIS)に相談。IoT技術を活用した生産進捗管理システムを開発し、ロボットとIoT技術を組み合わせて生産性と品質を飛躍的に向上させた。
その後、同様の課題を持つ企業にも提供するため、戸畑ターレット工作所がFAISと福岡県工業技術センター、北九州市のITコンサルタント企業を結び付け生産進捗管理システム「YokaKit(ヨカキット)」を完成。さらに「IoT導入支援キット VerIII」を共同で開発した。これらの製品を使うことで、低価格かつ専門知識がなくても、設備の稼働状態を「見える化」できた。
温度の異常など工場から離れた場所からでも確認できるうえに、遠隔で監督することで、これまで以上に現場のフォローが可能となり品質向上や働きやすさにつながっている。DX推進課兼生産技術課の中野貴敏課長は「プログラミングなどを一から勉強することになったが、やって良かった」と当時を振り返る。


設備の稼働状況や異常通知を事務所からでも確認できる

自社の利益よりも地域の発展を

これらの取り組みを通じて、不良率は半減、利益は1割増となった。しかし戸畑ターレット工作所は自社だけの利益にこだわらなかった。「DXで地域や製造業界を底上げしたい」との思いがあったからだ。両製品は福岡県工業技術センターのホームページから無料ダウンロードできるようにした。「経営理念に豊かな社会づくりと書いているから」と松本社長は謙遜するが、開発当初から「自社だけではなく多くの企業が使いやすいように」をモットーにしてきた。今後はITシステムとデジタル技術の最適化を目指すため、データベースの一元化などを加速する。

喜びの声代表取締役社長松本 大毅氏
官民連携でDXを実現。地域企業の活性化へ

当社のDXは単独で取り組んだのではなく、FAISなど官民連携で実現しました。今回の北九州DX大賞準グランプリについて関係者の皆さんへあらためて感謝します。担当者だけでなく、社内全体のやりがいにつながります。今後も社内のDXを進め、地域企業の活性化にもつなげたいです。
 

 


1962年創立、2014年に松本氏が4代目の社長に就任。自動車や電力、住宅設備などの部品を製造している。ユニークな社名は複製部品を効率的に製造する「ターレット旋盤」を使って創業したことから来ている。

株式会社 戸畑ターレット工作所
代表者:代表取締役社長 松本 大毅
住 所:北九州市小倉南区新曽根11-31
URL:https://www.t-turret.co.jp/
 

 

動画公開中 DXで変わる!北九州市の企業②戸畑ターレット工作所

北九州市内企業のDXを推進している北九州市ロボット・DX推進センター

公財)北九州産業学術推進機構 (FAIS)が運営する「北九州市ロボット・DX推進センター」は、地域の中小企業のニーズに応え、ロボット導入やDX(loTの導入、業務のデジタル化等)推進をワンストップで支援する機関。

導入支援、操作体験、人材育成等の取り組みを通して、ロボット導入やDX推進に意欲のある地域企業を総合的・一元的に伴走支援。
また、集い・つながりの場として、地域企業と高等教育機関、金融機関等との連携を促進し、産学官金のハブとしての機能を果たす。

今回紹介しているDX推進支援においては、専門家を派遣し、Web会議やAIIoT等、ITツールを取り入れた新しい
ビジネススタイルへの転換を図る企業に対して、専門家を派遣し、課題解決を支援している。

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北九州市ロボット・DX推進センター
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